新型コロナウイルス抗体を保有者の割合は,東京で0.1%,大阪で0.17%,宮城で0.03%.感染者数の割合に比べると高いものの,大半の人が抗体を保有していない.単純比較は難しいものの,米NY州では12.3%,ストックホルムで7.3%,イングランドでは6.78%.「0.1%という結果は,妥当な結果だと言える」東京都医師会角田徹副会長NHK NEWSWEB // ソフトバンクグループの抗体検査では陽性は店頭少なく(0.04%)コールセンター多い(0.41%) 毎日新聞 

新型コロナ抗体保有割合 東京0.1% 大半が抗体保有せず 厚労省

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新型コロナ抗体保有割合 東京0.1% 大半が抗体保有せず 厚労省 | NHKニュース

2020年6月16日 17時59分

 

新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査について,厚生労働省が3都府県でおよそ8000人を対象に行ったところ,抗体を保有している人の割合は東京で0.1%などとなりました.厚生労働省は,大半の人が抗体を保有していないことが明らかになったとしています.一方,抗体によって2回目の感染を防げるかはわかっていないということです.

抗体検査は,ウイルスなどに感染すると体内でつくられる「抗体」と呼ばれるたんぱく質が血液中にあるかを分析し,過去に感染したことがあるかどうかを調べます.

 

厚生労働省は,今月1日から7日にかけて人口が一定規模ある地域のうち,10万人当たりの感染者数が最も多い東京と大阪,最も少ない宮城の3都府県で,無作為抽出した20歳以上の男女合わせて7950人を対象に,新型コロナウイルスの抗体検査を実施しました.

 

その結果,抗体を保有している人の割合は,東京で0.1%,大阪で0.17%,宮城で0.03%だったと16日発表しました.

 

これまでに確認されていた,感染者数が人口に占める割合は先月末時点で,東京で0.038%,大阪で0.02%,宮城で0.004%で,これと比べると抗体を保有する人の割合は高いものの,厚生労働省は大半の人が抗体を保有していないことが明らかになったとしています.(⇒**)

一方,新型コロナウイルスの抗体が,体内でどれくらいの期間持続するかや,2回目の感染を防げるのかなど,詳しい性質は現時点ではわかっていないということです.

 

 

抗体検査の詳細内容

今回の抗体検査は,日本国内で過去に新型コロナウイルスに感染した人の割合を推定するため,厚生労働省が今月1日から7日にかけて行いました.

 

実施する地域については,100万人以上の都市がある人口が200万人以上の都道府県のうち,人口10万人当たりの累積の感染者数が多い東京と大阪,また,最も少ない宮城の3都府県が選ばれました.

対象者は無作為に抽出された20歳以上の男女7950人で,東京では1971人,大阪で2970人,宮城で3009人が,それぞれ検査を受けました.

 

海外企業のロシュ社とアボット社が製造する2種類の試薬を使った検査で,いずれも陽性となった場合に「陽性」=「抗体を保有している」としました.

 

その結果,東京は1971人のうち2人,大阪は2970人のうち5人,宮城は3009人のうち1人が陽性と確認され,抗体保有率はそれぞれ,東京が0.1%,大阪が0.17%,宮城が0.03%となりました.

 

一方,今回の抗体検査では,2種類の試薬のほか,別の海外企業のモコバイオ社のキットを使った検査も行われました.

キットがアメリカ食品医薬品局への申請中であることから,これを使った検査は参考値とされていますが,東京が21人で1.07%,大阪が37人で1.25%,宮城が36人で1.2%の陽性が確認されました.

 

 

「海外との単純比較は難しい」厚労省

今回の検査で得られた抗体を保有している人の割合について厚生労働省は,検査の方法や対象者の選び方が異なるため,海外の数値との単純な比較は難しいとしています.

 

厚生労働省は今回,判定をより正確に行うため2種類の検査試薬を用いて,ともに陽性となった場合に限って「陽性」=「抗体を保有している」としましたが,海外の調査では,1種類の検査で判断しているケースもあるということです.

 

また,検査対象については,無作為抽出して選んだ一般市民を対象に行いましたが,海外の調査では医療従事者など,対象の範囲を狭めているケースもあるということです.

