水仙を詠んだ詩として頭に浮かぶのは,ワーズワースの“Daffodils" . 先日も記したように,Daffodilsの第一義はラッパズイセン,もしくは黄水仙で,白〜クリーム色と基調とする和水仙ではありません.実際,この詩を「黄水仙」と訳している場合もあります. 谷間と小山のうえに 高く流れる 白雲のように わたしはただひとり さ迷いあるいた. すると突然 金色にかがやく 黄水仙の 花の群れを わたしは見た.

日本の冬を代表する花,水仙

 

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水仙を詠んだ詩として頭に浮かぶのは,ワーズワースの“Daffodils" .

先日も記したように,

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/12/20/235332

Daffodilsの第一義はラッパズイセン,もしくは黄水仙で,白〜クリーム色と基調とする和水仙ではありません.

 

私がつい最近まで知らなかっただけで,英語をきちんと学んでいる人にとっては当たり前の話でしょうから,何回も取り上げることではありませんね.

実際,この詩を「黄水仙」と訳している場合もあります.

 

例えば

 

谷間と小山のうえに 高く流れる

白雲のように わたしはただひとり さ迷いあるいた.

すると突然 金色にかがやく

黄水仙の 花の群れを わたしは見た.

湖のわき 木々のした, そよ風に

ゆらゆら躍っている 花の群れを

/ 出口保夫 訳(ワーズワース 田園への招待 講談社+α新書

 

I wander'd lonely as a cloud

That floats on high o'er vales and hills,

When all at once I saw a crowd,

A host of golden daffodils,

Beside the lake, beneath the trees

Fluttering and dancing in the breeze.

 

水仙冬の花であるのに対し,ラッパ水仙黄水仙)は3月が最盛期でしょうか?日本では.

春を告げる花ですね.

イギリスでワーズワースが湖畔に見た水仙も4月半ばのこと.妹のドロシーが日記に書き記しています.

 

ガウバラ・パークを過ぎて林にさしかかると,湖岸に黄水仙をみかけた.湖の波が岸に種子を運び,そのような群生ができたのだと思う.だが湖にそって進むうちに,黄水仙の数はしだいに増え,木々がおおきな枝をのばしている下まで来ると,湖岸に黄水仙の長い帯が拡がっているのがわかった.------こんなみごとな黄水仙を見たことがなかった.

1802年2月15日)

(講談社プラスアルファ新書)

 

なお,ワーズワースの詩の題名「daffodil」.

実は通称名で,特に決まった題はつけられておらず,しいて言えば,詩の冒頭の1行「I wander'd lonely as a cloud」がより正式な題とされているようです.

少なくとも英語の検索では,「I wander'd lonely as a cloud」でこの詩にたどりつき,英語版ウィキペディアでは,この題名で解説が書かれています.

 

この詩,そして黄水仙は,英語圏でも高い人気を博しているようで,「A host of golden daffodils」で検索すると,すばらしい黄水仙の写真とともにこの詩を引用しているサイトが数多く見つかります.

 

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https://www.yourmag.net/your-garden/a-host-of-golden-daffodils/

 

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https://scotlandsgardens.org/auchmacoy/

 

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https://mskirbyknockanean.weebly.com/blog/a-host-of-golden-daffodils

 

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%22A_Host_of_Golden_Daffodils%22_-_geograph.org.uk_-_1772954.jpg

 

I wander'd lonely as a cloud(The Daffodils) William Wordsworth

出口保夫 訳

(講談社プラスアルファ新書)

 

谷間と小山のうえに 高く流れる

白雲のように わたしはただひとり さ迷いあるいた.

すると突然 金色にかがやく

黄水仙の 花の群れを わたしは見た.

湖のわき 木々のした, そよ風に

ゆらゆら躍っている 花の群れを

 

I wander'd lonely as a cloud(The Daffodils) William Wordsworth

 

I wander'd lonely as a cloud

That floats on high o'er vales and hills,

When all at once I saw a crowd,

A host of golden daffodils,

Beside the lake, beneath the trees

Fluttering and dancing in the breeze.

 

天の川にまばたき かがやく

星のように 数知れず,

湖のふちにそって その花の群れは

果てしもなく つづいていた.

みんな花のあたまを 喜びにふるわせている

何万もの花を わたしはひと目で見た.

 

Continuous as the stars that shine

And twinkle on the milky way,

They stretched in never-ending line

Along the margin of a bay:

Ten thousand saw I at a glance

Tossing their heads in sprightly dance.

 

黄水仙のそばの波も 躍っていた.だがそれは

喜びにおいて きらきら輝く湖面の波にまさっていた.

このように 楽しい花たちにかこまれて

心たのしくない詩人が いようか.

わたしは じっと見つめた.けれど

その光景が どんな富をもたらしたかは 考えもしなかった.

 

The waves beside them danced, but they

Out-did the sparkling waves in glee:

A poet could not be but gay In such a jocund company!

I gazed - and gazed - but little thought

What wealth the show to me had brought.

 

しばしばわたしは 長椅子にもたれ,

ぼんやりと 物思いに沈んでいると,

あの黄水仙が 孤独の幸福ともなる

わたしの内なる目に はっきり映る.

そこでわたしの心は,喜びに満たされ

黄水仙とともに 躍りはねる.

 

For oft, when on my couch I lie

In vacant or in pensive mood,

They flash upon that inward eye

Which is the bliss of solitude;

And then my heart with pleasure fills

And dances with the daffodils.