枯れ芒,枯れ尾花を詠った短歌(1)  芒,薄は,元の漢字の意味に「すすき」はありません.枯芒/枯尾花は,俳句では「三冬(さんとう)」の季語で,俳句では好んで詠まれてきました. ともかくもならでや雪の枯尾花 芭蕉  そして「船頭小唄」は高齢者なら誰でも知る歌. 枯すすき折穂なびけり人住めり崖の片側土くずれして 岡麓   枯尾花いまだ枯穂を振れる根には最早今年の芽や萌えつらむ 尾山篤二郎

今日も,昼間はそれほど寒くはなかったのですが,夜になると冬を感じさせてくれます.

 

昨日から取り上げている枯芒/枯尾花.

 

改めて,芒,薄,尾花を辞典/字典で調べてみると---いろいろなことが分かります.

(字源)

なりたち篆文  形声。艸と、音符(バウ)とから成る。「のぎ」の意を表す。

意味❶のぎ。㋐稲・麦などの穀物の、実を包む殻の先端の細毛。㋑草木のとげ。「芒刺」

国訓❶すすき。秋の七草の一つ。

 

(字源)

なりたち篆文  形声。艸と、音符(ホ,ハク)とから成る。くさはらの意を表す。借りて「うすい」意に用いる。

意味❶くさはら。くさむら。「林薄」---- ❺うすい(うすし)。

国訓 すすき。おばな。イネ科の多年生草本秋の七草の一つ。

 

お‐ばな をばな【尾花】(日本国語大辞典

①(花の形が、けものの尾に似ているところから) ススキの花穂。はなすすき。《季・秋》

 

枯芒/枯尾花は,俳句では「三冬(さんとう)」の季語で,

さん‐とう【三冬】 日本国語大辞典

〘名〙 冬の三か月。孟冬(陰暦一〇月)・仲冬(陰暦一一月)・季冬(陰暦一二月)の総称。また、三度の冬。三か年。《季・冬》

 

俳句で好んで詠まれてきました.(古今短歌歳時記)

「葉も穂も枯れ果て、茎の部分が風に揺れる姿は寂寥感の極み。枯れ尽くした芒も野原一面に群れると美しくもある。雪や風の中に見るのも風情がひとしお」

https://kigosai.sub.jp/001/archives/3308

ともかくもならでや雪の枯尾花  芭蕉 北の山

枯尾花野守が鬢にさはりけり  蕪村 蕪村遺稿

土になれ土になれとやかれ尾花 一茶 七番日記

路傍の石に夕日や枯すすき  泉鏡花 「鏡花全集」

 

そして,高齢の方なら誰もが知る歌があります.

「船頭小唄」(野口雨情/中山晋平

俺は河原の 枯れすすき おなじお前も 枯れすすき  どうせ二人は この世では 花の咲かない 枯れすすき

死ぬも生きるも ねえお前 水の流れに 何かわろ  俺も お前も 利根川の 船の船頭で 暮らそうよ

枯れた真菰に 照らしてる 潮来出島の お月さん  わたしゃこれから 利根川の 船の船頭で 暮らすのよ

なぜに冷たい 吹く風が 枯れたすすきの 二人ゆえ  熱い涙の 出たときは 汲んでおくれよ お月さん

どうせ二人は この世では 花の咲かない 枯れすすき  水を枕に 利根川の 船の船頭で 暮らそうよ

 

枯れ芒,枯れ尾花を詠った短歌(2)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

枯すすき折穂なびけり人住めり崖の片側土くずれして  岡麓 冬空

 

 

枯れ薄すこしばかりが穂をゆれり山吹絶えて年経たるらし  尾山篤二郎 白玉集

 

 

枯尾花いまだ枯穂を振れる根には最早今年の芽や萌えつらむ  尾山篤二郎 雪客

 

 

垣に添ひむらむらなびく枯尾花硝子ごしに見ておもひを凝らす  植松壽樹 渦若葉