Nuts&Seeds 木の実と種/種実類: ピスタチオやカシューナッツは,柔らかな実の種(たね)ですがナッツ(本来の意味は「堅い殻をもつ木の実」=堅果)として扱われます.商品としても,また料理栄養の面からもこのような扱いの方が日常生活で便利だからでしょう.日本食品成分表では「種実類」.これは「種と実」を一緒にした表記で,英語Seeds and Nutsの翻訳にあたります.

種(たね)なのにナッツ?

食品を扱うときには,しばしば,果実の種(たね)をナッツとして扱っています.ナッツも種ですが,本来は,クリやドングリのように殻が堅い実を指す言葉なのに.

例えば

このブログの話題として最近取り上げたピスタチオとカシューナッツ

ピスタチオ:https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2024/07/20/235429

カシューナッツhttps://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2024/07/25/235855

両者とも柔らかな果実の種なのですが,食品としてはナッツとして扱われます.

実際,ミックスナッツとして売られている商品に,ピスタチオやカシューナッツが入っていますよね.

https://www.amazon.co.jp/究極の素焼き-7種のミックスナッツ-アーモンド-カシューナッツ-ギフトボックス入

改めて言葉の意味を整理してみましょう.

「本来のナッツ=nutsは,木の実のことで,植物学的には, 堅果を指す言葉」

 

ところが,ピスタチオもカシューナッツも植物としては果実(専門用語では液果)の種(たね)の部分を食品としています.

カシューナッツが種であることはかなりわかりやすいのですが:

https://en.wikipedia.org/wiki/Cashew

https://www.securite.jp/fund/detail/8134

ピスタチオは画像を見ただけでは分かりにくく,神戸のナッツ販売店はピスタチオを堅果としています.しかし,これは誤りで,核果の中の種を食用としているが正解とのこと.

https://foodprint.org/real-food/pistachios/

ピスタチオ(Pistacia vera)は実際はナッツではない。厳密には核果であり、殻に覆われた種子を含む多肉質の木の実である。」

https://www.newworldencyclopedia.org/entry/Pistachio

 

nut [nʌ́t]  

ランダムハウス英語辞典)
━━ n.
1 木の実,ナッツ
crack a nut
クルミ割りなどで)木の実を割る
gather nuts
木の実を拾う.
2 (木の実の)仁じん(kernel):1の食用部分.
3 〘植物〙 堅果.

堅果

日本国語大辞典

果皮が堅く乾燥し、熟しても開裂しない果実。二個以上の心皮からなり、中に一ないし数個の種子を含む。カシ・クリ・ハシバミの果実など。多く殻斗(かくと)をつけるので殻斗果ともいう。

 

種実類

日本食品成分表では,ピスタチオもカシューナッツも「種実類」に分類されています.「種と実」(Seeds and Nutsの翻訳?)というカテゴリーですから,植物学的な部位としても問題がないようなカテゴリーの名称です.

脂質が多い食品と考えられますが,栗などのように脂質をあまり含まない食品も含まれます.

(参考までに:アメリカでは,大豆も加えて「Nuts,Seeds and Soy」と分類し,タンパク質が多い食品の1項目と見なしています.https://www.usda.gov/media/blog/2017/09/26/back-basics-all-about-myplate-food-groups

 

やや問題かなと思われるのは---

穀物や大部分の豆という,最も多く食べられている植物の種(たね)はここに含まれていないこと.一方,ピーナッツという「豆」は含まれている.

日本食品成分表では,「ピーナッツは脂質を多く含むため種実に分類した」とありますが説得力はありません.種実類の表看板はナッツで,ポリポリ食べられるような種が入れられているからかと思いましたが---アメリカの分類でもピーナッツは「Nuts,Seeds and Soy」に含まれているので,これを踏襲したと考えるのが分かりやすい.

 

いずれにせよ,食品成分表の分類は,厳密さより日常生活における食品・料理材料としての使いやすさが優先されているので,「やや問題」とは思っても十分納得できる分類と言えます.

 

なお,「種実」は,あくまでも,「種と実」を一緒にした表記で,日本語の「種実」という言葉の認知度は低く,日本国語大辞典広辞苑には記載がありません.今のところ,食品成分表の分類名の域を越えていない言葉です.

デジタル大辞泉には掲載が在り,種実=植物の種としています.早とちりのように感じますが--)

 

日本食品成分表では,種実類を次のように説明しています.

種実類:この食品群に属する食品は、「らっかせい」を除いて、穀類あるいは豆類以外の種子及びその製品で、植物学的には必ずしも近縁ではない。主にナッツ、種あるいは実として市販されている。「らっかせい」は、豆類であるが、脂質含量が高いため、この食品群に分類した。

 

以下種実類の栄養成分を表にしたものを掲載しておきます.

https://fooddb.mext.go.jp/search.html





 

久々の富士:夕刻,片瀬西浜から富士山を望む