都市部の一部自治体が公表した確保病床数が実態と「乖離していた」ことがあると問題視した「第5波までの医療提供体制の問題点を検証した資料」が分科会に提出されました.確保病床数が実態とかけ離れていたことは指摘され続けて来ました.結果,自宅療養者の死亡が相次いでしまった.改めて,この資料を生かした対策を求めると共に,このような不手際を招いた政府・自治体に猛省をうながしたいと思います.

新型コロナのための“確保病床数”は実態と「乖離していた」

新型コロナウイルス感染者が低いレベルで推移するようになり,第3回目のブースター接種が話題の中心になっています.

そんな中,政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会に,ある資料が提出されました.

都市部の一部自治体が公表した確保病床数が実態と「乖離していた」ことがあると問題視した「第5波までの医療提供体制の問題点を検証した資料」です.(東京新聞

この記事は最下欄[3]に引用します.なお,同じ内容を他のサイトがより詳細に報道しています.

www.m3.com

www.buzzfeed.com

 

しかし---

確保病床数が実態とかけ離れていたことは指摘され続けて来ました[2].

そして数字上は余裕があるように見えながら,実際には多数の方が自宅療養を余儀なくされ,この自宅療養中の死亡者が相次いでしまいました[1].

 

改めて,この「第5波までの医療提供体制の問題点を検証した資料」を生かした対策を求めると共にこのような不手際を招いた政府・自治体に猛省をうながしたいと思います.

 

 

[1]相次いだ自宅療養中の死者

第5波では入院できずに自宅療養中の死亡者が多数報道されました.その数をしっかり調べた報道を私は知りませんが,かなりの数に上ることは確か.

例えば,

・9月22日のNHKWEB

「(東京都で)今回の第5波で,先月以降,自宅療養中に亡くなった人はこれで49人になりました」

東京都 新型コロナ 16人死亡 537人感染 7日連続1000人下回る | 新型コロナ 国内感染者数 | NHKニュース

 

・東京都で8月中に自宅で死亡.後に新型コロナ感染が判明した方は112人(上記の49人にはおそらく含まれていない)

自宅などで死亡の感染者250人 8月に急増、第3波の2倍に [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/09/22/235126

 

NHKによる「施設内ブレークスルー感染」についての報道では:

新型コロナウイルスの感染が急拡大していた,ことし8月のおよそ1か月に,全国の100を超える高齢者施設でクラスターが発生し,病院に入院できないまま施設内で死亡する高齢者が相次いでいたことがわかりました.”

としています.

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211030/k10013327841000.html

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/10/30/235559

 

[2]確保病床数が実態とかけ離れているのでは?

埼玉医大の重症者の届出病床は「8床」 しかし,安全に同時に動かせるのは4台が限界”

“積み重なれば,首都圏をはじめ全国でどれくらいの差になるのか.”

「まさに今、限界に」「もう受けられない」治療の最前線、重症者病床が埋まった瞬間【ルポ・コロナ病棟】

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/08/11/235828

 

この重症病床使用率を見て,非関係者は「なぜ病床逼迫?」って思うでしょう.

ところが実際,千葉県にはもう1床も無い状態.なぜこんな奇異なことが起きたかといえば,政府から「重症病床数を増やせ」という要求があったときに非現実的な見積もりで大きな数字を書類に書いたから.他の都県も同じでは?

https://twitter.com/yoshirohayashi/status/1425071236510404608

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/08/11/235828

 

 

[3]

人手不足で使用病床は5,6割「行政と医療機関の連携不足」 新型コロナ分科会が第5波検証

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https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=143103&pid=517692

2021年11月16日 21時24分

 政府が16日に開いた新型コロナウイルス感染症対策分科会で,今夏の第5波までの医療提供体制の問題点を検証した資料が提出された.入院できない患者が相次いだ背景として,都市部の一部自治体が公表した確保病床数が実態と「乖離していた」ことがあると問題視.行政と医療機関の連携不足が影響した,と分析している.(池田悌一)

◆「病床使用率80%程度が運用の限界」

 検証資料では,一部の自治体が,コロナ病床を用意する具体的な方針を医療機関に速やかに示せず,「発症初期の患者への支援が遅れ,重症者数の増加を招いた」と指摘している.

 また,人手不足などから確保病床の50~60%程度しか使えず,入院できない患者が多発したとして,「実効性のある確保病床数ではなかった」と批判.受け入れ態勢には余裕を持つことが必要だとして,「病床使用率80%程度が運用の限界だと共有することが重要」と強調した.

 検証資料をまとめたのは,神奈川県の医療危機対策統括官で藤沢市民病院副院長の阿南英明氏と分科会メンバーら.阿南氏はこの日の記者会見で,「もともと行政は細かい病床の運用を指示したことがなく,対応しきれなかった.行政と医療機関の密なコミュニケーションがないまま,確保病床数の数字が積み上げられてしまった.反省すべきことだ」と指摘した.

 その上で「病床の確保は行政と医療機関の約束事にすることが重要だ.今回の反省点を第6波の対策に生かしてほしい」と求めた.