アジサイの季節.
先日鎌倉の街の花を見ながらの散歩でも,最も多く出会った花は,ドクダミと並んでアジサイでした.
種類が増えました.そして華やか.一昔前に比べると,隔世の感.
アジサイ属にまで広げると,
ただ,この「ノリウツギ」.PictureThisは,「ノリウツギ」と判定していますが,アジサイかもしれません.
ノリウツギはカシワバアジサイと同じく“穂咲き”のはずですが,花によってはガクアジサイと同じような咲き方.
また,ノリウツギが咲くのはもう少し遅いはずですが---
ただし,今日花屋さんを覗いて見ると,ノリウツギの苗を販売していて,こちらもしっかり花開いていました.
今の時期から咲いてもおかしくはないのかもしれません.
でも花の付き方は違いますね.
カシワバアジサイの原産地はアメリカ合衆国南部.(そのため,最近アメリカで庭木として見直されてきているとのことです)
一方のノリウツギの原産地は東アジア.
そのように言われれば,「なるほど,カシワバアジサイは西洋っぽい」「ノリウツギはいかにもアジア」という気もしてきます.
原産地は離れていても,この二種,系統樹の上では,きわめて近いことがわかっているとのこと.
双方ともに”穂咲き”アジサイというのが近縁を物語っているように思います.
カシワバアジサイは,葉が柏に似ているからでしょう
外国人からみても葉が目立つのは同じこと.英米人はオークの葉に見えるようで,”oakleaf hydrangea (or oak-leaved hydrangea)”と呼んでいます.
一方のノリウツギ.ウツギは空木で木の中に空洞があるからでしょうが,
ノリ?
ノリは「糊」!
レファレンス協同データベースによれば
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000150779
ノリウツギ(糊空木)
その樹皮を製紙用の粘剤として使う.
手漉き和紙をつくる時には粘剤として植物性のネリを入れる.
「黄蜀葵」(トロロアオイ)がよく使われるが,ノリウツギは温度の影響を受けないので,夏季にも安定して用いられるとされる.
これは過去の話ではありません.
昨年の農水省「和紙原料の生産状況等について」によれば,
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/attach/pdf/tokusan-2.pdf
「現在では群生状に生育している箇所は極めて少ない状況」ではあるものの,
「福井、奈良、兵庫、愛媛で製造される手すき和紙については,補助原料としてノリウツギの樹皮を使用.
近辺にあるものよりも糊の品質が良いことから,一部の地域においては北海道の森林組合に依頼し,リウツギを調達している事例がある」
とのこと.
貴重な和紙文化を支える重要な植物がノリウツギ.
知りませんでした.