「檸檬」.
読めても決して書けない漢字.読めるのも梶井基次郎の小説が教科書にあったためのようにも思います.
人を惹きつける漢字で,小説だけではなく,絵画の題名にも「檸檬」が頻出.ゴッホのものは「レモン」と訳されている場合が多いようですが.
lemonの中国語が「柠檬」(略字体Níngméng)で, lemonを中国語へ音訳した漢字とのこと.
「枸櫞」
レモンについて色々調べていたら,「枸櫞」という漢字に行き当たりました.
突然聞かれたら,読めないでしょう.クエン.
和名マルブッシュカン(丸仏手柑)の別名(これも漢名の音読み)だそうですが----
このマルブッシュカンは英語でcitron.
現在は日本でもシトロンの方が通りが良い.
Citron - Wikipedia シトロン - Wikipedia
枸櫞に戻ると----
実は,この名前は現在でもよく使われています.
枸櫞酸ですね.漢字が使われることはほとんどなくて,カタカナが一般的.
クエン酸.
これならば,多くの方がご存じの名前になります.
みかんや梅干しの酸っぱさの元.最近では,食品添加物,健康食品から台所洗剤まで多方面に大活躍.
生き物の体の中ではとっても重要な代謝中間体.呼吸して得られるエネルギーは,まずこのクエン酸ができるところが起点となって手に入れることができる---
英語ではcitric acid.この日本語訳がクエン酸になります.
citric acid⇒クエン酸 はすばらしい翻訳だと思います.
citricは,シトロンまたはレモンに由来する言葉ですから.
citric
citric | Origin and meaning of citric by Online Etymology Dictionary
(DeepL翻訳 一部改変)
シトロンかレモンに関連した、またはシトロンかレモンから派生した語.1800年、現代ラテン語のcitricumから(acidum citricum として用いられた.acidum citricum は,1784年にドイツの化学者カール・ヴィルヘルム・シーレが発見したクエン酸のラテン語名)
citric (adj.)
"pertaining to or derived from citrons or lemons," 1800, from Modern Latin citricum (in acidum citricum "citric acid," discovered by German chemist Carl Wilhelm Scheele in 1784); see citrus + -ic. The classical adjective was citreus.
そして,
レモンはシトロン(C. medica)とsour orange(Citrus × aurantium 和名ダイダイ)が交配して生まれた品種であることがわかっています.
Genomics of the origin and evolution of Citrus | Nature
レモンと言えばと酸っぱさ=クエン酸(代表的有機酸=酸性を示す有機物).そしてビタミンC.
他の柑橘類と比較してみました.
酸っぱさはトップをライムと競っています.
クエン酸の他,リンゴ酸も思ったより沢山含まれています.すっぱみの中にまろやかな感じがするのはそのため?
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshs1925/58/3/58_3_587/_pdf/-char/en
そしてビタミンC.かろうじて柑橘類トップというところでしょうか.