新型コロナ これまでの対応に対する専門家会議の見解 1.一定の成果を上げた.その要因は:2.市民の衛生意識等が高レベル.3. ①中国由来の感染の波(専門家会議呼称「第一波」),欧米由来の感染の波(専門家会議呼称「第二波」)の早期検出  ②クラスター対策: 伝播を捕捉し,特徴(「三密」での伝播)を初期の頃から把握できた.4. 伝播の特徴を明らかにできたのは,他国にはない「さかのぼり接触者調査」を保健所が行ったため BuzzFeed

新型コロナ感染拡大に対する緊急事態宣言が解除され,不安の中にも新しい日常にふみだしつつあります.

 

「新型コロナによる死亡者、なぜここまで少ない? 海外で実施されていないある調査が感染拡大を防止」

と題し,BuzzFeedが,これまでの対応に対する専門家会議の見解をまとめています.

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-senmonka-200529

 

専門家会議は

一定の成果を上げたと総括し,

国民皆保険制度,高レベルの医療体制・衛生意識に加え,他国ではほとんど行われていない保健所による「後ろ向き調査」,その結果分かってきた新型コロナウイルス伝播の特徴,この特徴を捉えたクラスター対策により,感染者数・死亡者数・重症者数を減らすことができたとしています.

 

以下,BuzzFeedの記事の要約です.

一部私の注を挟みながら.

  

これまでの対応に対する専門家会議の見解

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-senmonka-200529

1.日本は欧米諸国と比較して感染者数の増加が抑えられ、死亡者数や重症者数を減らす点で一定の成果を上げた.

 

2.一定の成果のポイントとして次の4点が高レベルにあったことが指摘できる.

 ①国民皆保険制度  ②医療レベル  ③保健所  ④市民の衛生意識 

[注 by yachikusakusaki  :

 医療技術は高レベルにあるが,集中治療ベット数やPCR検査能力は先進諸国の中では劣っており(新型コロナウイルス瀬戸際の攻防—感染拡大阻止最前線からの報告1 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/04/12/234217 ),保健所も統合・縮小傾向にあったことが,新型コロナウイルスへの対応を困難なものとさせていた.

このような制約のある現状を踏まえた上での,新型コロナへの対応であった.]

 

 

3. 具体的な対応として重要だったのは次の2点

 ①中国由来の感染の波(専門家会議呼称「第一波」),欧米由来の感染の波(専門家会議呼称「第二波」)の早期検出

 ②クラスター対策

 

 ①のうち,特に重要だったのが中国由来の感染の「第一波」の早期検出とその終息.

 ドイツ、フランス、イギリスなどは,中国由来の感染の「第一波」を把握できず,水面下での拡大を許したことが感染爆発につながったと考えられる.

 一方,日本は伝播を捕捉し,その特徴(いわゆる「三密」での伝播)を初期の頃から把握した上で,明確な戦略に基づいてクラスター対策を行うことでき,「第一波」の感染拡大をほぼ食い止めることができた.

 

[注 by yachikusakusaki]

f:id:yachikusakusaki:20200601234650p:plain

 新型コロナウイルス瀬戸際の攻防—感染拡大阻止最前線からの報告1 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/04/12/234217 

 

 [注 by yachikusakusaki :欧米由来の「第二波」も検出できていた.しかし,急激な帰国者増への国レベルの対策が後手に回り,クラスター対策のみでは食い止められなかった.これが緊急事態宣言につながった.  新型コロナウイルス瀬戸際の攻防—感染拡大阻止最前線からの報告1 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/04/12/234217 

 

4. 伝播を捕捉し,その特徴を明らかにできたのは,「前向き接触者調査」に加え,保健所の努力により「さかのぼり接触者調査」を行うことができいていたためである.

 

「前向き接触者調査」:

 新規感染者を起点とし,濃厚接触者を洗い出す調査.ウイルスの封じ込めには有効な調査で,SARS封じ込めなどで用いられた.しかし,症状が軽かったり無症状のまま水面下で伝播していく新型コロナウイルスの感染経路を追うためには限定的な効果しか得られなかった.

 

「さかのぼり接触者調査」:

 新規感染者がどこで感染したかを特定し,共通の感染源にいた濃厚接触者を洗い出す調査.ほとんどの国ではこの「さかのぼり接触者調査」は行われていない.

しかし,日本の保健所では最初の段階から感染者の濃厚接触者の調査と合わせて感染源の調査が行われてきた.これが幸いしたことになるが,なぜこのような調査が可能だったかは現時点では不明.押谷教授によれば「結核の感染源を見つける調査を日常的に行ってきたことが要因かもしれない」とのこと.

f:id:yachikusakusaki:20200601235406j:plain

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-senmonka-200529

 

いずれにせよ,保健所によるこの「さかのぼり接触者調査」により,日本では早い段階から感染源となった場の共通点,すなわち密集、密閉、密接の「3密」を明らかにでき,この場でのクラスター発生を極力抑えることで,感染拡大を防止するという戦略を立て,一定程度成功した.

f:id:yachikusakusaki:20200601235430j:plain

新型コロナクラスター対策専門家 (@ClusterJapan) | Twitter

 

f:id:yachikusakusaki:20200602000402j:plain

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/covid-19-senmonka-200529