とってもクールですよ.
私,こういう感じにしたかったのよ!
Audrey Hepburn images Roman Holiday wallpaper and background photos (824667)
スクリーンの妖精.
ご存じオードリー・ヘップバーン.
その代表作と言えば,これまたご存じ「ローマの休日」
だがあなたは知っているだろうか.彼女の本当の素顔を.日本初公開のプライベート映像と,新たな証言から,あのオードリーの知られざる野心に迫る.
アナザストーリー 運命の分岐点
「オードリーとローマの休日~秘めた野心 貫いた思い~」ナビゲーター 沢尻エリカ ナレーター 濱田岳
世界で最も愛された女優とは誰か?それはきっとあの人でしょう.
オードリー・ヘップバーン.エレガントなたたずまいと,少女のような愛くるしさ.なくなって24年たった今も,世界中で愛されています.そんな彼女の初めての主演映画となったのが,そう,ローマの休日です.
マリリン・モンロー,エリザベス・テイラー.ザッツ・アメリカンな女優が人気を博した時代に公開された「ローマの休日」.
主人公は,これが初主演のオードリー・ヘップバーン演じるアン王女.退屈な公務に嫌気がさし,1人でローマの街へと脱出する.
そんな彼女を偶然見つけた記者が,身分を偽って密かに取材するうちに,
The Film Sufi: “Roman Holiday” - William Wyler (1953)
2人は恋に落ちてしまう.
River Romance Rhapsody | International Rivers
公開されるやいなや,大ヒット.オードリーは初主演にして,アカデミー賞主演女優賞(第26回)に輝く.
映画を観た観光客が世界中からローマに殺到.日本の街角にはオードリーと同じヘアスタイルの女性があふれた.
以来,60年たっても愛される「ローマの休日」.こんな映画,他にはない.
運命の分岐点は,1952年6月23日.ローマの休日の撮影が始まった日です.今から65年も前ですが,この時,オードリーを間近で見ていた人物に,貴重な話を聞くことができました.
視点1 メイクの息子 ジャンネット・デ・ロッシ Giannetto De Rossi
当時10歳だった少年.ジャンネット・デ・ロッシ.両親がオードリーにメイクを担当していました.メイクは俳優の一番近くにいる存在.少年はオードリーの成功にかける,密かな野心を目の当たりにしていました.
オードリーヘップバーンの大出世作「ローマの休日」名作の影に秘められたアナザーストーリー.
イタリアの首都ローマ.「ローマの休日」は,1952年の夏,この町で3ヶ月かけて撮影された.その現場に,夏休み中,足しげく通った少年は,今も同じ街に住んでいる.
「Cyao」
ジャンネット・デ・ロッシ (75歳).イタリアのみならずハリウッドの大作を多数手掛けるメイクの第一人者だ.
「フェリーニのカサノバ」Il Casanova di Federico Fellini (Fellini's Casanova) (1976),「ゾンビ2」Zombi 2 (Zombie a.k.a. Zombie Flesh Eaters) (1979),「デューン」Dune (1984),「ランボーIII」Rambo III (1988),「セブン・シスターズ」 WHAT HAPPENED TO MONDAY?(2017)
「スイートだね.彼女,なんてスイートな演技をするんだろう」
4代続く,映画一家のデ・ロッシ家.「ローマの休日」には父がメイク,母がヘアスタイリストとして参加した.当時10歳のジャンネットは,撮影現場でオードリーの並々ならぬ覚悟を目の当たりにした.
「彼女だって映画の獣さ.映画の世界じゃ獣じゃなければ生きていけない」
視点1.メイクの息子 「映画の獣 オードリーの野心」
ローマの休日でデビューする前,オードリーは,どこで何をしていたのか?駆け足でご紹介しよう.
1929年5月4日生まれ.オランダの裕福な家庭に育った.その頃の夢はプロのバレリーナ.
しかし11歳の時に,ナチス・ドイツがオランダに侵攻.バレエどころではなくなる.戦後練習を再開するもブランクは大きく,プロの道は諦めざるをえなかった.それでも表舞台には立ちたい.彼女はロンドンに渡り,下町の劇場で女優の道へと進んだ.
一方その頃,アメリカ・ハリウッドで,史上空前のプロジェクトが立ち上がる.全編海外ロケを行う初の映画「ローマの休日」.
監督は巨匠ウィリアム・ワイラー.ワイラーはイタリアが誇るスタジオ,チネチッタに「最高のスタッフを集めて欲しい」と要請.ジャンネットの両親にはいの一番に声がかかった.
「そりゃそうさ.ワイラー監督は『イタリアで最高のメンツをそろえてくれ』って言ったんだろ?メイクアップでうちの親父を超える人はいないし,ヘアでうちのおふくろを超える人はいないよ」
主演男優には,ハリウッドきっての人気スター,グレゴリー・ペックが決定.だがヒロインのプリンセス役だけはなかなか決まらず,欧米各地でオーディションが行われることになる.
それを耳にしたオードリー.密かな野心をたぎらせた.新米で未熟だけどオーディションを受けたいと思った.
“私に好意を持ってくれる人をもっとみつけたかった”(Barry Paris " AUDREY HEPBURN" Berkley より)
各地でカメラテストが行われ,フィルムはワイラー監督のもとへ送られた.
オードリーはいかにして大役を手に入れたのか.テストの様子が数コマだけ残っている.
