キジバト,ヤマバト,ハト(2) 親しまれている鳥はと.名前の響きもいいですね.漢字は二つあって鳩と鴿.後者はあまり使われませんがドバトをかなり限定的に意味しているようです.英語もDoveとPigeonの二つありますが,互換性のある名前で違いはないとのこと.ただし,ついて回るイメージには違いがあるので使い方には注意が必要.ドバトが家禽化されたのは紀元前エジプト.以来,人と様々な交わりが記録されています.  朝籠り鳴く山鳩はわが胸にひそむこだまを知るごとく鳴く 三木アヤ

ハトは,最も親しまれている鳥の一つといえます.ハトという名前の響きもいいですね.

語源については,日本語源大辞典(小学館)には10の説が併記されていますが,よくネット上に取り上げられているのは,大言海等に記載がある「羽音ハタハタトの略か」説.

 

ハトの漢字表記,英語表記

「はと」の漢字は二つあって鳩と鴿.

後者が使われているのは見たことがありませんが,角川字源に寄ればドバト(イエバト)をかなり限定的に示す漢字のようです.

 

ハトの英語表記にも二つあって,DoveとPigeon.

ネット上にも,何か違いがあるのかという質問が多数寄せられています.結論を言ってしまうと

“ハト科には多くの種が存在するが,実は「dove」と「pigeon」はどちらもハト科のどの種にも適用できる,互換性のある名前なのである.両者の間に正式な違いはない.” https://www.doveline.com/html/dove-information.html

「pigeonはハト科の大型種で、小型種をdoveとする説もある」としていますが,これもあやふやな説で,調べてみてもこのような違いは認められないとのことです.ドイツ語ではdoveにつながるtaube,フランス語はpigeonの一語が使われているとのこと.この二つの系統それぞれから英語へ変換された結果,英語には二つの「鳩」が生まれたようです.
 
ただし,DoveとPigeonは,ついて回るイメージは異なるため,使い方には注意が必要.https://kimini.online/blog/archives/19413

doveはとてもよいイメージですが,pigeonについて回る印象はあまりよくない.

 

dove ランダムハウス英語辞典

1 ハト:ハト科 Columbidae の鳥の総称;   2 (純潔·柔和·愛情·平和の象徴としての)白ハト. 3 ⦅D-⦆ (象徴として)聖霊(Holy Ghost).   4 純潔な[無邪気な,柔和な]人; ⦅呼びかけに用いて⦆ ねえ,君,あなた(honey)my doveかわいい人よ.  5 ⦅主に米⦆ はと派の人,平和主義者.   7 はと色の大理石(dove-marble).  8 ⦅the D-⦆ 〘天文〙 はと(鳩)座(Columba).  9 ⦅D-⦆ ⦅商標⦆ 米国製の石けん.

 

pigeon ランダムハウス英語辞典

1 ハト:ハト科 Columbidae の鳥の総称   2 イエバト:カワラバト(rock dove)を改良したものa carrier [or a homing] pigeon伝書バト.  3 ⦅俗⦆(1)(通例,魅力的な)若い女の子.(2)だまされやすい人,かも  4 ⦅米暗黒街俗⦆ 密告者(stool pigeon).  5 ⦅トランプ俗⦆ (ポーカーで,引いてきた)絶好のカード.  6 〘射撃〙 =clay pigeon.   7 ⦅主に英話⦆ 仕事,商売; 関心事(pidgin).  8 紫がかった濃い灰色.  9 ⦅米俗⦆ 失効[使用済]の偽券[切符]; 偽の当たり馬券[くじ].  10 ⦅米俗⦆ 引受人の保護下にあるもとアルコール中毒患者.

 

ドバトとキジバト/コキジバト

カワラバトから家禽化されたドバトの歴史は古く,紀元前3000年のエジプトにさかのぼると言われています(ニッポニカ).

日本では,源頼義以来,八幡神の使いとして吾妻鏡』における八幡神使としての鳩への意味付け 池田浩貴キリスト教国ではノアの箱舟にオリーブをくわえてきた鳥としてもあまりにも有名なハト.この種もドバトと考えるのが自然でしょう.(https://smbasblog.com/2016/08/14/sunday-morning-bible-bird-study/

 

ドバトに次いでよく見かけるハトは,日本ではキジバトですね.鳴き声が独特でわが家では最もよく聞く鳥の声(伝統的には「デーデー ポッポー」.私は「ホーホ ホッホホー」と聞こえます).つがいで,時には子連れの姿も見かけます.狩猟鳥としてもよく知られていて食用に用いられています.また,山ばととして親しまれ,短歌に詠まれてきました.https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/12/19/235635

 

一方,ヨーロッパではキジバトとごく近縁のコキジバト(turtle dove)が,とても親しまれているようで,英語版ウィキペディアによれば,「献身的な愛の象徴」とされ,多くの詩歌に歌われているとのことです.

 

なお,一部の方々には負けず劣らず親しまれている絶滅種ドードー.こちらもハト科の鳥とされています.

朝籠り鳴く山鳩はわが胸にひそむこだまを知るごとく鳴く  三木アヤ 地底の泉

 

 

鳩の足くれなゐあはきいぢましさ霜踏みて餌あるかぎりは飛ばず  馬場あき子 月華の節

 

 

生きかはり生きかはりても科ありや永遠(とは)に雉鳩の声にて鳴けり  稲葉京子 槐の傘

 

 

雪の射す午後の日射しに溺れつつ命の芯にまどろむ野鳩  佐佐木幸綱 火を運ぶ

 

 

用水に溺るる鳩を救いたりひと日たましい虹のごとしも  道浦母都子 水憂 

キジバト,ヤマバト,ハト(1)  紅葉も最終盤の鎌倉明月院.本堂の裏の菖蒲園の光景は,冬に入ったことを感じさせるものでした.その一番奥の,アジサイの苗木を育てている一角に,つがいのキジバトが仲良くエサを探していました. 古畑の岨(そば)の立つ木にゐる鳩の友呼ぶ声のすごき夕暮れ 西行  飛びかける八幡の山のやま鳩の鳴くなる声は宮もとどろに 源実朝  入日さす山下かげのむら柴に鳩なきかはす秋の夕暮れ 藤原為家

朝晩の寒さが身にしみる昨日今日でした.冬が一気にやって来た気がします.

 

金曜日に訪れた鎌倉明月院の紅葉も最終盤.人が少なかったこともあって,寂しさをおぼえる景色.

 

本堂の裏の菖蒲園の光景は,冬に入ったことを感じさせるものでした.見方によっては,趣ある景色ともいえますが.

 

一番奥の,アジサイの苗木を育てている一角に,つがいのキジバトが仲良くエサを探していました.

ドバトはあまり好きになれませんが,キジバトはかわいらしく感じます.

 

キジバトは,

ハト目 Columbiformes,ハト科 Columbidae,キジバト属 Streptopelia,キジバト S. orientalis,

 

ヤマバトとも呼ばれていています.

それに対して,神社などで見られるハト(ドバト:カワラバトを飼育改良した家禽)は,飼育され,イエバトと呼ばれることもあるそうです.

 

ハト科には344種もの種があるそうで,50属に分けられています.

