現在私たちが食べているブドウは,欧州系(Vitis vinifera ),アメリカ系(Vitis labrusca ),もしくはこの両者を交配させた栽培種ですが,古来から日本に自生していたブドウ属の種として,ヤマブドウとエビネが知られています.
https://kagobakku.jp/commentary/mountaingrapes/ https://www.tamagawa.jp/education/serial/friends/bn_201801.html
酒類総合研究所によれば.
https://nrib.go.jp/data/pdf/nrt/2013_1.pdf
「DNA解析の結果,大部分は欧州系のビニフェラで,一部に中国の野生種のDNAが含まれるハイブリッドであることが明らかになっています.祖先に当たるビニフェラが中国で野生種と交雑し,さらにビニフェラと交配して日本に伝わったと考えられます.」
今日のご近所のスーパーでは,果物売り場の前面にピオーネが並べられていました.
巨峰を更に大きくしたような人気品種.巨峰とカノンホールマスカットの交配種とされていますが,DNA解析の結果から巨峰の自家受粉種である可能性が指摘されています.
ピオーネ
「巨峰(母)とカノンホール・マスカット(マスカット・オブ・アレキサンドリアの4倍体枝変り)(父)を交配し,育成し,昭和48年にピオーネ(イタリア語で開拓者という意味)と改名され,種苗名称登録されました」とされています.
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/budou-Pione.htm
しかし,九州大の白石等の研究では,
「‘ピオーネ’は ‘巨峰’の自家受精を行なった結果生じたものである可能性が高い」とされました.
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/12700/p011.pdf
ブドウを詠んだ短歌
(古今短歌歳時記より)
乾葡萄(ほしぶどう)喉より舌へかみもどし父となりたしあるときふいに 寺山修司 血と麦
野葡萄の熟れてゆく昼 状況をまっしぐら指す矢印の朱(あけ) 西勝洋一 未完の葡萄
馭者は来て夜更けの広場月明へ葡萄の籠をおろしはじめる 角宮悦子 ある緩徐調
ぶだう呑む口ひらくときこの家の過去世の人ら我をみつむる 高野公彦 汽水の光
紫のぶどうの房はひらかれしオレゴン州の地図におかれて 松坂弘 石の鳥
巨峰という葡萄一房眼前の一粒一粒のあけぼのの紺 小野寺幸男 樹下仮眠
季節にも貌(かほ)ある如くマスカット白桃を剝く掌(てのひら)の冷え 深井美奈子 青き胡桃
甲斐が嶺は白き夏雲夏空のま底は熟るる葡萄の大地 馬場あき子 葡萄唐草
炎昼のしんかんとして一房の葡萄水より上げしきらめき 宮原包治 日月の河
転生の地上に葡萄の黄葉してただ一切は過ぎてゆきます 桜井登世子 夏の落葉