クローブ1 植物と歴史 「強く甘い芳香と舌にしびれるような刺激的な味」と形容されるクローブ(和名丁子)は,チョウジノキの蕾を,開花する直前に摘み取り,乾燥させたスパイスです.日本では正倉院御物にあることも知られていますが,食べ物に入れることはなかったようです.クローブの生産は,近代までモルッカ諸島に限定され,初めポルトガル,次いでオランダにより厳しく管理統制されていました.17世紀から18世紀にかけてのイギリスでは,クローブは少なくともその重量分の金の価値があったとされています.

スパイス(スパイス&ハーブ)について,まとめています(すでに取り上げたシソ目シソ科のハーブは省きます).

今日はクローブ

 

スパイス(スパイス&ハーブ)12

クローブ1 植物と歴史

 

クローブは花の蕾から採られるスパイスです.

スパイスとして使用した経験が,私にはありません.ガラムマサラには必ず入っているそうですから,食べてはいるはず.また,伝統的なウースターソースレシピに記載があるスパイスでもあります.

「強く甘い芳香と舌にしびれるような刺激的な味」と形容され,https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/search/detail/00013.html

どのサイトを見ても,「使いすぎないように」という注意書きが添えられています.

 

クローブとは

クローブは熱帯・亜熱帯地方で成長するチョウジノキ/クローブ(フトモモ科 Myrtaceae,フトモモ属 Syzygium, チョウジノキ S. aramaticum)のつぼみを,開花する直前に摘み取り,乾燥させたスパイスです.

https://ja.wikipedia.org/wiki/チョウジ https://www.nparks.gov.sg/florafaunaweb/flora/3/1/3154

 

 

歴史

日本

日本では,「丁子」の名前でよく知られていますが,香りをしのばせたりカビ防止のために,また,ときには薬として用いられ,食べ物に入れることはなかったようです.

▽「正倉院御物にもある」とどの解説にも書いてあります.

ただ,どのようなものか私には特定できていません,候補の一つが,「沈香末塗経筒(じんこうまつぬりのきょうづつ)」.

「表面に沈香の粉末を漆で練ったものを塗り込み、丁子(ちょうじ)などを半肉に埋めた経筒」https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/201110_shoso/

らしいのですが,画像は,多分これかでしょうか?

https://www.google.com/search?沈香末塗経

平安時代には,源氏物語にも出てくる「丁子染め」という染め物があったそうです.

また,江戸時代にはやった鬢付け油「伽羅の油」は,伽羅(きゃら)ではなく,丁子を練り込んだものだったとのこと.

http://www.baikundo.co.jp/wordpress/clove/

 

漢方薬としての記載はあるものの,日本ではオランダの指導で丁子油が作られるまで,薬としてはあまり使用されなかったようです.丁子油は痛み止め(特に歯)の効果があるとされ今でも用いられているとのこと.

 

最近は効果が疑問視され,あまり使われていないかもしれませんが,丁子の香りは,(少し前の?)歯医者さんの匂いとの記載がありました.

https://www.uchidawakanyaku.co.jp/kampo/tamatebako/shoyaku.html?page=122 

https://ja.wikipedia.org/wiki/チョウジ油

 

世界

New World Encyclopedia とマコーミックのサイトから

https://www.newworldencyclopedia.org/entry/Clove

https://www.mccormickscienceinstitute.com/resources/culinary-spices/herbs-spices/cloves

近代まで,クローブモルッカ諸島(歴史的にスパイス諸島と呼ばれた,現在はインドネシア)の数島でのみ栽培されていました.しかし,世界に広がったのは早く,紀元前1721年から数年以内のシリア陶器からクローブが使われていた証拠が発見され,また,中国では,漢代に記述があります.

 

ナツメグと同じモルッカ諸島で栽培されていたため,クローブの貿易の歴史は,ナツメグと重なります.

ローマ時代にはすでに非常に珍重されていたクローブは,中世にはアラブ人によって,収益性の高いインド洋貿易で取引されていました.15世紀後半,インド洋貿易を引き継いだポルトガルが,大量のクローブをヨーロッパに持ち込みました.その後,17世紀には,オランダがこの貿易を独占するようになりましたが,両国とも,生産と貿易を厳しく管理しようと努めました.

この間も,クローブは最も貴重なスパイスのひとつでありつづけ,17世紀から18世紀にかけてのイギリスでは,クローブは少なくともその重量分の金の価値があったとされています.

その後,栽培はギアナ,ブラジル,西インド諸島の大部分,そしてザンジバルに導入され,ザンジバルは他のどの国よりも多くのクローブを輸出しています.