キジバト属とカワラバト属はごく近縁で,50属あるハト科で隣に位置しています.

https://en.wikipedia.org/wiki/Streptopelia

 

キジバト,ヤマバト,ハトを詠んだ短歌(1)

 

古畑の岨(そば)の立つ木にゐる鳩の友呼ぶ声のすごき夕暮れ  西行 新古今集

 

 

飛びかける八幡の山のやま鳩の鳴くなる声は宮もとどろに  源実朝 金槐集

 

 

入日さす山下かげのむら柴に鳩なきかはす秋の夕暮れ  藤原為家 新撰六帖

カブ/蕪(4) カブは,中国を経て日本にやってきた野菜ですが,原産地は,ヨーロッパあるいはシベリア温帯に渡る地域とされ,世界中で食べられています.和・中華・米英の料理を調べてみると---米英ではローストやグラタンにも.カブの栄養を大根・ほうれん草と比べてみると,根(胚軸)には,カリウム・ビタミンC,カルシウム,食物繊維が大根と同程度あります.一方,葉にはほうれん草と同等の栄養が.根と一緒に食べたいものですね.  前畑にふかぶかと山の日がぬくし老(おい)が着ぶくれて蕪(かぶら)をひくも 臼井大翼

今では一年中食べることができる「カブ/かぶ(蕪,蕪菁)」ですが,11〜12月のものが甘くて最も美味しいと思います.皆さんは?

 

カブは,中国を経て日本にやってきた野菜ですが,原産地は,ヨーロッパあるいはシベリア温帯に渡る地域とされ(ニッポニカ),世界中で食べられています.

 

どのような料理が人気があるか?

グーグル検索で調べてみると:

 

日本のレシピ

カブ レシピ

①カブのガーリックぽん炒め(ガーリックとオリーブオイル炒め.味付けをポン酢で)

②ほくほく 焼きカブの味噌田楽(電子レンジ処理した蕪を油なしでフライパンで焼き,甘味噌をかけていただく)

③かぶの煮物(あんかけ)

他に:かぶの炒め煮,かぶソテー,蕪のツナ和えサラダ),かぶのそぼろ煮,かぶの即席漬け 等

 

中華風レシピ

英語と日本語で検索してみました.カブは英語でTunip.ただし,英語でchinese turnipが,大根を指す場合があるようで,英語の検索では大根料理(例えば「大根餅」)が混在してしまいました.

Turnip recipes chinese

中華風 かぶ レシピ

turnip:中華のレシピ1

①簡単煮込み丼 EASY BRAISED TURNIP RICE BOWLS (大根を使っている! ガーリック,小ネギ,挽肉,椎茸を炒めてturnipを煮付ける,味付け:紹興酒Shaoxing wine, salt, dark soy sauce, light soy sauce, oyster sauce,)

②かぶとかぶ菜の生姜味スープ GINGERY CHINESE-STYLE SOUP WITH TURNIPS AND TURNIP GREENS

③大根餅 Chinese Turnip 千切りにした大根をボイルし,米粉と合わせ,様々な具材を入れて焼く

かぶ:中華のレシピ2

①かぶの中華和え  (酢・ごま油・鶏ガラスープの素・黒こしょうのドレッシングで和える.)

②カブの中華風漬け物 (塩もみしてニラとガーリック・ゴマ油・豆板醤で味付け)  

③鶏とかぶの中華蒸し煮 

 

米英のレシピ

Turnip recipes

①カブのタルティフレット Turnip tartiflette (蕪とルブロションチーズ、ベーコン、タマネギを用いたグラタン)

②簡単焼きかぶ Easy Roasted Turnips チャイブ,バター,オリーブオイルでローストする

③カブと青菜の焼き蒸し煮 Braised Turnips with Greens バター&オリーブオイルで焼く.+ビネガー,ハチミツ,コショウ

 

なお,かぶの調理法(下ごしらえを含む)等については,ネット上に沢山の記事があります.

https://www.kagome.co.jp/vegeday/yasai/turnip/

https://www.kurashiru.com/articles/511a2378-2e9f-43df-96d1-ee12139c1d18

https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=35

https://macaro-ni.jp/76622

https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0511_yasai1.html

 

カブの栄養

大根,ホウレンソウと比べてみました.

食べて美味しいカブの根(植物学的には「胚軸」)の部分は,栄養豊富とは言い難いのですが,大根と同程度の栄養をもちます.カリウムは野菜らしくかなり多いといえます.比較的多いのがビタミンC,カルシウム,葉酸,食物繊維.

一方,葉の部分は,ほうれん草と同程度の栄養があります.同じように栄養豊富な大根の葉は,やや硬いのが難点ですが,カブの葉は,漬物にしても美味しいし,火も通りやすいので根と一緒に食べることがおすすめです.

持統天皇が栽培を奨励した「あをな」ですから.

https://fooddb.mext.go.jp/result/result_top.pl?USER_ID=19214

 

 

 

かぶ,かぶらを詠んだ短歌

 

山県(やまがた)に蒔ける菘菜(あをな)も吉備人と共にし摘めば楽しくもあるか  仁徳天皇 古事記

 

 

地面(じべた)踏めば蕪(かぶら)みどりの葉をみだすいつくしきかもわが足の上  北原白秋 雲母集

 

 

前畑にふかぶかと山の日がぬくし老(おい)が着ぶくれて蕪(かぶら)をひくも  臼井大翼 私燭

 

 

蕪の葉のいたく乱れし朝霜をみつつし居るに心はずみ来(く)  高安国世 真実

 

カブ/蕪(3) 様々な話題(基本情報). ▽カブは「春まき」「秋まき」の二度が基本.冬取り/夏取りには適した品種が. ▽カブ栽培を持統天皇が奨励した記録が,日本書紀に ▽ちょっとした不思議:カブの漢字表記 蕪/蕪菁/菁 ▽カブ.食べている部分は「根」ではない. ▽カブの学名は,Brassica rapa var. rapa.Brassica rapaには,沢山の野菜が.とても同じ種とは思えません.

今日は,カブ(蕪・蕪菁)の話題,ア-ラ-カルトです.

基本情報に当たりますね.大部分が、既に何回か取りあげた話題になります.

 

▽カブ栽培は「春まき」「秋まき」の二度が基本とのこと.

やまむファームの解説は次の通り. この解説で「秋まき1」としているのが,現在食べているカブですね.一番美味しいと私は思いますが--

https://ymmfarm.com/cultivation/veg/turnip

 涼しい気候を好むカブは,真夏を避けた春まきと秋まきで年に2回の旬を楽しめます.カブの栽培時期・栽培スケジュールは次のようになります.(目安:地域によって異なる)

寒さが厳しい早春まき(春まき1),晩秋まき(秋まき2)はトンネル掛けして栽培します.

 

冬取り(秋まき2),夏取り(春まき2)には,それぞれ適した品種があるようです.

千葉県柏市を例にとると:

https://www.pref.chiba.lg.jp/ap-toukatsu/toukatsu/documents/kokabu.pdf

 

http://www.musaseed.co.jp/product/cr%E9%9B%AA%E5%B3%B0/

https://www.e-taneya.com/item/008443

 

(千葉県は,カブの生産量日本一.その代表的な産地が柏市です)

https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_yasai/index.html

 

 

▽カブは,日本で最も古くから食べられていた野菜の一つ.持統天皇が栽培を奨励した記録があります.

 

日本書紀 持統天皇(四十五) https://nihonsinwa.com/page/2455.html

---丙午 詔令天下 勸殖桑紵梨栗蕪菁等草木 以助五穀

(3月17日。詔(ミコトノリ)をして,天下に桑・紵(カラムシ=繊維が取れる植物)・梨・栗・蕪菁(アヲナ=今でいうカブ)などの草木を植えるよう勧めました.これらは五穀を助けるものになる。

 

 

▽ちょっとした不思議:カブの漢字表記

日本書紀に「蕪菁」(あをな)と記載されているのが,カブを意味しています.

