新型コロナウイルスの複数の動物への感染が知られており,動物からヒトへの感染も報告されています.アメリカでは,オジロジカへの広範囲の感染が注目されてきましたが,新たにシカの集団内で高度に変異したとみられる株がみつかったことが報告されました.今後,パンデミックが収まったように見えたとしても,コロナウイル ス に対してはかなり長期間にわたり関心を持ち続けざるを得ないということでしょう.

新型コロナウイルスの起源はやはり武漢の市場だった可能性が高いという研究報告がありました.

Your Monday Briefing: Ukraine Agrees to Talks - The New York Times

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/02/28/235052

ただ,まだ動物は特定されていません.当初指摘があったように,コウモリなのか?その他の動物なのか?または,はじめから人が感染源なのか?

 

いずれにせよ---

新型コロナウイルスが,人だけではなく,様々な動物に感染することがわかってます.

 

厚生労働省/農林水産省のウェブサイトにも,ペットを中心にした動物への感染について記載しています.

例えば,下記のような.

(この記事は7月7日以来更新がないのは気になります.例えば:

後述のように,ハムスターからヒトへの感染が新たに報告されています.)

 

動物を飼育する方向けQ&A|厚生労働省

問1 新型コロナウイルスは,飼育しているペットに感染しますか?

 これまでに新型コロナウイルスに感染したヒトからイヌ,ネコが感染したと考えられる事例が数例報告されています.また,動物園のトラやライオンの感染(飼育員から感染したと推察されている)事例も報告されています.

 ただし,新型コロナウイルスは主に発症したヒトからヒトへの飛沫感染接触感染により感染することが分かっており,現時点では,ヒトから動物への感染事例はわずかな数に限られています.

問2 新型コロナウイルスに感染したペットではどのような症状がありますか?

 これまでのところ,イヌでは明確な症状は確認されていませんが,ネコでは呼吸器症状・消化器症状があったとの報告があります.

問3 新型コロナウイルスが飼育しているペットから人に感染した事例はありますか?また,ペットを飼育する上で注意すべきことはありますか?

 これまでのところ,新型コロナウイルスがペットから人に感染した事例は報告されていません.

 一方で,ネコは,新型コロナウイルスの感受性が他の動物種よりも高いとの報告があり,実験室内での感染実験では,ネコが他のネコに感染させ得るという結果が報告されています.また,オランダのミンク農場でのミンクの大量感染事例では,新型コロナウイルスに感染したミンクから人へ感染した可能性のある事例が報告されています.

 新型コロナウイルス感染症に限らず,動物由来感染症の予防のため,動物との過度な接触は控えるとともに,普段から動物に接触する前後で,手洗いや手指用アルコールでの消毒等を行うようにしてください.特にペットの体調が悪い場合はできる限り不必要な接触を控えましょう.

問4 新型コロナウイルスはコウモリ由来というのは本当ですか?

新型コロナウイルスの自然宿主は現時点では不明です.その遺伝子配列がコウモリ由来のSARS様コロナウイルスに近いため,コウモリがこの新型コロナウイルスの起源となった可能性が考えられていますが,現時点では明確なことはわかっていません.

(以下略)

 

 

最近では,香港で,ペットのハムスターがデルタ株ウイルスを人に感染させたとするデータが示されています.

Yen, H.-L. et al. Preprint at Social Science Research Network https://doi.org/10.2139/ssrn.4017393 (2022).

How sneezing hamsters sparked a COVID outbreak in Hong Kong

 

一方,アメリカでは,オジロジカへの新型コロナウイルス感染が確認され,多い州ではオジロジカの60%が感染していたことが確認されました.

このオジロジカへの新型コロナウイルスの感染について,最近のニューヨークタイムズが続報を掲載しています.題して

「新しいオンタリオ州のシカから発見されたコロナウイルスの系統.

シカからヒトへの感染の兆候も確認されたが,この新系統がヒトへのリスクを高めているという証拠はない」

 

今のところ,必要以上に心配することはないとのことで,最大のウイルス保有「動物」がヒトであることは間違いのないところ.しかし,たとえヒトでの感染が収まったとしても,動物での感染は続きうる.そして動物内で変異しうることが確認された---

今後,パンデミックが収まったように見えたとしても,コロナウイルスに対しては今後かなり長期間にわたり関心を持ち続けざるを得ないということでしょう.

 

以下,ニューヨークタイムズの記事の冒頭部をDeepL翻訳で.

 

New Coronavirus Lineage Discovered in Ontario Deer

Scientists also found signs of possible deer-to-human transmission, but there is no evidence that the new lineage poses an elevated risk to people.

By Emily Anthes

The NewYork Times March 1, 2022

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New Coronavirus Lineage Discovered in Ontario Deer - The New York Times

新しいオンタリオ州のシカから発見されたコロナウイルスの系統.

シカからヒトへの感染の兆候も確認されたが,この新系統がヒトへのリスクを高めているという証拠はない.

 

Emily Anthes 著

ニューヨークタイムズ 2022年3月1日

 

科学者たちは,オンタリオ州南西部のオジロジカから,2020年後半から動物の中で進化している可能性のある,高度に変異した新しいバージョンのコロナウイルスを特定した.

 

また,この地域でシカと密接に接触していた1人の人間から非常によく似たウイルス配列が見つかり,シカから人への感染の可能性を示す最初の証拠となった.

 

サニーブルック研究所とトロント大学のウイルス学者で,新しい論文の著者であるSamira Mubareka氏は,「ウイルスはヒトの中で進化しているのがはっきりとわかるものから,シカの中で進化し,シカの中で分岐しているのです」と述べている.

 

この報告はまだ専門誌に掲載されておらず,シカの系統が人の間で広がっている,あるいは人に何らかの高いリスクをもたらすという証拠もない.実験室での予備的な実験によれば,この系統はヒトの抗体を回避することはできないようだ.

しかし,この論文は,別のチームが,アルファ型がヒトの集団から消えた後も,ペンシルバニアのシカで広がり,進化し続けた可能性があると報告した数日後にオンラインに掲載されたものである.

 

この2つの研究を合わせると,ウイルスがシカの間で長期間にわたって循環している可能性があり,シカがウイルスの長期保存庫となり,将来の変異型の発生源となる危険性があることが示唆される.

 

(以下略)