盗用(毒と進化 国立科学博物館特別展「毒」より)  自身で毒を作れない有毒生物は,他者の毒を利用または盗用しているといえます. テトロドトキシンを自身で作れないフグや,ヒキガエル類の毒を防御用の毒として利用しているヤマカガシも毒を盗用しています.毒の盗用のなかでも究極形の1つがミノウミウシ類やフウセンクラゲ類による刺胞の盗用「盗刺胞」です. ミノウミウシ類はヒドロ虫を主な餌としていますが,ヒドロ虫の刺胞を消化せず.自身の防御に再利用しています. 

先日出かけた国立博物館特別展「毒」.独自に調べたことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介しています.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.https://yachikusakusaki.hatenablog.com/archive/category/毒%2F毒展

(大阪展が始まりました.実際にご覧になることをお薦めします.実物の力は偉大です)

https://www.ktv.jp/event/dokuten/

 

第3章 毒と進化

盗用

自身で毒を作れない有毒生物は,他者の毒を利用または盗用しているといえます.

テトロドトキシンを自身で作れないフグや,ヒキガエル類の毒を防御用の毒として利用しているヤマカガシも毒を盗用しています.

 

ムカデミノウミウシの盗刺胞

毒の盗用のなかでも究極形の1つがミノウミウシ類やフウセンクラゲ類による刺胞の盗用「盗刺胞」です.

ミノウミウシ類はヒドロ虫を主な餌としていますが,ヒドロ虫の刺胞を消化せず.自身の防御に再利用しています.

 

エダウミヒドラ属の1種

ミノウミウシ類の餌になるヒドロ虫の1種.

 

ミノウミウシ類どのようにして刺胞を取り込んでいるのでしょうか?不思議です.

取り込み方はまだ分かっておらず,現在研究が進められているようです.

https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20J11297/

 

ムカデミノウミウシ以外でも,近縁(属は異なる)のアオミノウミウシも盗刺胞を持つことが知られています.

美しいといってよい姿をしていますが,

「特に猛毒の刺胞を持つカツオノエボシギンカクラゲといった種を好み、クラゲの毒をものともせずに食べてしまう」とのこと.

https://ja.wikipedia.org/wiki/アオミノウミウシ

なお,餌となるヒドロ虫は,カツオノエボシを取り上げたときにふれたように,とても不思議な生物群で,素人目にも興味は尽きません.

https://www.kahaku.go.jp/research/researcher/my_research/zoology/namikawa/imgs/namikawa.pdf



毒の盗用は,生物界の不思議さを改めて認識させてくれます.

特別展「毒」のこの項では,盗刺胞について触れていただけですが,他の生物種については,他の箇所で解説されていて,このブログでも既に取り上げました.

 

フグ

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/03/235500

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/11/235720

 

ヤマカガシ

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/01/235814

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/02/235358

より詳しくは

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/58/2/58_580209/_pdf

 

ヤドクガエル

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/02/235358

より詳しくは

https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.0702851104

 

ズグロモリモズ

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/03/235500

より詳しくは

https://en.wikipedia.org/wiki/Hooded_pitohui

 

 

また,食餌中の毒を貯めているものの,攻撃や防御に用いているわけではなさそうなため,盗用とはいえないと思われるものに,シガデラ毒や貝毒があります.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/03/11/235720

より詳しくは

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/58/2/58_580209/_pdf