先日出かけた国立博物館特別展「毒」.独自に調べたことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介しています.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.https://yachikusakusaki.hatenablog.com/archive/category/毒%2F毒展
(大阪展が始まりました.実際にご覧になることをお薦めします.実物の力は偉大です)
https://www.ktv.jp/event/dokuten/
毒を使った果実の散布戦略 (第3章 毒と進化)
動物に食べてもらうことで種子を運んでもらう植物は多いですが,熟した種子を運ばせるため,未熟な果実には毒性物質を高濃度で凝縮させて食害を防いでいるものもあります.
カキノキの果実は,未熟なときはタンニンの濃度が高く,食べると渋くて美味しくはありません.
またライチも未熟な果実は神経毒性のあるヒポグリシンを含みます.逆に熟した果実は,動物に食べてもらい,中の種子を散布してもらうため,毒性をなくし,甘みを増し,視覚的にも美味しそうに見せる仕組みをもっています.
未熟なウメの果実
未熟な果実には生産配糖体アミグダリンが含まれています.
未熟なライチの果実
未熟な果実に毒があり,インドやベトナムで未熟なライチを食したことによる急性脳障害で死者が出ています.
タヌキの糞
タヌキが食べた果実の種子は,排泄物とともに散布されます.
イチョウやカキノキの種子が含まれています.
耐える
毒に耐える
これまで見てきたように,多くの生物が体に毒をもつことで捕食者から身を守ってきました.
しかし,その毒さえ克服できれば,毒生物は競争相手の少ない魅力的な獲物となります.
身を守る「毒」とそれに対抗する「耐毒」の終わることのない進化合戦は今も続いています.
昆虫は植物の毒を克服することを進化の原動力と多様化した生物です.
既知種の半数以上が植物性とされ,青酸カリを上回る強い毒をキョウチクトウでさえ克服した昆虫が存在します.
キョウチクトウスズメはその代表で,幼虫は体内に毒を避ける機能を持つことで,キョウチクトウを食べて育つことができます.
キョウチクトウの毒:
植物全体に心臓毒性を有するオレアンドリンが含まれており、細菌からヒトにわたる多くの生物がもつNa+/K+ ATPアーゼ(細胞内から細胞外へナトリウムイオンを汲み出し、同時にカリウムイオンを汲み入れるポンプの役割を果たす)を阻害することが知られている.
コアラVSユーカリ
ユーカリの葉は繊維質が多くて硬く,消化しにくいことに加え,青酸化合物やテルペンなどの強い毒素を多く含んでいます.
そのためほとんどの哺乳類はユーカリを食べることができませんが,コアラはシトクロームP450(CYP)という解毒酵素が肝臓で強くはたらいているほか,長さ2mにもなる盲腸の中で腸内細菌によって消化と解毒を行っています.
ラーテルVSコブラ
コブラの強力な毒は狩りだけではなく防御にも役立ち,天敵はそれほど多くはありません.
しかしラーテルはコブラやクサリヘビの毒に耐性をもち,積極的に捕食しています.
毒を注入されても効果は一時的で,意識を失っても数時間で回復します.
ラーテルの神経細胞にある受容体では,コブラの神経毒が効きにくいような遺伝子の変異が起こっていることが判明しています.
ラーテルなど一部の哺乳類は神経伝達物質の受容体の構造に変異があり,コブラのα神経毒に耐性をもつ.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ラーテル