先日出かけた国立博物館特別展「毒」.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/02/17/235453
独自に勉強したことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介しています.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.
(大阪展がもうすぐ始まります.実際にご覧になることをお薦めします.実物の力は偉大です)
今日は「毒の博物館」3 動物の毒のいろいろ
海洋には少なくとも,3万種前後の有毒動物がいます.
クラゲやイソギンチャクなどの刺胞動物(⇒*)は,全ての種が刺胞と呼ばれる毒の注入装置をもってます.
毒銛を使って狩りを行うイモガイ類(軟体動物)や全身に毒の棘をもつオニヒトデ(棘皮動物),魚類で最強の刺毒(しどく)をもつオニダルマオコゼなど,実に多様な有毒種がいます.
「少なくとも,3万種前後の有毒動物」の中で,展示されていた有毒動物は限られていました.スペースの都合で泣く泣くではと思います.
ただし,一昨日取り上げたフグは別立てといった感じで,また,貝毒については,特別展の最後尾に,研究に貢献した日本人研究者の紹介もかねての展示がありました.
そして,このコーナーで,解説のパネルが用意されていたのは,
「イモガイ類」
イモガイ類は肉食性であり,歯舌(しぜつ)歯を変化させた毒銛(どくもり)を使って狩りをします.
イモガイ類の毒銛の形状や毒の成分は,餌の種類(魚や貝,ゴカイ類,ウミケムシ類)に合わせて実に多様化しています.
貝が狩りをする! 初めて知りました.
小さな標本で「なんだ」と通り過ぎてしまいそうですが,展示された銛のレプリカ,その刃先を見ると,「この貝,本当に銛を打って狩りをしているんだ」と思わせてくれます.
展示されている中では,アンボイナの名前がよく知られているようで,ネット検索しても沢山の記述がみつかります.この貝は毒が強いことでもよく知られているようです.
展示には,これ以上の解説はなかったのですが,調べてみると,イモガイの技,さらには持っている毒性成分は,多彩でびっくりすることばかりでした.
例えば,ベッコウイモガイが狩りをしている画像(撮影:楚山 勇)もネット上にあります.
https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/kaisei/hp-6/doku/doku-2.html
沖縄・鹿児島ではイモガイを危険な海洋生物として注意を呼びかけています.最近の被害については調べられませんでしたが,1996年までの被害例はまとめられていて,古くは死亡例も見られます.加害種としてはアンボイナが圧倒的に多いようです.
https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/syoho/documents/s30_43-52.pdf
イモガイ(イモガイ属 Conus の貝の総称)の持つ毒性成分はコノトキシン(Conotoxins)と呼ばれ,多彩な作用を発揮することが分かっていて,薬になる可能性も追求されてきています.
次の図は,とても専門的になりますが,さまざまなコノトキシンがさまざまなイオンチャネルを阻害する活性を持つことを示しています.このような活性は,既に2000年までに明らかにされていました.
https://www.dojindo.co.jp/letterj/100/reviews_01.html
専門的な研究は今も発表され続けており,コノトキシンに対する興味はまだまだ続いているようです.
「アカエイ」
同じトビエイ目のイトマキエイがマンタと呼ばれて,ダイバーに最も愛される魚の1つであるのに対し,アカエイは嫌われ者ですね.危険性については多くの警告がネット上にもみつかります.
https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/g1/g1chapter1/kikennaikimono/akaei.html
【特徴・習性】 全長1m以上,体重100kgにもなる大型のエイです.長い尾の付け根にはノコギリ状の大きな棘(とげ)があり,体に触れると尾を曲げて相手を刺します.----
【対処法】砂地にひそむエイを誤って踏んでしまい刺されるケースが多いため,遊泳中に手や足をつく場合はエイがいないことを確認するのが重要です.
刺されると傷口の周囲は紫色に腫れ上がり,血圧低下,呼吸障害,発熱などの症状が出ます.刺された場合は,まず残っている毒針を取り除き傷口を良く洗い,毒を吸い出すか絞り出します.毒は熱に対して不安定なため,火傷しない程度のお湯に傷口を浸け温めます.出血がひどい場合は止血することが重要です.いずれの場合も応急処置の後,医師による治療を受けることが重要です.
(⇒*)クラゲやイソギンチャクは「腔腸動物」と私は習ってきましたが,最近は「刺胞動物」と呼ばれているようです.
ネット検索してみると,研究者は「刺胞動物」を使っています.ウィキペディアも同じ.学校教育でも変わったのでしょうね.確かめてはいませんが.
ニッポニカによれば( https://kotobank.jp/word/刺胞動物- )
腔腸動物(こうちょうどうぶつ)門のうち,クシクラゲ綱を除いたヒドロ虫綱,ハチクラゲ綱,花虫(かちゅう)綱の3綱では,どの種類でも例外なくその体内に刺胞を有しており,そのため動物分類上これら3綱を一括して刺胞動物Cnidariaという1門として扱うことがある.
現在のヨーロッパやアメリカの一般の教科書では,どちらかというと,腔腸動物よりも刺胞動物を門として認めている場合が多い.
とのこと.