・「蕪菁」は,中国語で「かぶ」の意で,日本での現在の読み方は「かぶ」(ぶせいともよみますが)

・「蕪」が,日本で最も一般的に使われ「かぶ」の漢字表記.しかし,もともとは「生い茂った雑草」などの意.

・「菁」が,カブを意味する本来の漢字のはずなのですが---.日本では「すずな」とよみます.あまり使われていませんが.

▽蕪(角川 字源)  形声。艸と、音符無ブ|ムとから成る。

①あれる(ある)。雑草が生いしげってあれる。〔陶潜・帰去来辞〕田園将㆑ニ蕪レント ②あれくさ。生いしげった雑草。 ---- ⑥→蕪菁ぶせい(かぶ)

▽菁(角川 字源) 形声。艸+音符靑セイ。

①かぶ。かぶらな。「蕪菁ぶせい」  ②にらの花。  ③はな。はなやか。類華。

▽すず‐な【菘・菁・鈴菜】 日本国語大辞典

〘名〙 「かぶ(蕪)」の異名。春の七草の一つ。

 

▽カブ.食べている部分は「根」ではない.

以前にも取り上げました.調べてみると,中学生が学ぶ内容のようです.NHK for schoolの解説がわかりやすい.動画もあります!

https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401317_00000

「カブとタイコン.

2種類の野菜を比ぺてみましょう.ダイコンの表面には、小さなくぼみがあります.カブの表面には、くぼみがなくなめらかです.

どうしてこのように違うのでしょうか.

丸いカブの下からのびているのが主根.主根からはさらに細い側根が出ています.大きくふくらんだところには側根は見つかりません.カブは、根ではなく根と茎の問が太くなっ たものなのです.」

 

(菜と茎の間は,「胚軸」と呼ばれています.

https://earthtime-club.jp/column/garden/「プランターで簡単!カブ栽培にチャレンジ!」/

https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/standard/eastasiaplants/20220823_008497.html

 

▽カブの学名は,Brassica rapa var. rapa.(アブラナ科アブラナ属)

Brassica rapaには,沢山の野菜が.とても同じ種とは思えません.

 

カブ/蕪(2)  「温海(あつみ)かぶ」:鶴岡市の山間部で栽培されている伝統野菜.栽培方法がユニーク.焼き畑農法でつくられます.無肥料・無農薬で栽培した「特別栽培農産物」に. NHK新日本風土記「山形 庄内」で取り上げられました.「(焼き畑は)「やってて面白いし,食べてもうまいし.昔からの伝統みたいなもんだから,やっぱり,つづけてほしいわな.ああ,なにもかも忘れられるな.山はいいわ.」「食材の味が違うんだよね.普通の在来種で無いのは,形と色は野菜だけど,香りとか匂いとかは薄くできてる」

昨日に続き,「カブ/ 蕪」を取り上げようとパソコンに向かって,バックグラウンドTVをNHKBSPに合わせたところ,始まったのが,新日本風土記「山形 庄内」.

始めに取り上げられたのが,なんと蕪=「温海(あつみ)かぶ」.

急遽,今日は「温海(あつみ)かぶ」を取り上げることに.

 

温海かぶ」は,鶴岡市の山間部で栽培されている伝統野菜.ただの伝統野菜ではありません.

栽培方法がユニークで,焼き畑農法で作られ,無肥料・無農薬で栽培した「特別栽培農産物」に認定されているという貴重な作物.

今の日本で焼き畑農法が守られているのは蕎麦ぐらいしか知りませんでした.

”地元の人たちはあくまで焼畑にこだわり続けます.その理由はただひとつ,「かぶが美味しくなるから」.”

すばらしいですね.

https://syokunomiyakoshounai.com/ingredient/ingre-04/002.html

https://www.kamosika.co.jp/item/mituokuya0016/

 

「食の都 庄内」というポータルサイトの記事を引用させていただきます.

温海かぶ あつみかぶ https://syokunomiyakoshounai.com/ingredient/ingre-04/002.html

温海かぶ」は鶴岡市の山間部に位置する一霞地区(旧・温海町一霞)を中心に,焼畑農法によって栽培されている在来野菜です.

シベリアまたは中国東北部から伝来したとされる西洋かぶの一種で,400年近い栽培の歴史を持っています.この集落は古くから温海かぶの採種場であり,種子の純度を保つために一霞の人たちは長い間,温海かぶ以外のアブラナ属植物を植えないという決まりごとを守り続けてきました.こうして自家採取された種を蒔く準備が始まるのは,7月に入ってから.伐採跡地など山の急斜面の下草を刈り取り,刈った草や木が充分乾燥するのを待って8月の旧盆あたりを目安に,炎天下のもと焼畑が行われます.

火を入れた畑にはまだその余熱が残っているうちに種が蒔かれ,その後は途中で間引きをするぐらいで基本的には何も手をかけず,10月に入ると大きく実ったものから次々と収穫されていきます.

決して楽な作業ではありません.けれども地元の人たちはあくまで焼畑にこだわり続けます.その理由はただひとつ,

「かぶが美味しくなるから」.

伝統を守り、本物の美味しさを守る,その頑固なまでのこだわりが,温海かぶには込められているのです.

https://syokunomiyakoshounai.com/ingredient/ingre-04/002.html

https://www.nhk.jp/p/ts/ZWJKNQ815M/episode/te/8Q8Y15JZLM/

 

NHK新日本風土記「山形 庄内」では,次のように取り上げられています.

 

山形県北西部.庄内地方.北に鳥海山.南東に月山がひかえ,米所庄内平野最上川が流れます.江戸時代ここは庄内藩.藩主酒井氏の城があった城下町鶴岡を中心に実り豊かな土地.-----

鶴岡から南へ10キロの田園地帯.江戸時代からつづく農家の跡取り,長南光(みつ)さんは町内の味を大事にした農家民宿を営んでいます.----

「石もったりすると,ハアハアするよ」

山沿いの温海地区でとれた赤カブが手に入ったので,甘酢漬けをつくります.地元で代々守られてきた在来作物が,ほかにもだだちゃ豆民田茄子など60種類もあるといいます.漬け上がるまで十日ほど.

 

赤カブがとれるのは,日本海を望む急峻な山の中.9月に杉を伐採した後の山を焼いて種を植えました.

五十嵐さん「今年はいいのができてますから」

400年前から,この地区で作られてきた在来作物・温海かぶ.一時途絶えていた伝統の赤カブ作りを地元の森林組合が復活させました.

高井さん「見つけ残してた.毎日来ているんだけど」「収穫残し?」「そうそう」

畑を焼くのは,暑い盛りの仕事.雪の降る前にカブの収穫を終えるには,この時期に種を蒔かないといけません.伐採された枝や葉などを焼いた灰が養分となって育つカブ.

甘酢に漬けると全体がピンクに染まり,味わいも深くなります.

収穫した後には杉の苗を植えていきます.

次にここでカブをつくるのはずっと先.杉が生長して伐採する頃です.

 

五十嵐さん

「あとここは50年後になるのか70年後になるのか,そんな感じで」

「やってて面白いし,食べてもうまいし.昔からの伝統みたいなもんだから,やっぱり,つづけてほしいわな.ああ,なにもかも忘れられるな.やまはいいわ.ハハハハハ」

 

この土地ならでは赤カブは,藤沢周平の時代小説にも度々登場しています.

