「春めく」を詠んだ短歌  野辺見れば若菜つみけりむべしこそ垣根の草も春めきにけり 紀貫之  三島江につのぐみ渡る葦の根のひとよのほどに春めきにけり 曽禰好忠  梅が香の匂はざりせば雪の中に近づく春を何にしらまし 小沢蘆庵  水ぐるま春めく聴けば一方(ひとかた)にのる瀬の音もかがやくごとし 北原白秋  雨の音は氷雨とかはり霰となりぬ慌しきに春ぞ隣れる 初井しづ枝  春きざすとて戦ひと戦ひの谷間に覚(さ)むる幼な雲雀か  塚本邦雄

我が家のご近所の梅の花は,すでに散り始めていますが---

大船フラワーセンターの梅は,今が見頃でした.

やや日かげに植えられているため?品種が異なる?そして大船と江の島近くでは,わずかに気温も異なる?

 

 

 

一方,沢山植えられている椿はほとんどが散ってしまっていて,今年は最盛期を見逃してしまいました.

 

そして,菜の花が満開.春を最も感じさせてくれる花の一つですね.

ただし,雨が余り降らなかったせいか,背丈が低い株ばかり.花の勢いもやや物足りない.野菜の一つでもある菜の花.野菜の高値を連想させてくれました,

 

 

「春めく」を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

野辺見れば若菜つみけりむべしこそ垣根の草も春めきにけり  紀貫之 拾遺集

 

三島江につのぐみ渡る葦の根のひとよのほどに春めきにけり  曽禰好忠 後拾遺集

(つのぐむ 草木の芽が出始める)

 

朝霞へだつるからに春めくはと山や冬のとまりなるらん  藤原定家 拾遺愚草

 

人とはぬ都のほかの雪のうちも春はとなりにちかづきにけり  式子内親王 続後撰集

 

花をまつ春はとなりになりにけりふるさと近き三吉野の山  藤原家隆 新千載集

 

梅が香の匂はざりせば雪の中に近づく春を何にしらまし  小沢蘆庵 六帖詠草拾遺

 

春めきしこの一夜さに梅もやとこころ動けば書(ふみ)読みがたし  伊藤左千夫 左千夫歌集

 

水ぐるま春めく聴けば一方(ひとかた)にのる瀬の音もかがやくごとし  北原白秋 黒檜

 

春めきし加茂川のおと朝がすみおほにかなしく旅に遇(あ)うかも  中村憲吉 しがらみ

 

窓外の檜葉にさす日も春めきてあたたかき故火を忘れけり  松村英一 やますげ

 

雨の音は氷雨とかはり霰となりぬ慌しきに春ぞ隣れる  初井しづ枝 花麒麟

 

春きざすとて戦ひと戦ひの谷間に覚(さ)むる幼な雲雀か  塚本邦雄 水葬物語