「植物をたどって古事記を読む」シリーズ
前回とりあげたユリ(“山由理草” / 笹ゆり).
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/04/235703
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/05/231315
東征後のイハレビコ(神武天皇)は,イスケヨリヒメを妻としますが,イスケヨリヒメの家は“山由理草”(笹ゆり)が咲くサヰ河のほとりにありました.
そうじゃ,その河をサヰ河と言うわけはの,その河のほとりにヤマユリが多く咲いておったからじゃ.
それでの,そのヤマユリの名を取ってサヰ河と名づけたのじゃ.
今日取り上げるのはスゲ.
イスケヨリヒメを妻とした大君(イハレビコ 神武天皇).
一夜の契りを懐かしんだ歌の中に,「管畳すがだたみ / 管のたたみ」として歌われます.
あしはらの しげしきをやに
すがたたみ いやさや敷きて
わがふたり寝し
葦茂る原の 荒れ果てた小屋で
菅のたたみを 清らかに敷き重ね
わが二人でともに寝たおり
この古事記「すがだたみ 管畳(菅のたたみ)」.
畳の歴史に必ず登場します.
以下は,W-walletというサイトからの引用.
https://w-wallet.com/tatami2.html
菅畳(すがだたみ)とは,植物の菅(すげ)で編んだ,筵(むしろ)のような敷物のことです.菅(すげ)は現在の畳に使われている藺草(いぐさ)によく似た形状をしています.菅の傘でも有名ですね.
木綿を重ねた「木綿畳」,幾重にも材料となる草を重ねた「八重畳」,葦に似た薦(こも)で編んだ「畳薦(こも)」.
この頃には,畳の材料が定まったものではなかった様子が伺えます.
菅スゲは,
「カヤツリグサ科スゲ属植物の総称」
単子葉類 monocots,ツユクサ類 commelinids,イネ目 Poales,カヤツリグサ科 Cyperaceae,
スゲ属 Carex
「全世界に約2000種ほど知られ,東アジアと北アメリカに多い.日本には210種ほど自生する.
葉や稈(かん)はイネ科植物に似て,イネ科とよく混同されるが,普通は稈は三稜(さんりょう)形で稈の内部は詰まり,葉は根生する」
とのこと(日本大百科全書 スゲとは - コトバンク )
古事記で描かれた「管畳」の材料となったスゲの種.
ネット上では
ショウジョウスゲ https://w-wallet.com/tatami2.html
カサスゲ http://www.mizukino-chonaikai.org/Shizen/20160520Mizukino-no-shizen23.pdf
が候補とされていますが----
万葉集で詠まれているスゲは,カサスゲとされています.
一般にスゲは,カヤツリグサ科のスゲ属の総称ですが古くは特にカサスゲをさしていました.(山田卓三 万葉植物つれづれ 大悠社)
古事記「管畳」のスゲもカサスゲと考えて良いように思いますが---.