長年の城勤めを退いた男の哀感を描いた三屋清左衛門残日録.主人公三屋と旧知の町奉行佐伯は,赤カブの酢漬けに目がありません.

 

『三屋清左衛門残日録』(藤沢周平)より:

「この赤蕪がうまいな」

町奉行の佐伯熊太は,おかみが運んできた蕪の漬物にさっそく手をつけた.

「わしはこれが好物でな.しかしよくいまごろまであったな.赤蕪というのは,大体,これから漬けるものじゃないのか」

「そうです.よくご存じですこと」

 

伝統の食文化や,季節の食材を守り抜いている鶴岡は,ユネスコの食文化創造都市に認定されています(2014年).

旬の赤蕪でつくる,長南さん自慢のなます.

「食材の味が違うんだよね.普通の在来種で無いのは,形と色は野菜だけど,香りとか匂いとかは薄くできてる.誰にでも食べられるような味に改良されてる.

在来種は匂いとか香りとかクセがあるの.だから,好きな人はやみつきになる.庄内の人たちは,自分達の味,知ってるから,自分達が食べるだけでも作り続けてきた」

 

山と海で周囲と隔てられている庄内だからこそ,地元のおいしさを大事にする.

食用菊「もってのほか」は,ざっと湯がいて,酢の物にします.ゴボウも煮えてきました.

-----

長南さん「普通が一番.当たり前の料理が一番.毎日食べても飽きないんだもの.美味しいものは,美味しいけれど毎日食べてれば飽きるんだ.」

 

 

NHKBSP「新日本風土記〜山形 庄内〜」

https://www.nhk.jp/p/ts/ZWJKNQ815M/episode/te/8Q8Y15JZLM/

初回放送日: 2022年5月27日

山形・庄内は山と海に囲まれ、広大な平野が広がる米どころ。ここは海の幸、山の幸に恵まれた食材の宝庫だ。郷土の作家の藤沢周平の言葉を道しるべに、庄内の味を巡る。

山形県の海側・庄内地方は三方を山に囲まれ、日本海にむけて広大な平野が広がる日本有数の米どころ。ここは海の幸、山の幸に恵まれた食材の宝庫だ。その故郷の味をこよなく愛したのが庄内生れの作家・藤沢周平。様々な作品の中で、懐かしい味について語った。秋が旬の赤カブ、冬の訪れを知らせるハタハタ。寒風が吹きすさむ冬の味覚の王様、寒ダラなど、藤沢作品でもおなじみの庄内の味を、名作の言葉を道しるべに巡る。

 

かぶの品種分布

https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/2001_yasai1.html

愛知~岐阜~福井を結ぶ「かぶらライン」でかぶの栽培品種が大まかに分かれており、東では、ヨーロッパを経て伝わった西洋型で寒さに強く、西では、中国を経由して伝わった日本型で気温に敏感でとう立ちしやすい品種が多い。主な品種は以下の分布図のとおりである。

 

カブ/蕪(1) 「あやめ雪」という美しいカブを購入しました.スープにしても漬物にしても美味しいカブです.大根より古く渡来したカブ.日本書紀では,「蕪菁(あをな)」と記載され,持統天皇が五穀の助けとする作物として栽培をすすめたとのこと.新しい品種が開発され,一方では,各地方独特の品種が沢山あって,現在でも栽培がすすめられています.野沢菜の漬物や聖護院かぶの千枚漬けは全国にその名を知られていて,スーパーでも販売されていますね.各地の特産のカブの画像を集めてみました.

冬野菜が美味しい季節になりました.

今日は,カブを購入.「あやめ雪」という美しいカブ.昨年味わって,スープにしても漬物にしても美味しいことを確認.

(写真には一つだけ黄カブが混ざっていますが二色のものがあやめ雪)

 

サカタのタネのランキングでは2位.黄カブの「味こがね」も4位に.タキイのベスト5には色のついたカブは入ってきていませんが.

https://sakata-netshop.com/shop/c/c101413/

https://shop.takii.co.jp/category/00003442

 

 

サカタのタネのおすすめの言葉は次の通りで,その通りかと思います.

アヤメ雪 https://sakata-netshop.com/shop/g/g11200003/

○2色の彩りが美しい

○緻密な肉質で甘くておいしい

○す入りが少なくて育てやすい

 

カブは,ヨーロッパあるいはシベリア温帯に渡る地域が原産とされていますが,日本へは,中国を経て,大根より古く渡来したとのこと(ニッポニカ)

 

日本書紀では,「蕪菁(あをな)」と記載され,持統天皇が五穀の助けとする作物として栽培をすすめたとのこと.

「蕪菁」は中国語のカブ.日本では,現在,「かぶ」の漢字表記とされています.「ぶせい」とも読みますが.

かぶ【蕪・蕪菁】 日本国語大辞典
〘名〙 (「かぶら」の女房詞「おかぶ」から変化した語か。類例に「なすび」の女房詞「おなす」から「なす」ができた例がある)

 

また,古事記仁徳天皇が詠んだ歌にある「菘菜(あをな)」も,カブとする説が有力.

 

山県(やまがた)に蒔ける菘菜(あをな)も吉備人と共にし摘めば楽しくもあるか  仁徳天皇 古事記

 

菁 意味 ①かぶ.かぶらな.「蕪菁ぶせい」,②にらの花.,③はな.はなやか.類華.

菘 意味 とうな.唐菜.野菜の一種,葉を漬物にし,食用とする.(国訓 すずな.蕪かぶの別称)

 

 

このように古来から親しまれ,食べられてきたカブ.

地方独特の品種が沢山あって,現在でも栽培がすすめられています.野沢菜の漬物や聖護院かぶ千枚漬けは全国にその名を知られていて,スーパーでも販売されていますね.

以下,各地の特産のカブの画像を集めてみました.あやめ雪同様,ツートンカラーのものも.以前,日野菜をぬか漬けにしたところ,とても美味しかった思い出があります.

 

日野菜 https://shigaquo.jp/foods/4885.html

津田かぶ http://furusato.sanin.jp/p/osusume/01/19/1/

天王寺かぶ ttps://www.pref.osaka.lg.jp/minamikawachinm/m_index/f_shun_tennojikabu.html

飛騨かぶ https://www.yoshima.net/akakabu.html#rekisi

野沢菜 https://nasilvi.com/2019/02/21/post-3573/

酸茎菜 https://www.shibakyu.jp/shopping/products/detail.php?product_id=102

聖護院かぶ https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code00925472.html





 

鴨・家鴨を詠んだ短歌(2)  鴨は,人間に最も身近な水鳥といえるのではないでしょうか.多く飛来し,飼育したり猟の対象としたり.そして食べて美味しいとされ,肉・卵を利用するために家禽となったのがアヒル(家鴨). 遠つあふみ浜なのみ湖(うみ)冬近し真鴨翔(かけ)れり北の昏(くら)きに 北原白秋  胴体は笑いの充まんかなしげに首ふり首ふりアヒルは走る 加藤克巳   

鎌倉八幡宮源氏池に今浮かぶ鴨は,オナガガモ

北の地からやって来ました.最近著しく増加している種とのこと.

 

(:カモ科カモ亜科に属する鳥の総称)は,人間に最も身近な水鳥と言ってもいいでしょうか.

 

多くの種が,群れで飛来するばかりか,カルガモのように留鳥として繁殖する種も.

