中国料理・日本料理に欠かせないネギ.
▽中国では
ネギの原産地は,中国西部,あるいはシベリア・アルタイと考えられています(精選版日本国語大辞典)が,
中国には古来から食用とされた記録が残されています
(日本大百科全書).
・「春月飲酒茹葱(くうねぎ)、以(もって)通五臓(ぞう)」
『荘子(そうじ) 』(前3世紀頃)
・「茖(かく)、山葱(さんそう)」(茖は山葱である)
『爾雅(じが)』(前2世紀頃)
茖:野生のネギ,茖葱:ギョウジャニンニク
・「凡膾、春用葱」(膾(なます)は春にはネギを用いる)
『礼記(らいき)』(前1世紀頃)
・葱、葱白、葱頭をあわせて67の調理法を記述
『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(6世紀)
▽日本へは5世紀までには渡来
・記紀の時代
古事記には,近縁のノビル,ニラの名はあっても,ネギの記載はありませんが----
日本書紀に葱の記述があります.
仁賢六年九月(寛文版訓)
「秋蔥(あきキ)の転双(いやふた)〈双は重なり〉納(こもり)を思惟(おも)ふ可し」
(「秋蒔きの葱の二茎が、一皮に包まれているように、二重に密接な私たちの間柄を思って欲しい」 日本書紀・日本語訳「第十五巻 清寧天皇 顕宗天皇 仁賢天皇」 | 古代日本まとめ )
『日本書紀(702)』
ネギの古名が『キ』:日本書紀では,秋蔥はアキネギではなく,アキキと読ませています.
(葱を『キ』と読ませるのは,音読みではなく国訓 新字源/角川書店)
⇒分葱(わけぎ),浅葱(あさぎ:「あさつき」のこと)
・平安時代
葱和名 紀(き)、冬葱和名 布由木(ふゆき) の記述
『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』ネギとは - コトバンク
・中世
当時のネギは,現在「九条群」として分類される青ネギと考えられています.
「九条群のネギ」:今が旬の「ネギ」のお話 | 農研機構
約1,000年前から栽培され,明治に至るまで京都府紀伊郡東九条村(現京都市下京区)を中心に栽培されていました.
江戸時代には,ネギの名が広がり,品種群が千住、加賀、九条の3系に大別.ネギとは - コトバンク
(なお,九条群に代表される葉ネギと千住群に代表される根深ネギは,日本へ渡来する以前から分化していたとする記載もあります.
実際の所はどうだったのでしょうか?)
ウェールズの国章リーキ
ネギは中国・日本など,アジアの野菜と思われていますが,ヨーロッパで食べられていないわけではありません.
特にウェールズではリーキ(西洋ネギ)が国章になっています.
以前このブログに書いた記事を再録します.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/15/025611
1ポンド硬貨は,水仙ではなくリーキが採用されています.
http://www.geocities.jp/tozzer/vegi/leek.htm http://www.specialtyproduce.com/produce/Leeks_113.php
ウェールズのナショナル・デー、聖デービッドの日(3月1日)には,ラッパズイセンやリーキ(ポワローネギ)を身につけて祝います.
プリンス・オブ・ウェールズ,チャールズ皇太子も.ここでも水仙ではなくリーキが胸に!
(ただ,ウェブ上の画像を捜した印象からですが,子供や女性は黄水仙の方が好みのように見えます)
ww.express.co.uk/news/uk/647883/St-David-s-Day-Leeks-Celebrations-Wales-Welsh-National-Day-March-1-Daffodils https://teawithmarykate.wordpress.com/2010/02/28/celebrate-st-davids-day-inspiration-from-tea-with-mary-kate/
リーキ(西洋ネギ)がウェールズの国章となった逸話は数多く存在します.
OnWales | Wales-Japan ウェールズ政府公式サイトによれば,
ウェールズの守護聖人セント・デイヴィド(St David)が,アングロサクソン人との戦闘前に敵・味方を簡単に見分けるため,リーキを帽子につけるようブリトン人に助言したことが由来ではないかと言われています.
黄水仙とリーキを表す単語が,ウェールズでは同じです.この言葉の混同によって,リーキと黄水仙の両方が幸運にも国家を象徴する国章として採用されることになったのです.