このブログでは,古事記に記載されている植物として,山葡萄,竹の子,桃,藤,百合,葦,菜/青菜,大根 を取り上げてきましたが,改めて “植物をたどって古事記を読む”シリーズを新たに始めることにしました.“植物をたどって古事記を読む”(1)

ヤマブドウ,タケノコ,モモ.

この三種の植物名が一緒に出てくる物語とそれを記載している書物は?

 

以前の私には全く答えられませんでしたが----.

f:id:yachikusakusaki:20190220015640j:plain

ヤマブドウ - Wikipedia タケノコ - Wikipedia モモ - Wikipedia

 

一昨年「モモ」を扱ったブログを書いたときに,初めて知りました.

yachikusakusaki.hatenablog.com

ヤマブドウ,タケノコ,モモを記している書物は,現存する日本最古の歴史書古事記(成立は712年)

最愛の妻イザナミに先立たれたイザナギが,もう一目妻に会ってみたい気持ちをとどめることができずに,黄泉国(よもつくに⇒夜見之国よみのくに)へ降りたった,とてもよく知られた物語に.ヤマブドウ,タケノコ,モモが続けて登場します(**).

 

このブログでは,古事記に記載されている植物として,他にもいくつかの植物を取り上げてきました.

 

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/05/05/024941

百合

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/06/28/012534

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/04/17/011338

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/04/27/013455

菜/青菜

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/01/07/002003

大根

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/01/24/021914

 

この植物たちにひかれて,口語訳された古事記を初めて読んでみると---.

ギリシャ神話に負けないぐらい面白い.

⇒一回通読する価値あり!

 

そして,古事記には90あまりの植物が記載されている. 

⇒“植物をたどって古事記を読む”シリーズを,改めて始めることにしました.

いつまで続けられるかあまり自信はありませんが---

 “三浦祐介著 口語訳古事記[完全版]文藝春秋”をテキストとしていくつもりです.

 

 

**

ヤマブドウ,タケノコ,モモの登場する場面

今日のところは,先のブログでまとめた福永武彦訳「現代語訳古事記」よりの要約で,

 

イザナギは「私のすがたをごらんにならないよう」という妻の言葉をやぶり,全く変わり果てた姿を見てしまいます.

体中に蛆と膿.腐れ果てた体からは八柱の雷神(イカヅチノカミ)が生まれ出ていました.

恐れおののいたイザナミノ命は一目散に逃げ出します.

「あなたという方は,私の恥ずかしい有様をごらんになりましたね」

イザナミは悔しげに叫び黄泉国の醜い女神達の群れに命じてあとを追いかけさせます.

イザナミは一心に逃れ走りますが,危なくなったので,かみを縛ってあった黒い蔓(つる草を束ねた冠)を取り外して後方に投げ捨てます.地に落ちた蔓は野葡萄(のぶどう)の実となって生え,女神達がその実を摘んで食べ始めた間に遠くへ逃れます.

しかし野葡萄の実を食べ終わると女神達はまたあとを追い始めたので,今度は,櫛を後に投げ捨てると,タケノコが生えてきました.女神たちがタケノコを食べ始めます.その間に,また遠くに逃げました.

イザナミはいっそうの憤怒にたけって,さらに,その身体から生まれた八柱の雷神に命令し,これに千五百人の夜見(よみ)の国の軍隊をつけて,夫のあとを追いかけさせました.------

イザナギは死者の国とこの世との境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)にたどり着き,坂の麓にあった桃の実を三つ取りあげると,追っ手を待って激しくこれを打ち付けます.その勢いに夜見の者どもは恐れをなして,ことごとく逃げ帰ってしまいます.

やっとのことで逃れたイザナギノ命は桃に対しこう言います.

「お前は今,私を助けてくれたが,ありとあらゆる命すこやかな人たちがもしや辛い目にあって苦しむことでもあれば,私同様に助けてやっておくれ」

そして,大神の実という意味の「おほかむづみの命」という名前を桃に与えました.