人間との関係も様々.

(ニッポニカ https://kotobank.jp/word/カモ-46888 

「飼育が容易であり、動物園などの水禽舎、池の放し飼いのような装飾飼い鳥として好適で美しい。」

「肉は赤みを帯び、脂肪は皮下に多く、柔らかく風味があり、鳥肉中もっともおいしいとされている」

 鴨猟は古来からさかんで,大名の猟場として「鴨場」が作られて,現在も宮内庁による伝承がなされている.

 

そして,

カモ亜科マガモ属の代表的な種:マガモから家禽となったのがアヒル です.

漢字では家鴨.

英語のDuckは,アヒルと和訳してしまうことがありますが,もともとは鴨のこと.

ヒルと特定したい場合にはa domestic duck.それに対して野生の鴨と特定したい場合にはa wild duck.

 

考古学上の史料が少なく,アヒルがいつの頃家畜化されたかはっきりしないとのことですが,紀元前500年頃には中国中央部の書物に初めて家禽化が記載されたとのこと(英語版ウィキペディア https://en.wikipedia.org/wiki/Domestic_duck ).

なお,近年の遺伝子研究から,

「家鴨はマガモから約3万8000年前に、ヒドリガモからは約5万4000年前に分離したことが明らかになった」. 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7840458/

 

ヒルと言えば,「みにくいあひるの子(アンデルセン」に登場するアヒル一家やドナルドダックのような白い鳥を想像しますが---

実際には多数の種類があって,マガモ似の翅の色を持つ種も.よく飼育されている種類は食肉用,採卵用に特化されているようです.

白いアヒルの代表種がペキンダックで,食肉用.

合鴨農法で有名になったアイガモは,「アヒルとマガンの交配種」と解説されていますが,分類としてはアヒル(=家禽化されたマガモ)とするのがわかりやすいですね.

https://kotobank.jp/word/アイガモ-814078

 

アイガモの学名は,Anas platyrhynchos var.domesticus.

https://ja.wikipedia.org/wiki/アイガモ

そして,

ヒルの学名も,Anas platyrhynchos var.domesticus.

マガモの学名が,Anas platyrhynchos .

 

食肉用のアヒル

採卵用のアヒル

https://en.wikipedia.org/wiki/American_Pekin https://domesticanimalbreeds.com/rouen-duck-breed-everything-you-need-to-know/ https://en.wikipedia.org/wiki/Aylesbury_duck https://en.wikipedia.org/wiki/Rouen_duck https://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Runner_duck https://www.metzerfarms.com/khaki-campbell-ducks.html

 

鴨・家鴨を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記 教育社 より)

 

花原の道はきはまる森の中の静けさ思へば鴨鳴く聞こゆ  島木赤彦 馬鈴薯の花

 

 

遠つあふみ浜なのみ湖(うみ)冬近し真鴨翔(かけ)れり北の昏(くら)きに  北原白秋 夢殿

 

 

風立てば沼の隈回(くまみ)のかたよりに寄りてあそべり鴨鳥の群れ  若山牧水 山桜の歌

 

 

いづくまでゆく鴨ならむ夕波の高まる沖に一羽なやめる  中河幹子 夕波

 

 

胴体は笑いの充まんかなしげに首ふり首ふりアヒルは走る  加藤克巳 球体

 

 

家鴨のごとき肉体(からだ)もつゆゑ遊ばれて女ありとふ神よ救ふな  三木アヤ 地底の泉

 

 

かた寄りに池にゐる鴨のその嘴(はし)にこもごもひたす浮き藻のひまに  玉城徹 蒼耳

 

 

かるがもの羽繕ひする岸の坑こがもは首を背に埋め眠る  来島靖生 雷

 

鴨を詠んだ短歌(1)  冬場の鎌倉八幡宮・源氏池は鴨の池になっていました.名前を調べてみると「オナガガモ」.雄と雌は異なる装い.北の国からやつて来た渡り鳥. 葦辺行く鴨の羽がいに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 志貴皇子   起きながら明かしつるかなともねせむ鴨の上毛の霜ならなくに 和泉式部  あし鴨のよるべのみぎはつららゐてうき寝をうつす沖の月かげ 藤原定家

先日訪れた,八幡宮の源氏池は,鴨の池になっていました.

正月の池にはカモメも沢山混じつていましたが.

 

鳥に全く疎い私には,何という名前の鴨か分かりません.

雄と雌は,異なる装い.

 

ネットを調べた結果,オナガガモと判明.

https://ja.wikipedia.org/wiki/オナガガモ

 

冬に北方から飛来する渡り鳥.長期間の飛行ができ,北米から来ることもあるそうです.

 

オナガガモ/ 尾長鴨 ニッポニカ

[学] Anas acuta

鳥綱カモ目カモ科の鳥。全長約70センチメートルで頸(くび)が他種より長く、体形も長飛行に適し、全北区に広く繁殖しているが、アフリカ、インド、南アジア、フィリピンにまで渡る。北アメリカから日本に渡来するものがあり、群集性が強い。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/オナガガモ

 

日本では,多くのカモ属の鳥を見ることができ,その多くは冬にやってくる渡り鳥.

 

日本でよく見ることができる“カモ”(https://www.bepal.net/archives/220324 

カルガモ/軽鴨 留鳥マガモ/真鴨 冬鳥 ,ヒドリガモ/緋鳥鴨 冬鳥 ,ヨシガモ/葦鴨 冬鳥,ハシビロガモ/嘴広鴨 冬鳥,コガモ/小鴨 冬鳥,オシドリ/鴛鴦 漂鳥,

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/マガモ

https://ja.wikipedia.org/wiki/カルガモ

 

鴨を詠んだ短歌

 

葦辺行く鴨の羽がいに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ  志貴皇子 万葉集巻一 六四

 

 

ももづたふ磐余(いはれ)の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠(がく)りなむ  大津皇子 万葉集巻三 四一六

 

 

起きながら明かしつるかなともねせむ鴨の上毛の霜ならなくに  和泉式部 後拾遺集

 

 

見るままに冬は来にけり鴨のゐる入江のみぎはうすごほりつつ  式子内親王 新古今集

 

 

あし鴨のよるべのみぎはつららゐてうき寝をうつす沖の月かげ  藤原定家 拾遺愚草

 

 

 

 

枯蓮  鎌倉八幡宮源平池へ「枯れ蓮探し」に出かけたのですが,案の定,鎌倉一の観光地の枯れ蓮は,すっかり刈り取られていて,痕跡さえみつかりませんでした.枯蓮は正岡子規以降,俳人が好むテーマとなり,また与謝野鉄幹の詩「敗荷」:「 夕(ゆうべ)不忍の池ゆく  涙 おちざらむや  蓮折れて月うすき---」が.短歌で取り上げられることは少ないとのこと.  茎折れて水にうつぶす枯蓮の葉うらたたきて秋の雨降る 橘曙覧

昨日は,三時過ぎに八幡宮へ散歩.

鎌倉一の観光の名所.最近は平日でも混雑しているのですが,日曜の三時過ぎは意外なほど人が少なく,混雑嫌いには狙い目の時間帯.

目的は「枯れ蓮探し」というややマニアックなもので,源平池が探す対象.しかし---

案の定,鎌倉一の観光地の枯れ蓮は,すっかり刈り取られていて,痕跡さえみつかりませんでした.

池に浮かんだ紅葉はなかなか風情がありましたが.

