先日出かけた国立博物館特別展「毒」.独自に調べたことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介しています.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.https://yachikusakusaki.hatenablog.com/archive/category/毒%2F毒展
(大阪展が始まりました.実際にご覧になることをお薦めします.実物の力は偉大です)
https://www.ktv.jp/event/dokuten/
第3章 毒と進化
警告色
有毒動物には明るい色と暗い色のコントラストが目立つ警告色を持つ種がいます.
警告色には,自身が有毒動物であるということを周囲に伝え,自身と外敵の双方が無用な争いによる傷などを負うことを防ぐ働きがあります.
ヤドクガエルの警告色
ヤドクガエル類は赤や黄色,青色などの鮮やかな警告色をもち,昼間に活動します.
キオビヤドクガエルの黄色と黒のコントラストが強い体色は,捕食者に毒性をアピールするのに役立ちます.
アカハライモリの警告色
アカハライモリの背中は褐色の目立たない保護色ですが,お腹はよく目立つ赤色です.天敵に襲われると背中を反らして丸くなる防御姿勢をとり,お腹の警告色をアピールします.
ミュラー擬態とベイツ擬態
ミュラー擬態(特別展「毒」図説より)
毒をもった生物同士の外見が似る現象
命を脅かすような天敵に,自分達が毒をもっていることを学習させることが重要です.毒をもつもの同士が似ていれば,その分だけ早く天敵に学習させることができると考えられます.
ベイツ擬態(特別展「毒」図説より)
毒をもっていない生物と,同じ地域に住む毒をもっている生物の外見が似る現象.
毒をもっていなくても,同じ警告色を持った有害な生物が近くにいれば,警告色を学習した天敵が避けてくれるようになるので,生き残る確率が高くなると考えられます.
テントウムシの毒と警告色
:テントウムシ類は天敵に襲われると毒成分を含む液体と体から出して身を守ります.
目立つ色には警告色としての役割があり,テントウムシ同士はよる「ミュラー擬態」やテントウムシ以外の昆虫がテントウムシに似せる「ベイツ擬態」が見られます.
毒をもっているナナホシテントウ,ヒメアカホシテントウ,ナミテントウは似た外観を持っています=「ミュラー擬態」
ナナホシテントウ(有毒)とクロボシツツハムシ(無毒),ヒメアカホシテントウ(有毒)とヘリグロテントウノミハムシ(無毒),ナミテントウ(有毒)とヨツボシケシキスイ(無毒)はそれぞれ似た外観を持つ=「ベイツ擬態」
▽テントウムシの毒について調べてみました.
テントウムシの防御物質の毒性成分はかなり解明されてきています.神経伝達を阻害して,薬や殺虫剤の元になる可能性も.
研究論文の「はじめに」に記載されていたものの一部をDeepL翻訳して以下に引用します.やや専門的な言葉が続きますが---
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048357520300560
Pesticide Biochemistry and Physiology Volume 166, June 2020, 104561
そこで、H. axyridisのアルカロイド抽出物の昆虫および哺乳類のnAChRに対する活性を検討した。哺乳類のnAChRに対して昆虫の標的部位選択性が検出された(=昆虫に特に強く作用する)ことから、H. axyridisアルカロイドは、新規昆虫制御化学物質(=殺虫剤)の探索において、さらに研究すべき価値あるリード化合物となる。
魚も擬態する
魚類には,岩や砂,海藻,枯れ葉などに擬態する種がいることが知られています.
なかでもカワハギの仲間のノコギリハギ(無毒)は,フグの仲間であるシマキンチャクフグ(有毒)に擬態をしていることで有名です.
体型や色彩だけでなく遊泳などの行動もそっくりです.
「ベイツ擬態」の例を,すこしだけネット上から集めてみました.
進化の不思議!
https://en.wikipedia.org/wiki/Batesian_mimicry
https://study.com/academy/lesson/batesian-mimicry-examples-definition-quiz.html
https://science.howstuffworks.com/life/evolution/batesian-mimicry.htm