おおぐま座(大熊座,Ursa Major)4
昨日,一昨日と,
オウィディウス 転身物語 田中秀央・前田敬作 訳 人文書院(オウィディウスOvid メタモルフォセスMetamorphoses)より
を抜粋して転載しました.
愛の焔を一方的に燃え上がらせたユピテルは,ディアナ(アルテミス)のすがたに身をやつしてカリスト(カリストー)に近づき,望みを遂げます.
身ごもったカリストは,ディアナの従者の仲間から追放され,幼いアルカスを生みます.
しかし,このことがユノ(ヘーラー)の感情を更に害し,前髪をつかまれ地上に投げつけられ,熊に変身させられてしまいます.
そして,猟師ばかりか,同じ熊や狼をおそれてさまよい歩きます.
「ユピテル(ゼウス)に犯されたカリスト」はここで終わり,まだ牝熊カリストは星座とはされていません.
この章に続く「星になったアルカス」で,息子と遭遇したカリストはゼウスによって星々の間に置かれることになります.
Star Myths | Theoi Greek Mythology
星になったアルカス
Arcas in Greek Mythology - Greek Legends and Myths
さて,リュカオンの娘カリストの子アルカスは,母のことはなにも知らずに,十五の歳をむかえた.ある日のこと,野獣たちの跡をつけ,かれらの好む谷間を見つけだし,そのエリュマントゥス(アルカディア地方の山)の森を丈夫な網でとりかこんでいたとき,はからずも母と対面することになってしまった.
母の方は,すぐそれと知ってか,アルカスを見るなり立ちどまったが,かれは,たちまち身をひるがえして,じっと自分の上にそそがれた眼を,母とは知らずにおそれた.そして,牝熊がさらに近づいてくると,あわや必殺の槍をその胸もとに突きさそうとした.
しかし,全能の神ユピテルは,これを見て,彼の槍をとめ,かれら母子とその罪を同時に救ってやった.かれは,一陣の突風によってふたりを天空に舞いあがらせ,これを天にとどめ,相並ぶふたつの星座にした.
----以下略
「かれらふたりの罪を同時に救ってやる」とは,何と勝手な言い分!
全能神とは,一般的にもこういう者なのでしょうが---
「天にとどめ,相並ぶふたつの星座にした」
一方のアルカス.「おおぐま座と相並ぶ星座」とされますが----
なぜ,アルカスが牛飼い?
この疑問に答えるのは,
古代ギリシャでは,うしかい座Bootesにもう一つ別の名前,Arktophylax (the Bear-Watcher),があったことを説明する必要がありそうです.
明日,うしかい座を改めてとりあげ,その由来についても説明できたらと思います.