源氏池の主役は鴨.観光客が与える鯉のエサを全て横取りしていました.

 

7月にはきれいな花を咲かせていた蓮も,秋になれば全ての葉を枯らします.

https://www.akb.jp/c/free_9_128/hasu_kanri

https://forest17.com/flower11/flw11_00550079.html

 

「さびしい景色でしょうが,きっと趣があるに違いない」と思ったのですが---

ネット上にも何名かの方が,枯れた蓮の葉/蜂巣の美しい画像をアップしています.立ち寄ってみて下さい.

http://horikaz2.blog.fc2.com/blog-entry-2632.html

http://stop-ouna.jugem.jp/?eid=875

 

 

古今短歌歳時記(教育社)によれば,枯蓮は正岡子規以降,俳人が好むテーマとなっているとのこと.

 蓮十里尽く枯れてしまいひけり 子規

 

そして,与謝野鉄幹のよく知られた詩.(私は知りませんでしたが)

https://www.asahi-net.or.jp/~hm9k-ajm/musasinobunngakusannpo/tekkannakiko/haika/haika.htm

 敗荷

  夕(ゆうべ)不忍の池ゆく
  涙 おちざらむや
  蓮折れて月うすき
 
  長酡亭(ちょうだてい) 酒寒し
  似ず 住の江のあづまや
  夢 とこしへ甘きに

  とこしへと云ふか
  わづか ひと秋
  花 もろかりし
  人 もろかりし

  おばしまに倚(よ)りて
  君伏目がちに
  鳴呼何とか云ひし
  蓮に書ける歌

 

 

短歌ではあまり歌題とされていないとのことですが:

 

茎折れて水にうつぶす枯蓮の葉うらたたきて秋の雨降る  橘曙覧 志濃夫廼舎歌集

 

 

枯蓮の茎の間とざす薄氷をよけて真鴨のゆく水脈(みを)光る  上田三四二 遊行

 

 

 

蓮と蓮根については:

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/02/235702

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/03/235619

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/04/235622

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/05/235539

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/11/20/005847

枯れ芒,枯れ尾花を詠った短歌(1)  芒,薄は,元の漢字の意味に「すすき」はありません.枯芒/枯尾花は,俳句では「三冬(さんとう)」の季語で,俳句では好んで詠まれてきました. ともかくもならでや雪の枯尾花 芭蕉  そして「船頭小唄」は高齢者なら誰でも知る歌. 枯すすき折穂なびけり人住めり崖の片側土くずれして 岡麓   枯尾花いまだ枯穂を振れる根には最早今年の芽や萌えつらむ 尾山篤二郎

今日も,昼間はそれほど寒くはなかったのですが,夜になると冬を感じさせてくれます.

 

昨日から取り上げている枯芒/枯尾花.

 

改めて,芒,薄,尾花を辞典/字典で調べてみると---いろいろなことが分かります.

(字源)

なりたち篆文  形声。艸と、音符(バウ)とから成る。「のぎ」の意を表す。

意味❶のぎ。㋐稲・麦などの穀物の、実を包む殻の先端の細毛。㋑草木のとげ。「芒刺」

国訓❶すすき。秋の七草の一つ。

 

(字源)

なりたち篆文  形声。艸と、音符(ホ,ハク)とから成る。くさはらの意を表す。借りて「うすい」意に用いる。

意味❶くさはら。くさむら。「林薄」---- ❺うすい(うすし)。

国訓 すすき。おばな。イネ科の多年生草本秋の七草の一つ。

 

お‐ばな をばな【尾花】(日本国語大辞典

①(花の形が、けものの尾に似ているところから) ススキの花穂。はなすすき。《季・秋》

 

枯芒/枯尾花は,俳句では「三冬(さんとう)」の季語で,

さん‐とう【三冬】 日本国語大辞典

〘名〙 冬の三か月。孟冬(陰暦一〇月)・仲冬(陰暦一一月)・季冬(陰暦一二月)の総称。また、三度の冬。三か年。《季・冬》

 

俳句で好んで詠まれてきました.(古今短歌歳時記)

「葉も穂も枯れ果て、茎の部分が風に揺れる姿は寂寥感の極み。枯れ尽くした芒も野原一面に群れると美しくもある。雪や風の中に見るのも風情がひとしお」

https://kigosai.sub.jp/001/archives/3308

ともかくもならでや雪の枯尾花  芭蕉 北の山

枯尾花野守が鬢にさはりけり  蕪村 蕪村遺稿

土になれ土になれとやかれ尾花 一茶 七番日記

路傍の石に夕日や枯すすき  泉鏡花 「鏡花全集」

 

そして,高齢の方なら誰もが知る歌があります.

「船頭小唄」(野口雨情/中山晋平

俺は河原の 枯れすすき おなじお前も 枯れすすき  どうせ二人は この世では 花の咲かない 枯れすすき

死ぬも生きるも ねえお前 水の流れに 何かわろ  俺も お前も 利根川の 船の船頭で 暮らそうよ

枯れた真菰に 照らしてる 潮来出島の お月さん  わたしゃこれから 利根川の 船の船頭で 暮らすのよ

なぜに冷たい 吹く風が 枯れたすすきの 二人ゆえ  熱い涙の 出たときは 汲んでおくれよ お月さん

どうせ二人は この世では 花の咲かない 枯れすすき  水を枕に 利根川の 船の船頭で 暮らそうよ

 

枯れ芒,枯れ尾花を詠った短歌(2)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

枯すすき折穂なびけり人住めり崖の片側土くずれして  岡麓 冬空

 

 

枯れ薄すこしばかりが穂をゆれり山吹絶えて年経たるらし  尾山篤二郎 白玉集

 

 

枯尾花いまだ枯穂を振れる根には最早今年の芽や萌えつらむ  尾山篤二郎 雪客

 

 

垣に添ひむらむらなびく枯尾花硝子ごしに見ておもひを凝らす  植松壽樹 渦若葉

 

枯れ芒,枯れ尾花を詠った短歌(1)  枯れ木立や落葉,冬枯れは見る人の心に訴えるものがあります.実朝・後鳥羽院も,その姿に想いを重ねています. 今日は,枯れ芒を詠つた短歌を取り上げます. 朽ちもせぬその名ばかりをとどめ置きて枯野の薄形見にぞ見る 西行  花すすき枯れたる野辺に置く霜のむすぼほれつつ冬は来にけり 源実朝  霜枯の尾花ふみわけ行く鹿の声こそきかね跡は見えけり 後鳥羽院

枯れ木立や落葉の話ばかりですが---

今日もまた.すみません.

しかし,

枯れ木立や落葉,冬枯れは見る人の心に訴えるものがあります.

今日は,枯れた芒(薄)を詠つた短歌を取り上げます.

実朝,後鳥羽院.現在の大河ドラマで脚光を浴びている歌人も「花すすき枯れたる野辺」「霜枯の尾花」と詠っています.

 

その前に昨日の続きを少しだけ付け足します.

 

 

昨日,気になっていたことを少し調べた結果,

「葉を落とすメカニズム」は,かなり分かっているとして,Try-itの解説をお借りして,高校生物の学習内容を掲載しましたが---

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/12/09/224439?_ga=2.22371835.197030165.1669732538-406588761.1663859476

続けて調べてみると---

葉を落とす最初のシグナルである「温度」を,植物がどのように感知するかについてはあまり分かっていませんでした.もちろん高校生物の教科書には記載がありません.

