わすれぐさ
心地よい言葉の響き.いやなこと,悲しいことを忘れるための植物とか.わすれな草は「私を忘れないで」.
正反対ですね.(山田卓三/万葉植物つれづれ(大悠社))
「ノカンゾウ,ヤブカンゾウ,キスゲなどの総称 山田卓三/万葉植物つれづれ(大悠社)」とのこと.
どれも美しい花です.この花由来の「かんぞう色」という色の名前があるそうです.
ノカンゾウ,野萱草,金針菜(きんしんさい) ヤブカンゾウ,藪萱草,金針菜(きんしんさい) ヒメカンゾウ,姫萱草, ハマカンゾウ,浜萱草,金針菜(きんしんさい) ホンカンゾウ,本萱草, ニッコウキスゲ,日光黄菅,ゼンテイカ
キジカクシ目 Asparagales,
ススキノキ科 Xanthorrhoeaceae,(以前はユリ目・ユリ科に分類)
キスゲ亜科 Hemerocallidoideae,
ワスレグサ属 Hemerocallis,
「一日で散っていく花」の意味のヘメロカリス(一日の美しさ)が属名 山田卓三/万葉植物つれづれ(大悠社) 」
(Hemerocallisの語源 Origin Modern Latin, from Greek hēmerokallis ‘a lily that flowers for a day’, from hēmera ‘day’ + kallos ‘beauty’. hemerocallis - definition of hemerocallis in English | Oxford Dictionaries
ヤブカンゾウだけではなく,ヒメカンゾウ・ハマカンゾウ・ホンカンゾウもノカンゾウの変種とされているようで:
ノカンゾウ Hemerocallis fulva var. longituba
八重咲のヤブカンゾウ Hemerocallis fulva var. kwanso
本州中部以西の海岸に自生するハマカンゾウ Hemerocallis fulva var. littorea
観賞用などに栽培されるホンカンゾウ Hemerocallis fulva var. fulva
南西諸島に自生するアキノワスレグサ Hemerocallis fulva var. sempervirens
ニッコウキズゲは,別種:Hemerocallis middendorffii var.esculenta
ノカンゾウ,野萱草,金針菜(きんしんさい) ヤブカンゾウ,藪萱草,金針菜(きんしんさい) ヒメカンゾウ,姫萱草, ハマカンゾウ,浜萱草,金針菜(きんしんさい) ホンカンゾウ,本萱草, ニッコウキスゲ,日光黄菅,ゼンテイカ
はっきり見た覚えがあるのは,ニッコウキスゲのみ.都会育ちで,山野草には全く興味がなかった私でした.
ノカンゾウ・ヤブカンゾウが日本各地で山菜として食べられていることを知ったのはつい10年前.
やぶかんぞう/山菜を美味しく食べる!【山菜料理のレシピ】/食の和音〜美味しいものは心と体に効きます〜 やぶかんぞうの酢味噌和え | 低塩分・低カロリーな料理レシピと調理器具のサイト〜食の和音〜
そして,同じ頃,花が金針菜として,中華料理の材料になっていることを知りました.
台湾出身の友人が,体に良くておいしいと熱く語ってくれましたっけ.
乾燥したものを使うことが多いようですね
https://item.rakuten.co.jp/iktcm/ks004/
カンゾウは漢字では萱草.
「萱」は,中国語でカンゾウの意味だそうです.
萱(蘐)ピンインxuān 付属形態素 ワスレグサ. 白水社中国語辞典 萱の意味 - 中国語辞書 - Weblio日中中日辞典
ただし,他の中日辞典や漢和辞典では,
「萱」を「カヤ」とも読む日本語と一緒に書いてあって---
カンゾウとカヤは全く別物.
カヤは「(屋根を葺くのに用いるイネ科・カヤツリグサ科の大型草本の総称.主としてススキ,チガヤ,スゲなどが用いられる:日本国語大辞典)」
頭がゴチャゴチャになってしまいました.
でも,日本国語大辞典に,
「『萱』は本来,カンゾウ,一名わすれぐさで「かや」の意に用いるのは誤りで,和名鈔などで『かや』と読む文字は『別の文字(活字が探せませんでした)』で字形が似ていることから,『後世誤ったもの』」
これでスッキリ.
ネット上の幾つかの中日辞典のいい加減なこと!(カヤの意味と書いてあるものがあります)
ところが,中国語の語源を書いている別のサイトに
「忘れ草 食べれば、うれいを忘れさせてくれるという」との記載
これはちょっと魅力的な説.
本当かしら?
食い気 > 美を愛でる心 !
:このような例は幾つもあるので,忘れ草の名前の由来が食べることから派生していてもおかしくはない---.
わすれぐさ / 万葉集
忘れ草,我が紐(ひも)に付く,香具山(かぐやま)の,古(ふ)りにし里を,忘れむがため 大伴旅人 (巻三 三三四)
忘れ草,我が紐に付く,香具山の,古りにし里を,忘れむがため
▽山田卓三/万葉植物つれづれ(大悠社)
旅人が太宰府赴任中,新たに都から着任した小野老や大伴四綱の歌に応えて詠んだ中の一首です.
「忘れ草を,私は衣服の紐に結びつけている,それはあの香具山のほとりのふるさとを忘れようと思うからです」というものです.
Asphodelaceae - Wikipedia キスゲ亜科 - Wikipedia