鎌倉宝戒寺には,白花のヒガンバナが点々と植えられていて,境内を彩っていました.ミズヒキと組み合わせて,美しさを際立たせる工夫も.白花のヒガンバナ(シロバナマンジュシャゲ)は,赤花のヒガンバナとは別種でコヒガンバナとショウキズイセンの交配で生まれたとする説が有力.

昨日萩を見に訪れた鎌倉宝戒寺には,白花のヒガンバナが点々と植えられていて,境内を彩っていました.

 

ミズヒキと組み合わせて,美しさを際立たせる工夫も.

 

白花のヒガンバナ(シロバナマンジュシャゲ)は,赤花のヒガンバナとは別種とされています.

以前はヒガンバナショウキズイセンとの自然交配種と予想されていました.

しかしヒガンバナは種ができないことなどから,原種に近いとされるコヒガンバナショウキズイセンの交配で生まれたとする説が有力とのこと.白色のヒガンバナについて | みんなのひろば | 日本植物生理学会

 

赤花:

ヒガンバナマンジュシャゲ曼珠沙華) Lycoris radiata var. radiata(3倍体: 種はできない)

わが家のヒガンバナも咲き始めています.

白花:

シロバナマンジュシャゲ(シロバナヒガンバナ) Lycoris x albiflora(3倍体)

シロバナは,少し早く咲き始めます.これもわが家の庭のもの.

 

ヒガンバナL. radiate var. pumila(2倍体)

四季の山野草(コヒガンバナ)

ショウキズイセンショウキラン:同名のラン科の種があるので注意)L. aurea

Lycoris aurea - Wikispecies

 

ヒガンバナの別名マンジュシャゲ曼珠沙華)は,サンスクリット語「マンジュシャカ(赤い)」由来の言葉とか.曼珠沙華 | 生活の中の仏教用語 | 読むページ | 大谷大学

シロバナマンジュシャゲは語源にまで遡ると奇妙な名前ということになりますね.

 

曼珠沙華」という名前

この「赤い」という意味に由来する花「曼珠沙華」は,仏教の「四華=蔓陀羅華(白蓮華)・摩訶曼陀羅華(大白蓮華)・蔓殊沙華(紅蓮華)・摩訶蔓殊沙華」の一つで,「見るものはおのずからにして悪業を離れる」花とのこと.日本では,その名前がヒガンバナに当てられたと言うことですね.

 

まんじゅしゃげ【曼珠沙華】 精選版日本国語大辞典

〘名〙 (「まんじゅしゃけ」とも) (梵mañjūṣaka の音訳) 仏語.赤色(一説に、白色)で柔らかな天界の花.これを見るものはおのずからにして悪業を離れるという.四華の一つ,紅蓮華にあたる.日本では,彼岸花ひがんばなをさす.

 

法華経』序品:

折々の情報 | 東叡山 寛永寺 公式ホームページ

この時、天は曼陀羅華(まんだらけ)・摩訶曼陀羅華(まかまんだらけ)・曼殊沙華(まんじゅしゃげ・摩訶曼殊沙華(まかまんじゅしゃげ)を雨ふらして,仏の上及びもろもろの大衆に散ず.

(この時=お釈迦様が瞑想に入られたところで,天から曼殊沙華など4種類の花が,瞑想に入っているお釈迦様やその周りの弟子たちに雨のように降り注いだ.)

 

 

英語とラテン語

ヒガンバナは英語でspider lily.

あまりよい印象は持たれていないことを反映しているようですが----

(なお,ヒガンバナ属の他,ハマオモト属:ハマユウなどが属する,ヒメノカリス属,ネリネ属の植物もspider lily と呼ばれています)

 

ヒガンバナ属のラテン語学名Lycorisは 

「ローマの詩人 Gallus の恋愛悲歌の中でたたえられた女性名にちなむと思われるランダムハウス英語辞典)とのこと.こちらは,なかなか素敵な名前のようですね.

 

救荒作物としてのヒガンバナ

ヒガンバナは基本的には美しい花だと思うのですが,好みが別れる形態と色かなとも思います.

さらに,日本ではその毒性が強調されて(実際にはスイセンと同程度の毒性であるにもかかわらず  http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/09/19/014403 ),悪い印象を持つ方も多いのではないでしょうか.

ただし,この毒性の強調は,”「救荒作物(飢饉の時飢えをしのぐ作物:ヒガンバナから毒を除去してデンプンをとる)」として植えたヒガンバナを採らずに「守り育てるため」に言い聞かせるため” という説もあるそうです.

事実だとすると,これもなかなか素敵な話.

 

曼珠沙華 | 生活の中の仏教用語 | 読むページ | 大谷大学

沙加戸 弘(さかど ひろむ)

美しいものには、悲しい歴史があることが多い。曼珠沙華は山林原野にほとんど見られず、水田の畦に群生するが、これは飢饉への備えとして先人が植えたからである。
 「毒がある故触れてはならぬ」、「持って帰ると火事になる」、「死人が出る」と幼き者に言い聞かせて守り育てたと伝えられる。
 アルカロイド系のかなり強い毒を有することは事実であるが、この毒は水に晒すことによって容易に除去することができ、球根からは極めて良質の澱粉がとれる。
 曼珠沙華が救荒作物というのは意外である。しかし、自然の真っ只中に生きた先人達が最後のたよりとしたこの花の名が、天が釈尊に供養した花に由来する、ということならば中国伝来のこの花は、日本においてまことにふさわしい位置を得たというべきであろう。

 

なお,

ヒガンバナが救荒作物として用いられていたことは確かなこととされています.

食べていたとする記録があり,その風習はかなり最近まで残っていました.

 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/09/19/014403   ヒガンバナの民俗・文化誌-3 http://www5e.biglobe.ne.jp/~lycoris/higanbana-minzoku.bunka-3.html