しかし,近年ようやく研究が進み始めたようで,フィトクロムBやフォトトロピンなど,光センサーの候補も挙げられてきています.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pce.13979

 

(一方,哺乳動物の温度感知については,かなり研究が進んでいて,「温度と触覚の受容体を発見」した米国博士2人に,2021年のノーベル医学生理学賞が与えられました.

https://newswitch.jp/p/29077

https://www.nature.com/articles/nrn3784 

ここでいう「触覚」は,トウガラシの成分やハッカの成分を感知する「触覚」.温度センサーと同じ分子が,トウガラシやハッカで活性化される!)

 

 

 

枯れ芒,枯れ尾花を詠った短歌(1)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

朽ちもせぬその名ばかりをとどめ置きて枯野の薄形見にぞ見る  西行 山家集

 

 

花すすき枯れたる野辺に置く霜のむすぼほれつつ冬は来にけり  源実朝 金槐集

 

 

霜枯の尾花ふみわけ行く鹿の声こそきかね跡は見えけり  後鳥羽院 夫木抄

枯木立・枯枝・裸木・冬枯を詠んだ短歌(2)  「葉を落とすメカニズム」は,かなり分かっていて,高校の生物でも習います(アブシシン酸とエチレンが協調的に作用⇒落葉). 枯原の夜靄(もや)のなかに影太く立つ裸木にあゆみ近づく 長谷川銀作  枯枝の影をふみつつ歩み行く吾の今宵を知る人はなし 近藤芳美  姫沙羅も橅もはだか木雪上にみるものなべて簡淨なりき 川口美根子 

今年もあと約三週間.

わが家でも,新年向けのハボタンも植え終わりました.

 

ナンテンは,赤い実をたわわに実らせています.先日雀がきていましたが,被害はほとんど受けていません.

庭の柿や梅は,かなり前から葉をすっかり落として,「枯木立」に.

 

「落葉樹は,なぜ一斉に落葉するのか」は,エネルギー利用の効率性などで説明されているようですが(例えばhttps://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=217),生きものの在り方に理由を求めるのは,素人目には,かなり無理があるように思ってしまいます

一見いつの間にか葉が入れ替わっている常緑樹も併存しています.

種の多様性をどう説明するのでしょうか?常に最適を求めて進化してきたわけはないでしょう? などと言いたくなる(=単なる素人の強み).

 

一方,「葉を落とすメカニズム」は,かなり分かっていて,高校の生物でも習うようですね.私は全く知りませんでしたが(⇒5分でわかる!落葉のメカニズム/Try-it がわかりやすいので転載させていただきました).葉を落とすことが次期に花を咲かせるための大切な過程となっている植物(例えば牡丹)も知られてきています. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2021.777328/full

https://www.researchgate.net/publication/340588716_Defoliation_not_gibberellin_induces_tree_peony_autumn_reflowering_regulated_by_carbon_allocation_and_metabolism_in_buds_and_leaves

 

 

5分でわかる!落葉のメカニズム (ブナを例として)

アブシシン酸とエチレンが協調的に作用⇒落葉

https://www.try-it.jp/chapters-15371/sections-15372/lessons-15405/point-2/

ブナの落葉に関与する植物ホルモンは2種類あります.アブシシン酸とエチレンです.

ブナは,周囲が寒くなる秋口にアブシシン酸を分泌します.アブシシン酸は寒冷刺激で分泌され,エチレンを合成させることが特徴です.エチレンは気体の植物ホルモンです.そのため,自身だけでなく周囲の木本にも作用します.

エチレンには離層を形成する働きがあります.離層とは何でしょうか?次の図を見てください.

これはブナの葉の付け根を拡大した断面図です.図の左側はブナの幹です.右側の葉を支えている部分は葉柄といいます.葉柄には道管と師管が束になった維管束が通っています.離層とは,エチレンによって葉柄部分に形成される領域です.

エチレンが作用すると,この領域の植物細胞の細胞壁は緩く脆くなっていき,その働きをやめていくのです.

離層が形成されると,維管束の中の生細胞も働きを失います.すると,師管が機能しなくなります.師管は,葉で合成された物質を輸送していましたね.離層の形成にともない,葉で合成された物質は葉に蓄積されていくのです

葉ではアントシアニンという色素が合成されています.アントシアニンが葉に蓄積されると,葉の色が緑から赤へ変化します.この現象が紅葉です.紅葉が見られるということは,葉柄で離層が形成されていることを意味しているのですね.

離層の形成にともなって,離層の植物細胞の細胞壁は脆くなっていきました.細胞壁には植物細胞をおおうだけでなく植物細胞どうしをつなげる働きもありましたね.離層の形成が進むと,やがて細胞壁は葉の重みに耐えられなくなり,離層の部分で葉が外れるのです.

ブナは,落葉によって冬の厳しい寒さに対応しています.

落葉という現象は,アブシシン酸とエチレンという2種類の植物ホルモンが協調的に作用することで,紅葉を経て起こるのですね.

 

 

枯木立・枯枝・裸木・冬枯を詠んだ短歌(2)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

裸木に花はひそかに咲きてあり地の上(へ)の影のゆれ動くかな  土屋文明 ふゆくさ

 

 

ゆくりなく屈(かが)みても見つ冬がれし路傍の草に霜かそけきを  斎藤茂吉 遍歴

 

 

枯原の夜靄(もや)のなかに影太く立つ裸木にあゆみ近づく  長谷川銀作 木原

 

 

冬枯の谷間に寒きへやありき何かを待ちてわれは座りゐし  四賀光子 白き湾

 

 

一本の枯木立ち首が折れてをり壁の灰いろに沈む時なれば  前川佐美雄 捜神

 

 

枯枝の影をふみつつ歩み行く吾の今宵を知る人はなし  近藤芳美 早春歌

 

 

枯枝に雪のしずくが午すぎて青みおびつゝこおりはじめる  加藤克巳 心庭晩夏

 

 

裸木らが何の未来か支へゐる真昼間ゆきて耳たぶ寒し  中城ふみ子 乳房喪失

 

 

姫沙羅も橅もはだか木雪上にみるものなべて簡淨なりき  川口美根子 双翔

鎌倉光則寺・冬の入り口 / 枯木立・裸木・冬枯を詠んだ短歌(1) 冬の入り口の植物たちの画像を載せておきます:紅葉/黃葉,万両・千両,山茶花,蜜柑,石蕗,ネリネ. あはれみし袖の露をば結びかへて霜にしみゆく冬がれの野ベ 西行  枯木立心々のはなれたる二人は添ひて道を歩めり 佐佐木信綱  裸木に花はひそかに咲きてあり地の上(へ)の影のゆれ動くかな 土屋文明

今日は昼間よく晴れて過ごしやすかったのですが,朝晩の寒さは,冬を感じさせます.

紅葉も見納め,ということで,先日訪れた,鎌倉光則寺の画像を載せておきます.冬の入り口の植物たち: 紅葉/黃葉,万両・千両,山茶花,蜜柑,石蕗,ネリネ

 

光則寺の代名詞にもなっていた海棠(花海棠).老木で一時衰えきっていましたが,手当が行き届いて,かなり回復.冬に入ろうとするのに,まだかなりの葉を残し,小さな実もなっていました.

 

桜,梅はほとんど葉を落とし,「裸木」に.

葉を落とした木は「枯木立」と呼ばれることもあるとのこと.知りませんでした.「枯木」とは違うんですね.「冬枯」も葉が枯れるだけの意味.「枯枝」には,二つの意味があるそうです.

