キジバト,ヤマバト,ハト(2) 親しまれている鳥はと.名前の響きもいいですね.漢字は二つあって鳩と鴿.後者はあまり使われませんがドバトをかなり限定的に意味しているようです.英語もDoveとPigeonの二つありますが,互換性のある名前で違いはないとのこと.ただし,ついて回るイメージには違いがあるので使い方には注意が必要.ドバトが家禽化されたのは紀元前エジプト.以来,人と様々な交わりが記録されています.  朝籠り鳴く山鳩はわが胸にひそむこだまを知るごとく鳴く 三木アヤ

ハトは,最も親しまれている鳥の一つといえます.ハトという名前の響きもいいですね.

語源については,日本語源大辞典(小学館)には10の説が併記されていますが,よくネット上に取り上げられているのは,大言海等に記載がある「羽音ハタハタトの略か」説.

 

ハトの漢字表記,英語表記

「はと」の漢字は二つあって鳩と鴿.

後者が使われているのは見たことがありませんが,角川字源に寄ればドバト(イエバト)をかなり限定的に示す漢字のようです.

 

ハトの英語表記にも二つあって,DoveとPigeon.

ネット上にも,何か違いがあるのかという質問が多数寄せられています.結論を言ってしまうと

“ハト科には多くの種が存在するが,実は「dove」と「pigeon」はどちらもハト科のどの種にも適用できる,互換性のある名前なのである.両者の間に正式な違いはない.” https://www.doveline.com/html/dove-information.html

「pigeonはハト科の大型種で、小型種をdoveとする説もある」としていますが,これもあやふやな説で,調べてみてもこのような違いは認められないとのことです.ドイツ語ではdoveにつながるtaube,フランス語はpigeonの一語が使われているとのこと.この二つの系統それぞれから英語へ変換された結果,英語には二つの「鳩」が生まれたようです.
 
ただし,DoveとPigeonは,ついて回るイメージは異なるため,使い方には注意が必要.https://kimini.online/blog/archives/19413

doveはとてもよいイメージですが,pigeonについて回る印象はあまりよくない.

 

dove ランダムハウス英語辞典

1 ハト:ハト科 Columbidae の鳥の総称;   2 (純潔·柔和·愛情·平和の象徴としての)白ハト. 3 ⦅D-⦆ (象徴として)聖霊(Holy Ghost).   4 純潔な[無邪気な,柔和な]人; ⦅呼びかけに用いて⦆ ねえ,君,あなた(honey)my doveかわいい人よ.  5 ⦅主に米⦆ はと派の人,平和主義者.   7 はと色の大理石(dove-marble).  8 ⦅the D-⦆ 〘天文〙 はと(鳩)座(Columba).  9 ⦅D-⦆ ⦅商標⦆ 米国製の石けん.

 

pigeon ランダムハウス英語辞典

1 ハト:ハト科 Columbidae の鳥の総称   2 イエバト:カワラバト(rock dove)を改良したものa carrier [or a homing] pigeon伝書バト.  3 ⦅俗⦆(1)(通例,魅力的な)若い女の子.(2)だまされやすい人,かも  4 ⦅米暗黒街俗⦆ 密告者(stool pigeon).  5 ⦅トランプ俗⦆ (ポーカーで,引いてきた)絶好のカード.  6 〘射撃〙 =clay pigeon.   7 ⦅主に英話⦆ 仕事,商売; 関心事(pidgin).  8 紫がかった濃い灰色.  9 ⦅米俗⦆ 失効[使用済]の偽券[切符]; 偽の当たり馬券[くじ].  10 ⦅米俗⦆ 引受人の保護下にあるもとアルコール中毒患者.

 

ドバトとキジバト/コキジバト

カワラバトから家禽化されたドバトの歴史は古く,紀元前3000年のエジプトにさかのぼると言われています(ニッポニカ).

日本では,源頼義以来,八幡神の使いとして吾妻鏡』における八幡神使としての鳩への意味付け 池田浩貴キリスト教国ではノアの箱舟にオリーブをくわえてきた鳥としてもあまりにも有名なハト.この種もドバトと考えるのが自然でしょう.(https://smbasblog.com/2016/08/14/sunday-morning-bible-bird-study/

 

ドバトに次いでよく見かけるハトは,日本ではキジバトですね.鳴き声が独特でわが家では最もよく聞く鳥の声(伝統的には「デーデー ポッポー」.私は「ホーホ ホッホホー」と聞こえます).つがいで,時には子連れの姿も見かけます.狩猟鳥としてもよく知られていて食用に用いられています.また,山ばととして親しまれ,短歌に詠まれてきました.https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/12/19/235635

 

一方,ヨーロッパではキジバトとごく近縁のコキジバト(turtle dove)が,とても親しまれているようで,英語版ウィキペディアによれば,「献身的な愛の象徴」とされ,多くの詩歌に歌われているとのことです.

 

なお,一部の方々には負けず劣らず親しまれている絶滅種ドードー.こちらもハト科の鳥とされています.

朝籠り鳴く山鳩はわが胸にひそむこだまを知るごとく鳴く  三木アヤ 地底の泉

 

 

鳩の足くれなゐあはきいぢましさ霜踏みて餌あるかぎりは飛ばず  馬場あき子 月華の節

 

 

生きかはり生きかはりても科ありや永遠(とは)に雉鳩の声にて鳴けり  稲葉京子 槐の傘

 

 

雪の射す午後の日射しに溺れつつ命の芯にまどろむ野鳩  佐佐木幸綱 火を運ぶ

 

 

用水に溺るる鳩を救いたりひと日たましい虹のごとしも  道浦母都子 水憂