 

「東京0.1%は妥当な結果」東京都医師会

厚生労働省が行った,新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査で,抗体を保有している人の割合が東京都で0.1%となったことについて,東京都医師会の角田徹副会長は「今回の検査は相当精密で,信用できると考えている.0.1%という結果は,人口に対する,これまでに確認された感染者数などから判断すると妥当な結果だと言える」と述べました.

 

そのうえで,今回の結果から分かったことについては「新型コロナウイルスの感染の形態は,インフルエンザウイルスのように普通の生活の中で,たとえば満員電車に乗っているだけで次々にうつるものではないと考えられる.感染の形態はある程度,限定されるので,過度に恐れる必要はなく,3密を避けるなどすれば予防できるとみている」と説明しました.

 

一方で「今回の結果は,ほとんどの人はウイルスに感染していなかったことを示すもので,ワクチンができるまでは多くの人に感染する可能性が残っているとも言える.第2波は普通の生活に戻ると必ず来るので,一人一人が引き続き,感染しないための行動をとることが重要だ」と話しました.

 

「99%以上が未感染 対策継続の必要」専門家

厚生労働省が行った新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査について,日本感染症学会の理事長で,東邦大学の舘田一博教授は「抗体を保有している人の割合が東京で0.1%というと,単純に人口に当てはめて1万4000人程度で,実際に感染が確認された人数よりは多いが,予想していたよりも少ないと感じる.感染が拡大しないか,あれだけ危ぶまれていたことを考えると,うまく感染拡大を抑え込めていたと考えることができる」と話しています.

そのうえで「一方で,まだ99%以上の人が感染していないということは今後,流行の第2波や第3波が来た場合,第1波と同様に感染が広がっていくリスクがあると考えねばならず,いわゆる『3密』の回避やマスク着用の徹底など,対策を継続する必要がある」と指摘しています.

 

また,抗体の保有率が10%を超えたという地域もある海外との比較については「海外と比べても抗体の保有率は明らかに低く,マスクを着用して飛まつの飛散を防いだり,手洗いを頻繁に行ったりするなど,日本人ならではの文化や習慣が影響している可能性がある.まだ明確なことは分からないが,感染拡大を考えるうえで重要なポイントで,今後,検証が必要だ」と指摘しています.(⇒*** 専門家会議の見解はすでに出されています)

 

一方,東京都で16日,新たに27人の感染が確認されたことについては「きのう,おとといより人数は少ないが,感染者数が,あすは50人に,あさっては100人にと増えていっても,おかしくはない状況だ.一日一日の感染者数の変化にとらわれずに,長いスパンで感染対策を継続することが大切だ」と話しています.

 

 

米NY州では12.3%

新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる抗体検査は,世界各国で行われています.

 

このうち,感染者数,死者数ともに最も多いアメリカでは,東部ニューヨーク州で,先月2日までの2週間に1万5000人を対象に抗体検査を実施し,12.3%の人に抗体が確認されたということです.

ヨーロッパでは,外出制限などの厳しい措置をとっていないスウェーデンで,公衆衛生局が8週間にわたる抗体検査を実施しています.

このうち,4月下旬の1週間に採取した合わせて1104件のサンプルを分析したところ,抗体を保有している割合は首都ストックホルムで7.3%だったということです.

また,イギリスの国家統計局によりますと,イングランドでは,4月26日から先月24日までの1か月間で885人の抗体検査を実施し,6.78%に抗体があると確認されたということです.

 

⇒*

各国主要都市の数値の比較

(ただし,「海外との単純比較は難しい」厚労省

(集団免疫を獲得するためには,60%以上の人が抗体を持つ必要があると考えられている)

f:id:yachikusakusaki:20200616233840j:plain

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/06/01/000927

https://www.nytimes.com/interactive/2020/05/28/upshot/coronavirus-herd-immunity.html

 

 

⇒**

東京 PCR検査陽性者数 6月7日  5383人 

人口比 0.038%

(推定人口2020年5月13,982,622人として計算)

 

 

⇒***

これまでの対応に対する専門家会議の見解

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-senmonka-200529

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/06/02/001412

 

1.日本は欧米諸国と比較して感染者数の増加が抑えられ、死亡者数や重症者数を減らす点で一定の成果を上げた.

 

2.一定の成果のポイントとして次の4点が高レベルにあったことが指摘できる.

