十二月・師走・極月を詠んだ短歌  陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています.極月とも.  牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも 釈迢空  綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し 馬場あき子  極月の水にしづめる青砥石引上げて砥ぐ霜の柳刃 馬場あき子  恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心 俵万智

12月に入って,一週間.

わが家の冬の定番ビオラの苗を植えて二週間.大分育ってきています.

 

 

陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています.

 

語源としては「師(僧)が忙しく走り回る月」説が広まっていますが,「為果つ月(一年の終わりの月)」の転だとも言われているとのこと(古今短歌歳時記 教育社).

 

日本書紀(720年)でも十二月をシハスとよむようです日本国語大辞典 しわす: 書紀 神武即位前「十有二月シハスの丙辰朔、壬午のひ」北野本室町訓).

万葉集でも同じ.ただし「一例あるだけで,その後の勅撰集でも不思議と思われるほど詠まれていない」(古今短歌歳時記 教育社).

同じ意味で「極月ごくげつ」(「年の極きわまる月」の意 日本国語大辞典があるそうですが,あまり見たことがありませんでした.

 

 

十二月・師走・極月を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記 鳥居正博 教育社)

 

十二月(しはす)には沫雪(あわゆき)降ると知らねかも梅の花咲く含(ふふ)めらずして  紀小鹿郎女 万葉集巻八 一六四八

 

 

牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも  釈迢空 海山のあひだ

 

 

しづかなる心をもちてわびずみの師走の紙襖(ふすま)妹とつくらふ  吉井勇 天彦

 

 

逃れえぬわが奈良すでに師走なる啾々(しゅうしゅう)と夜を怨霊のこゑ  前川佐美雄 松杉

 

 

たてかけの何かさびしき青竹の師走冬空を広く見せたり  宮柊二 群鶏

 

 

薄ら日に玉美なしゆく栴檀の秀枝(ほつえ)眩しきままに極月  安永蕗子 蝶紋

 

 

綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し  馬場あき子 ふぶき浜

 

 

極月の水にしづめる青砥石引上げて砥ぐ霜の柳刃  馬場あき子 雪木

 

 

恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心  俵万智 サラダ記念日