日本のブドウとワイン ブドウの栽培が広く行われるようになったのは,江戸時代の甲州から.現在は巨峰・デラウェア・ピオーネがベスト3.ヴィニフェラ種とラブルスカ種の交雑種で生食用. 一方,評価の低かった日本産ワインですが,涙ぐましい努力で,日本のワインは権威ある国際コンクールでプラチナ賞をとるまでに.大手の酒造メーカーから,小さなワイナリーまで,様々なワインコンクールでの授賞が続いているようです.

日本のブドウ

ブドウは,日本において,江戸時代に広く栽培が始まった“近世的果実”の代表とのこと(原田信男 江戸の果実 歴博くらしの植物苑だよりhttps://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/plant/column/2007/176.pdf).

 

日本書紀に「蒲陶 えびかづら」または「蒲子/えびかづらのみ」の記述があります.

これを根拠に「奈良時代には日本人がブドウを認識していた」と多くのサイトが記述しています.

しかし,「蒲陶 えびかづら」「蒲子/えびかづらのみ」は栽培されているブドウとは別種のヤマブドウのこと.

【農作物の歴史特集】日本における葡萄の歴史 | なめがたヒストリー | なめがた日和[行方市]

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一説には,ぶどうは6~7世紀頃にシルクロードを通って中央アジアから中国にもたらされ、奈良時代、仏教とともに中国から日本に伝来したとされ,

(例えばhttp://www.winery.or.jp/basic/knowledge/

さらに「文治2年(1186年)に甲斐国八代郡上岩崎村の雨宮勘解由によって再発見され、栽培がはじまったとされる」となっていますが---.

 

考古学的には栽培種ブドウの移入経路は解明されていないようで甲州 (ブドウ) - Wikipedia),

再発見の記録も「甲州葡萄栽培法(明治14年)が伝えるのみで確証に乏しい」(原田信男https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/plant/column/2007/176.pdf)ともいわれています.

 

いずれにせよ,

ブドウの栽培が広く行われるようになったのは,江戸時代から.

松尾芭蕉

勝沼や 馬子も葡萄を食ひながら」

と詠んだように,甲府盆地勝沼町が栽培の中心で甲州の名産品となっていました.ブドウ - Wikipedia

品種は中国から輸入され山梨県固有種とされる「甲州」.

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なぜおいしくなった? “日本ワイン”快進撃! - NHK クローズアップ現代+

この品種は,後のDNA鑑定の結果,ヨーロッパブドウ(V. vinifera)と中国の野生ブドウ(V. davidii)が交雑したものが,さらにヨーロッパブドウと交配した品種である可能性が高いとのことで,奈良時代伝来説には疑問が投げかけられる結果のようです.甲州 (ブドウ) - Wikipedia

現在でこそワイン生産にむいた品種としても知られている甲州ですが,ワイン生産が根付かなかった日本では,長らく生食用として生産されてきました. 甲州 (ブドウ) - Wikipedia

 

現在では,生食用として,もっとも多く栽培されているのは巨峰.2位はアメリカから輸入され(1872年),長らく1位の座にあったデラウェア

一方,ワイン製造用としては,新たな品種も移入されるようになっていますが,川上善兵衛によって交配されたマスカット・ベーリーAや,糖度をあげる栽培法が確立された甲州が国産ワイン製造に用いられています.

日本ワインの基礎知識 | 日本ワイナリー協会 なぜおいしくなった? “日本ワイン”快進撃! - NHK クローズアップ現代+

 

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果樹研究所:ブドウ品種別栽培面積 | 農研機構

 

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巨峰 - Wikipedia デラウェア (ブドウ) - Wikipedia ピオーネ - Wikipedia

なお,日本におけるブドウの消費量は,果物(果樹+野菜に分類されるいちご/すいか)の中で第6位.消費は伸び悩んだまま久しいようです.

http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kazyu/h26_1/pdf/05_data3.pdf

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 作況調査(果樹):農林水産省 作況調査(野菜):農林水産省

 

 

品質が向上した日本のワイン

日本のワイン造りの歴史はまだ浅く,明治政府が殖産興業政策の一環としてヨーロッパ、アメリカからぶどう苗木を輸入し、山梨県をはじめ各地でぶどう栽培とワイン醸造を奨励したことに始まります.以下,主に日本ワインの基礎知識 | 日本ワイナリー協会の記事をもとに簡単にその歴史を振り返ります.

