今日は,国産レモンを二ついただきました.
皮ごと食べても安心ということで,とりあえず砂糖をまぶし,冷蔵庫へ.後の処理は,明日また考えることに.そのまま砂糖漬けにするか,マーマレードにするか----
レモンは,酸味や香味を楽しむ「香酸柑橘類」の代表選手.
シトロン(C. medica)とsour orange(Citrus× aurantium 和名ダイダイ)が交配して生まれた品種であることがわかっています.
Genomics of the origin and evolution of Citrus | Nature
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/01/25/235015
かつてはほとんど全てが輸入品でサンキストブランド(サンキスト・グローワーズ —アメリカ合衆国の柑橘類生産者販売協同組合—ブランド)がほとんどだった気がします.
最近は国産もかなり出回っているよう---といっても輸入量の1/10程度だそうです.
農水省にウェブサイトによれば,
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0006/19.html
2019(令和元)年に日本へは約54,287トン、おもにアメリカ(57%)、チリ(37%)から輸入されています。
2018(平成30)年の国産レモンは約5,528トン生産され、広島県(42%)、愛媛県(31%)、和歌山県(10%)など、21都府県で栽培・出荷されています。
レモンは柑橘類の中でも特別な感情を引き起こしてきました.
梶井基次郎の「檸檬」がよく知られていますが,現代詩では高村光太郎「レモン哀歌」がよく知られ,ウェブ上でもよく取り上げられています.
以下,古今短歌歳時記(鳥居正博編著 教育社)より.
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高村智恵子は,昭和十三年(一九三八)十月五日夜にその五十三年の生涯を閉じた.
死因は粟粒性肺結核.一九三一年以来精神分裂症状があった.
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『智恵子の半生』追悼文 高村光太郎
「その最後の日,死ぬ数時間前に私が持って行ったサンキストのレモンの一顆(か)を手にした彼女の喜も亦この一筋につながるものであったらう.彼女はそのレモンに歯を立てて,すがしい香りと汁液とも身も心も洗はれてゐるやうに見えた.」
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そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓(さんてん)でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう