the Theoi project “star myth"
Star Myths | Theoi Greek Mythology
によれば,
おおいぬ座(学名Canis Major,略符CMa)に擬せられているギリシャ神話の犬は,三者(犬).
ライラプス(Laelaps, Lailaps).
オリオーンの犬(Dog of Orion).
マエラ(Maela, イーカリオスの犬 Dog of Icarius).
ライラプスと狐
最も多くのサイトで取り上げられているおおいぬ座の犬の名はライラプス.
いくつかのギリシャローマの古典に登場するライラプスですが,星座となる場面の記述はそれほど多くないようです,
Star Myths | Theoi Greek Mythology
ライラプスは,決して追跡をやめないマジカルドッグです.初めは,ゼウスがエウローペーに贈った犬で,エウローペーは息子のミーノースに渡し,それから,プロクリスとケパロスに渡りました.
最後にテウメーッソスの狐を追いかけるようにされましたが,その狐は決して捕まらないように運命づけられていました.
2匹の動物の相いれない運命を解消するため,ゼウスは2匹をおおいぬ座とこいぬ座として星々の間に置き,永久に続く解消できない追跡を終わらせた.(偽ヒュギーヌス 『天文詩』)
LAELAPS A magical dog which was destined never to surrender a chase. It was first bestowed on Europa by Zeus, who passed it to her son Minos, and from him to Procris and Cephalus. The last of these set it to hunt down the Teumessian fox, which was destined never to be caught.
To resolve the contrary fates of the two animals, Zeus placed them amongst the stars as the constellations Canis Major and Minor to play out the chase unresolved for eternity. (Hyginus 2.35.) Star Myths | Theoi Greek Mythology
LAELAPS (Lailaps) - Inescapable Hunting-Dog of Greek Mythology
この天文詩とほぼ同様の筋書きが,偽アポロドーロス『ビブリオテーケー』(日本語訳 アポロドーロス 『ギリシャ神話』 岩波書店)にもみられますが,こちらでは,ライラプスと狐はゼウスによって石にされています.
しかし,『天文詩』の記載が納得できない点は,逃げていた狐が,「こいぬ座」になったところ.
キツネが子犬になったなんて---
the Theoi projectにある英訳文が間違いかとも思いましたが,そうではないという前提で話を進めると----.
今でこそ,こいぬ座はこいぬ座Canis Minor(ラテン語学名.英語ではthe Little Dog)ですが,ギリシャ語ではProkyôn.意味は「前の犬」.おおいぬ座の前にある=逃げているとも言えますね.
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L.A. Zoo Blog – Constellation with Canis Minor and Canis Major
そして,こいぬ座に対応しているギリシャ神話では,「テウメーッソスの狐」そのものとされています!(こいぬ座なのに---)
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さらに,古代ギリシャに先立って多くの星座を生み出した古代メソポタミアにおいては,こいぬ座はキツネ座だったようです!
こいぬ座に相当する古代メソポタミア・アッカド語Shelebu,同シュメール語KA.Aは,共にthe Foxの意味.
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これで,『天文詩』の記述は,もやもやは残るものの,
一応収まりがついた気がしますが---
おおいぬ座には,このこいぬ座の問題以上に,その名前の由来が問題になりそうな気配.
そもそも,おおいぬ座は,そのアルファー星シリウスに引きずられておおいぬ座Canis Majorと命名されたかもしれないのです.
この話題は明日.