明治政府の奨励策のもと,明治7年から,ワイン醸造の試みが開始されましたが,本格的なワインは当時の日本の食生活には受け入れられず,

甘口で飲みやすい甘味果実酒の原料ワインとしてワイン造りが続いていました.

 

テーブルワインの消費に動きが出てきたのは昭和39年(1964年)の東京オリンピックの頃からです.

高度経済成長期のころ,第1回のワイン・ブームがあり,昭和50年(1975年)にはワインの消費量は甘味果実酒を上回りました.

そして,

その後,昭和53年(1978年)千円ワイン・ブーム,昭和56年(1981年)一升瓶ワイン・ブーム,昭和62年(1987年)ボージョレ・ヌーヴォー・ブーム,平成9年(1997年)赤ワイン・ブーム,平成22年(2010年)からは家飲みやワインバルが定着するなど,幾つかのブームを経験しながら今日に至っています.

ただ,ワインの販売シェアは,平成27年度(2015年)で4.3%(下図の果実酒)で,それほど多くなっていません.

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https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/shiori/2017/pdf/000.pdf

 

しかし,ワインの質の向上は目を見張るものがあります.

ブドウの品種としては,日本を代表する白ワイン用品種の「甲州」や,赤ワイン用品種の「マスカット・ベーリーA」などの日本固有の品種に加え,アメリカ原産ラブラスカ種との交配種,さらに近年はシャルドネメルローといったワイン専用種も導入され,幅広い品種から多様な味わいのワインが造られています.

 

全般的な味わいの特徴は,日本の伝統的な料理と同じく,「繊細さ」です.

最近では,国産ブドウ100%を使用して国内製造されたワインを「日本ワイン」とする考え方が広まり,今年10月からは,国税庁が策定したルールが完全施行されるとのこと.日本ワインと国産ワインの違い|日本ワイン サントリー

国内では平成15年(2003年)から国産ワインコンクール(現:日本ワインコンクール)が実施され,全国各地のワイン製造者に大きな刺激を与え,また,消費者の皆様からも日本ワインが大きく注目されるきっかけとなりました.審査員からは回を重ねるごとに品質の向上がはっきりと見られるとのコメントも.

 

そして,日本ワインの中には海外のコンクールで金賞を受賞できる品質のものが出てきました.

その代表は山梨県甲州市にある中央葡萄酒が造るワイン.

イギリスのワイン専門誌「デキャンター」が開催する、世界最大規模のワイン国際コンクール「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード」で2014年以来4年連続金賞.

2016年2017年には、全体の1%弱しか得られないプラチナ賞を授賞しています.

国際ワインコンクールで日本ワインがプラチナ賞受賞! | みんなのワイン http://www.grace-wine.com/news_event/news/index.html http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3876/1.html

そのかげには,

“薄くて水っぽい”とされた甲州ワインのレベルアップのための涙ぐましい努力がありました.

例えば,山梨固有種「甲州」は,糖度が,高い風味に必要とされる20%以上に届いていませんでしたが,自ら栽培方法を工夫し,23%まであげることに成功しました.なぜおいしくなった? “日本ワイン”快進撃! - NHK クローズアップ現代+

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なぜおいしくなった? “日本ワイン”快進撃! - NHK クローズアップ現代+

 

その他,大手の酒造メーカーから,小さなワイナリーまで,様々なワインコンクールでの授賞が続いているようです.

http://www.kirin.co.jp/company/news/2017/0523_04.html https://www.suntory.co.jp/wine/nihon/wine-cellar/prize.html https://allabout.co.jp/gm/gc/469854/

 

ブドウは

ブドウ目 Vitales,ブドウ科 Vitaceae,ブドウ属 Vitis の果実.

栽培されているブドウは、ペルシアやカフカスが原産のヴィニフェラ種 (V. vinifera) と、北アメリカ原産のラブルスカ種 (V. labrusca),及びその交雑種,日本で栽培されているブドウのほとんどはこの交雑種です,

ブドウ - Wikipedia

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http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0144701 ブドウ科 - Wikipedia Vitaceae - Wikipedia