銀行前の花壇にハボタンが植えられていました.
ビオラ,マラコイデスと一緒に,寄せ植えのようになっていましたが,他の花たちを圧倒しているようにみえます.冬の園芸植物の王者といった風格ですね.
お正月の植物として久しく愛されていたものの,現在のF1種は,改良がさらにワンランク進んだことを示しています.
(品種改良は,ほとんど日本で行われきました.
日本の葉牡丹については最下欄にまとめてみましたので,ご参照下さい.)
わが家の庭でも一番目立つているのはハボタンです.
ハボタンは,短歌にも詠まれてきました.
以下に取り上げた過去の歌の多くは,二三十年前までは主流であつた丸葉ハボタンを詠んだものかもしれません.
葉牡丹を詠んだ短歌
窓に見る畑の葉牡丹冬の日のうするゝまゝにくろみゆくかな 金子薫園 わがおもひ
葉ぼたんはへだたりをりて見るゆゑか炎(も)えたつごときその牡丹色 吉野鉦二 山脈遠し
冷えびえと霙(みぞれ)が洗ふ戸の外の明るさ占めて葉牡丹はあり 木俣修 高志
葉牡丹を置き白き女の座りゐる窓ありにけり夜ごろは寒く 佐藤佐太郎 歩道
日ごと来て磯ひよどりのついばみし葉ぼたんは茎長く抽(ぬ)きたり 岡野弘彦 異類界消息
日本におけるハボタン
(以下は,次の三つのサイトを簡単にまとめたものです:
https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-275
https://kotobank.jp/word/ハボタン-1578080
https://www.takii.co.jp/flower/howto/character/tokusei5.html )
https://www.japan-soil.net/report/h22tebiki_03.pdf
観賞用の葉をもつハボタンは,非結球性ケールから改良されたと考えられています(ブロッコリー,ケールなどと共に種としてキャベツと同じBrassica oleracea).
日本へは,江戸時代に,オランダから渡来しました.
その時は,何と「食用の野菜」として!
貝原益軒は「(紅夷菘 オランダナ,ハボタンの祖と考えられている)は「味よし……植ゑて後三年にして花開く」と記述しているそうです.
広く栽培されるようになつたのは明治以降で,現在に至るまで最も改良が進められているのが日本.
古くからある主な系統は次の三つ.
▽丸葉系/ 東京丸葉ハボタン(江戸ハボタン),
江戸時代から東京で改良されてきた
明治以降東京の花の産地である江戸川一帯では切花用として盛んに栽培されました.それらはやがて丸葉ハボタンとして確立し,東京ハボタンまたは江戸ハボタンとも呼ばれています.
明治中期に名古屋地方でちりめん性のケ-ルとの交配により,葉縁が細かくちぢれたちりめんハボタンが生まれ,名古屋ハボタンととして主に鉢植えにされています.
▽大阪丸葉系/ 大阪丸葉ハボタン
第2次世界大戦後,丸葉ハボタンとちりめんハボタンの交配から半ちりめんハボタンが登場し,これらは大阪ハボタンと呼ばれています.
また,1977年に初めて発表された切れ葉系サンゴクジャクハボタンの系統も広まり,さらに葉に光沢のある品種,小型化した品種も生まれました.
そして,現在はF1種が主流で,品質も極めてよく揃つたものになつています.