 ①国民皆保険制度  ②医療レベル  ③保健所  ④市民の衛生意識 

(注 by yachikusakusaki  :

 医療技術は高レベルにあるが,集中治療ベット数やPCR検査能力は先進諸国の中では劣っており,保健所も統合・縮小傾向にあったことが,新型コロナウイルスへの対応を困難なものとさせていた.このような制約のある現状を踏まえた上での,新型コロナへの対応であった.)

 

3. 具体的な対応として重要だったのは次の2点

 ①中国由来の感染の波(専門家会議呼称「第一波」),欧米由来の感染の波(専門家会議呼称「第二波」)の早期検出

 ②クラスター対策

 

( ①のうち,特に重要だったのが中国由来の感染の「第一波」の早期検出とその終息.

 ドイツ、フランス、イギリスなどは,中国由来の感染の「第一波」を把握できず,水面下での拡大を許したことが感染爆発につながったと考えられる.

 一方,日本は伝播を捕捉し,その特徴(いわゆる「三密」での伝播)を初期の頃から把握した上で,明確な戦略に基づいてクラスター対策を行うことでき,「第一波」の感染拡大をほぼ食い止めることができた)

(注 by yachikusakusaki :欧米由来の「第二波」も検出できていた.しかし,急激な帰国者増への国レベルの対策が後手に回り,クラスター対策のみでは食い止められなかった.これが緊急事態宣言につながった)

 

4. 伝播を捕捉し,その特徴を明らかにできたのは,「前向き接触者調査」に加え,保健所の努力により「さかのぼり接触者調査」を行うことができいていたためである.

(「さかのぼり接触者調査」とは,新規感染者がどこで感染したかを特定し,共通の感染源にいた濃厚接触者を洗い出す調査.ほとんどの国ではこの「さかのぼり接触者調査」は行われていない)

保健所によるこの「さかのぼり接触者調査」により,日本では早い段階から感染源となった場の共通点,すなわち密集、密閉、密接の「3密」を明らかにでき,この場でのクラスター発生を極力抑えることで,感染拡大を防止するという戦略を立て,一定程度成功した.

 

yachikusakusaki.hatenablog.com

 

 

ソフトバンクグループ(SBG)は社員など4万4066人に新型コロナウイルスの抗体検査を行い,孫正義会長兼社長が6月9日,検査結果を発表した. 毎日新聞経済プレミアム

https://mainichi.jp/premier/business/articles/20200611/biz/00m/020/009000c?cx_fm=mailbiz&cx_ml=article&cx_mdate=20200616

陽性は191人で,陽性率は0.43%だった.日本の民間企業がこの規模で検査を行い,データを公表するのは初めてとみられる.

 

 対象はSBGと取引先企業の社員・家族3万8216人のほか,全国539の医療機関の協力を得て,医師,看護師など医療従事者5850人.孫氏は9日夜,オンラインのライブ中継で「取引先を含め,社員や家族を守りたいという思いから抗体テストを行った.医療関係のお役に立ちたいと,検査キットを無償提供した」と語った.

 

 抗体検査の結果,SBGと取引先の陽性は86人で,陽性率は0.23%.医療従事者は同105人で1.79%だった.抗体検査は5月12日~6月8日に実施した.

 

陽性は店頭少なくコールセンター多い

 

 興味深いのは,SBGの内訳だ.SBGの営業や技術などオフィス業務は全国で9割以上が在宅勤務となっているが,1万832人のうち,陽性は17人で陽性率は0.17%.これに対し,店頭で接客に当たるスタッフは1万9075人のうち,陽性は8人で同0.04%,コールセンターは7076人のうち,29人で同0.41%.接客業務に当たる店頭が最も低く,コールセンターが最も高かった.

 

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 SBGによると,コールセンターは約600人規模の拠点1カ所でクラスター(感染者集団)が発生し,24人の集団感染が見つかった.プロ野球福岡ソフトバンクホークスの選手や球団スタッフに陽性者はいなかったという.

 

 孫氏は「店頭の接客業務は陽性率が高いのではないかと心配したが,在宅勤務のオフィスより低いので驚いた.コールセンターもクラスターが出ると怖いが,危険業務とは言い切れない」との見方を示した.

 

クラスターに注意」と専門家

 

 孫氏のライブ中継には専門家の医師がゲストとして2人参加した.国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は「全体の傾向として,新型コロナウイルスは通りがかりの人々の間でどんどん広がることはない.発端となる人がいて,クラスターが発生すると大量の患者が出る」と,今回のデータを分析した.