日本国語大辞典より:

はだか‐ぎ【裸木】

冬、葉の落ちてしまった幹と枝だけの木。《季・冬》 〔俳諧・季寄新題集(1848)〕

 

かれ‐こだち【枯木立】

①冬になって葉の枯れ落ちた木立。冬木立。《季・冬》

俳諧俳諧四季部類(1780)一〇月

「冬木立 枯木立 雑也」

 

かれ‐き【枯木】

〘名〙 (「かれぎ」とも) 葉の落ちた立ち木。枯れはてた樹木。また、老いて生気を失ったもののたとえ。枯れた樹木。からき。《季・冬》

 

ふゆ‐がれ【冬枯】

①冬になって草木の葉が枯れること。また、そのながめの寒々としてものさびしい様子。《季・冬》

*古今(905−914)恋五・七九一

「冬がれの野べとわが身を思ひせばもえても春を待たまし物を〈伊勢〉」

 

かれ‐えだ【枯枝】
〘名〙 葉の落ちた枝。または、枯死した樹木の枝。かれえ。からえだ。《季・冬》

 

 

枯木立・枯枝・裸木・冬枯を詠んだ短歌(1)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

冬がれの野辺とわが身を思ひせば燃えても春を待たましものを  伊勢 古今集

 

 

たのもしき契は春にあらねどもかれにし枝も花ぞ咲きける  平時忠 千載集

 

 

あはれみし袖の露をば結びかへて霜にしみゆく冬がれの野ベ  西行 西行法師歌集

 

 

枯木立心々(こころごころ)のはなれたる二人は添ひて道を歩めり  佐佐木信綱 新月

 

 

冬がれの国とはなりぬ千曲川土濁りして虹たつ雨雲  島木赤彦 氷魚

 

 

裸木に花はひそかに咲きてあり地の上(へ)の影のゆれ動くかな  土屋文明 ふゆくさ

 

十二月・師走・極月を詠んだ短歌  陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています.極月とも.  牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも 釈迢空  綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し 馬場あき子  極月の水にしづめる青砥石引上げて砥ぐ霜の柳刃 馬場あき子  恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心 俵万智

12月に入って,一週間.

わが家の冬の定番ビオラの苗を植えて二週間.大分育ってきています.

 

 

陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています.

 

語源としては「師(僧)が忙しく走り回る月」説が広まっていますが,「為果つ月(一年の終わりの月)」の転だとも言われているとのこと(古今短歌歳時記 教育社).

 

日本書紀(720年)でも十二月をシハスとよむようです日本国語大辞典 しわす: 書紀 神武即位前「十有二月シハスの丙辰朔、壬午のひ」北野本室町訓).

万葉集でも同じ.ただし「一例あるだけで,その後の勅撰集でも不思議と思われるほど詠まれていない」(古今短歌歳時記 教育社).

同じ意味で「極月ごくげつ」(「年の極きわまる月」の意 日本国語大辞典があるそうですが,あまり見たことがありませんでした.

 

 

十二月・師走・極月を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記 鳥居正博 教育社)

 

十二月(しはす)には沫雪(あわゆき)降ると知らねかも梅の花咲く含(ふふ)めらずして  紀小鹿郎女 万葉集巻八 一六四八

 

 

牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも  釈迢空 海山のあひだ

 

 

しづかなる心をもちてわびずみの師走の紙襖(ふすま)妹とつくらふ  吉井勇 天彦

 

 

逃れえぬわが奈良すでに師走なる啾々(しゅうしゅう)と夜を怨霊のこゑ  前川佐美雄 松杉

 

 

たてかけの何かさびしき青竹の師走冬空を広く見せたり  宮柊二 群鶏

 

 

薄ら日に玉美なしゆく栴檀の秀枝(ほつえ)眩しきままに極月  安永蕗子 蝶紋

 

 

綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し  馬場あき子 ふぶき浜

 

 

極月の水にしづめる青砥石引上げて砥ぐ霜の柳刃  馬場あき子 雪木

 

 

恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心  俵万智 サラダ記念日

 

紅葉はそろそろ見納めのこの時期,新型コロナ第8波の感染拡大が続いています. 第7波ほどの急激な感染者増は,いまのところ見られていないのがやや救い.日本の感染者は,確定した人だけで2500万人,人口の20.5%.最近公表された抗体検査で見た感染率は26.5%.「気づかずに、あるいは診断されずに感染している人が数百万人いる事になります」.なお,この程度の感染率では「ハイブリッド免疫」獲得にはほど遠く,「よそはよそ、うちはうち、ということで日本に合ったペースで緩和を進めていくことが重要」(忽那賢志)

12月に入ってそろそろ一週間.紅葉の見頃もそろそろおしまいですね.

鎌倉長谷寺長谷観音)の紅葉は見事でした.お隣の光則寺は,のんびり楽しむには最適なお寺.

長谷寺の紅葉:塀の外から撮影)

(光則寺の紅葉)

 

新型コロナ第8波の感染拡大が続いています.

第7波ほどの急激な感染者増は,いまのところ見られていないのがやや救いですが---,日本の感染者は,検査で確定した人だけで2500万人を超えたと報告されています.

人口(約1億2300万)の20.5%にあたります.オミクロン株の感染拡大に伴い,急速に増加しました.



忽那先生の記事によると,献血者の抗体検査(⇒*)でみた感染率は26.5%厚生労働省調査結果)

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221203-00326683

 

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221203-00326683

「気づかずに、あるいは診断されずに感染している人が数百万人いる事になります」

この違いを多いとするか少ないとするかは受け取り方次第ですが,私は少ない=日本の感染者のサーベイランスはかなりしっかりしていると考えますが---いかがでしょうか?

そして,この抗体検査の結果は,これまで報告されている感染者の結果とほぼ相関しています.

従って,特に目新しいところは無いようにも思えます.

しかし,今までの議論の前提があまり間違えていないことを確認できること,そして,この程度の違いは確かにあるとしっかり認識できることはとても大切と思います.

 

⇒*

感染した人のもつ抗体(N抗体+S抗体)と,ワクチン接種した人のもつ抗体(S抗体)が一部異なる=感染した人はN抗体(Nたんぱく質に対する抗体)を持つが,ワクチン接種ではこの抗体はできない.

N-protein:ヌクレオカプシド(N)たんぱく質,S-proteins:スパイク(S)たんぱく質

https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/sars-cov-2-covid-19-antigen-protein-pgi.asp?entry_id=39905

Nたんぱく質に対する抗体の保持者を知ることで,実際に感染した人の数を知ることができる.

 

抗体陽性率の地域による違い,年齢による違いなども示されています.

 

都道府県別に見ると、

沖縄県(46.6%)、大阪府(40.7%)、京都府(34.9%)が高く、長野県(9.0%)、徳島県(13.1%)、愛媛県(14.4%)が低い.

東京都は31.8%が陽性.

沖縄県の16〜69歳の約2人に1人はすでに新型コロナに感染したことがある.

 

▽年齢による相違


なお,忽那先生の記事では,後半にイギリスと日本の違いについて議論を進めていて,日本の感染状況では,まだ強固な免疫(ハイブリッド免疫)を獲得するにはほど遠く,

海外のコロナ以前に戻ったかのような状況を見るとついつい羨ましいと思ってしまいますが、よそはよそ、うちはうち、ということで日本に合ったペースで緩和を進めていくことが重要かと思います。」と結んでいます.

ぜひご一読を.

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221203-00326683