おおぐま座とうしかい座1 カリストーは,成長した息子アルカスにあわや槍で殺されそうに.しかし,ゼウスが助け,息子のアルカス共々星座とします.「カリストーは後におおぐま座として,息子アルカスはうしかい座として」.狩人であり後のアルカディア王アルカスがうしかい座? ⇒「ゼウスは,2人を天に召し上げた.“Arctophylax (the Bear-Watcher)”と“Ursa (the Bear)”として」(Hyginus)

おおぐま座となったカリストー.

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星座図鑑・おおぐま座

 

息子のアルカスはうしかい座に?

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星座図鑑・うしかい座

 

何か奇妙な気がします.

 

オウィディウス/メタモルフォセス(日本語版 「転身物語」人文書院):

 

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ユピテルに犯されたカリスト」では,

ユノ(ヘーラー)の怒りをかって熊に変身させられたカリストカリストー)が描かれます.

 

あらすじ:

愛の焔を一方的に燃え上がらせたユピテルは,ディアナ(アルテミス)のすがたに身をやつしてカリストカリストー)に近づき,望みを遂げます.

身ごもったカリストは,ディアナの従者の仲間から追放され,幼いアルカスを生みます.

しかし,このことがユノ(ヘーラー)の感情を更に害し,前髪をつかまれ地上に投げつけられ,熊に変身させられてしまいます.

そして,猟師ばかりか,同じ熊や狼をおそれてさまよい歩きます.

 

続く章「星になったアルカス」で,ゼウスに助けられたカリストは息子と共に星座に.

 

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Arcas in Greek Mythology - Greek Legends and Myths

 

あらすじ:

カリストカリストー)は,成長した息子アルカスと出会い,あわや槍で殺されそうになります.しかし,ゼウスが助け,星座とします.この時,息子のアルカスも「相並ぶ星座」として,召し上げられます.

 

しかし

オウィディウス/メタモルフォセスには,星座名は記されていません.

 

カリストーは,当然,おおぐま座です.

息子のアルカスはこぐま座--- と思うのが自然な考え方.

 

英語版ウィキペディアに,この“自然な考え方”にそった記事があります.

 

(拙訳)

カリストーとアルカスは,現在,おおぐま座こぐま座,すなわち大小の熊に当てはめられている.

They(カリストとアルカス) are now referred to as Ursa Major(おおぐま座) and Ursa Minor(こぐま座), the big and little bears.  https://en.wikipedia.org/wiki/Arcas

 

しかし,これは明らかな間違い!

 

the Theoi project のおおぐま座の解説(Star Myths | Theoi Greek Mythology下記)にあるように,

偽ヒュギーヌスは,

アルカスは「うしかい座」になったと明記し,この説が一般的に認められています.

 

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Star Myths | Theoi Greek Mythology

 

おおぐま座

彼女(カリストー)は後におおぐま座として,星々の間に置かれ,同時に彼女の息子アルカスはうしかい座となった.

URSA MAJOR

She was later placed amongst the stars as the constellation Ursa Major(おおぐま座), along with her son Arcas, who became Bootes(うしかい座). (Hyginus 2.1 & 2.4 from Hesiod & Amphis & others.)

Star Myths | Theoi Greek Mythology

 

ただ,奇妙に思えるのは---

 

アルカスは,

若い頃(熊となった母カリストーと出会った頃)は,牛飼いではなく狩人.

そして,

後にはアルカディア

オウィディウス/メタモルフォセスでは,熊となった母と同時に天に召されるような記述になっていますが,実は,アルカスはアルカディア王になり,アルカディア人の祖とされている人物で,死後,星座になったとされています.

 

牛飼いに擬せられるはずはない!?

 

この矛盾したストーリーは,

うしかい座という呼称は,この星座の唯一の名前ではなかった」

ことで解消されます.

 

the Theoi project のサイトでは,うしかい座Bootes(正確にはBoötes)について,次のような記述があります.

 

BOOTES

Star Myths | Theoi Greek Mythology

Latin : Bootes

Greek : Boôtes (the Wagon-Driver) or Arktophylax (the Bear-Watcher)

Akkadian : Niru (the Yoke)

Sumerian : SHUDUN (the Yoke)

 

ギリシャ語名として,“BoôtesまたはArktophylax”とある!

 

続けて,この星座のギリシャ神話にアルカスの名が.

次のような説明と共に.

 

ARCAS An early king of Arkadia. When he was about to kill his mother Callisto who had been transformed into a bear,

Zeus raised the pair to heavens as the constellations Arctophylax (the Bear-Watcher) andUrsa (the Bear). (Hyginus 2.4.)

Star Myths | Theoi Greek Mythology

 

この中で注目される一節は後半.

(拙訳)

「ゼウスは,2人を天に召し上げた.“Arctophylax (the Bear-Watcher)”と“Ursa (the Bear)”として」

 

アルカスの星座は,現在の星座名に相当するギリシャ語Boôtesではなく,もう一つのギリシャ語星座名Arctophylaxということですね.

意味は「熊を見守る人 」.

 

アルカスは母親をずっと見守る息子の位置に配されたことになります.

これで,私のささやかな疑問,「牛飼いに擬せられるはずはない!?」

は解消されました.

 

なお,

うしかい座という日本語名にも引っかかっています.

すっきりした説明とはほど遠いものとなりそうですが,この疑問を,明日取り上げてみようかと思っています.

どうでもよいことを,またまたフレームアップしているようでな話で恐縮ですが.