お題はベッドで寝て起きるだけのごくシンプルな演技.だがワイラーは,スタッフに1つ秘密の注文をつけていた.
「『カット』と言った後もカメラを回しっぱなしにして欲しい」
アクション.寝そべるオードリー.
カットの声がかかる.ここからが見物だった.「まだ回してるんでしょ?」とばかりにカメラ目線でにやり.そのままとびっきりの笑顔.
プライベートのオードリー・ヘプバーン 写真 - Audrey Hepburn Gallery -
胸元は直す恥じらいは忘れず,笑顔で去って行く.
回しっぱなしのカメラに誰もが戸惑う中,自然に演技をしたのはオードリーだけ.
映像を見たワイラーは,まだ無名のこの女優にかけることにした.
かくしてローマの撮影現場にやって来たオードリー.10歳のジャンネットは両親が働くメイクルームで初めてオードリーを見た.
「彼女は俺よりもずいぶん背が高くて,かかとから太ももぐらいしか見えなかったんだけれどさ,その部分だけでも目がくぎ付けだった.『なんてすてきなプロポーションなんだ』って,みとれていたよ」
1950年代,エリザベス・テイラーやマリリン・モンローなど,スキャンダラスでグラマーなスターが人気を博していた.
https://ciatr.jp/topics/205846 http://www.25ans.jp/wedding/celeb/best-marilyn-monroe_16_0622/
「No----! Oh my God! オードリーとは全然全く別物だ.全くだ.特にエリザベス・テイラーは周りを引きずり回してもう大変なんだ.昔,『別離(1974)』って映画で現場が一緒だったんだけど,シーンの間の待ち時間に,彼女,近くの宝石屋に寄った.で,俺にプロデューサーを呼んでこさせて,ショーウィンドーの中の高い宝石を指さすとこう言った.『この宝石ステキじゃない?』『ええそうですね』『じゃあ次のシーン,これつけて出たいわ』って」
取材者「オードリーはそんなことしない?」
「彼女は絶対に周りに迷惑をかけない.実力だけでその座を勝ち取ったんだ.どっかの誰かみたいにプロデューサーとねる必要なんてないんだよ(※個人の意見です)」
ローマにやって来たオードリーが撮影の前に訪れた場所がある.
「コンニチハ.ボンジュール」ルイゼッラ・フォンタナ.ここは彼女が2代目を務めるローマの老舗ブティックだ.
「オードリー・ヘップバーンよ」(壁にはウェディングドレスを着けたオードリーの写真)
「実はオードリーは『ローマの休日』の撮影前から,何度かうちに来ていたの.すてきなウェディングドレスもつくっていて,撮影の後,結婚するはずだったんだけど.ええ.イギリスの大金持ちと結婚するはずだったんだけど,直前で取りやめになったのよ」
オードリーは,ロンドンの舞台に出ていたところを,財閥の御曹司に見初められ、婚約.撮影後に結婚する予定だったが,破棄したのだった.全ては,映画のために.
「当時私はまだ10歳だったから,詳しいことはわかりませんでしたが,家の人たちが,ガッカリしていたのを覚えています.『あんなにかわいい花嫁姿がみられないなんて』って.
でも誰も怒ったりはしなかったんです.だって,彼女,代金は自分でちゃんとはらってくれましたから」
並々ならぬ覚悟で撮影に臨んだオードリー.実はその現場,とてつもなく過酷な状況だった.
(新聞見だし)猛暑襲来!日射病被害者続出中!
そう,その年のローマは,平均気温36℃の記録的猛暑だった.屋内のシーンでも,熱中症が続出.俳優陣も大汗をかいてはメイクのやり直し.
だが,オードリーだけは違った.
「親父が『汗をかくから,水を飲み過ぎないように』って言ったら,彼女,一滴も飲まないんだ.『すっげえな〜!これがプロってやつだな』と思ったよ.
それに比べたら,グレゴリー・ペックなんて全然ダメだよ.イタリアに来た時,死ぬほど沢山トイレットペーパーを持ってきて,それが足りてるかどうかだけ気にしてるんだ.『おい,イタリア人はトイレットペーパーを使わないとでも思うのか』って,子どもながらにいらっとしたよ.コロッセオの時代から進歩していないとでも思ったのかね」
猛暑の撮影現場.オードリーにはもう1つ,乗り越えなければならない壁があった.
監督のワイラー.
彼のあだ名は---ナインティーテイクマン(90 take-man).つまり,同じシーンを90回も撮り直すということ.
それは決してオーバーではない.こちらのシーン.
Birch Trees: The Spanish Steps in Rome + The Roman Holiday ローマの休日 - Wikipedia
後の時計台に注目して欲しい.グレゴリーペックが話しかけるカットは,13時40分.だが次のカットでは15時45分.その次のカットは11時25分.最後は15時50分とてんでバラバラ.2分程度のシーンに,ワイラーはなんと6日間もかけたという.
「ありゃやり過ぎだよ.『マキシマム4』っていう言葉があってさ,普通4テイク以降はダメになっちゃうんだ.演じる力が落ちちゃう.役者に聞いてみなって.大抵は最初の2テイクが一番良いんだ.だろ?」
ああ〜.ごもっとも.監督の異常な完璧主義の前に,ロケは延びに延び,カメラマンも交代するという異例の事態.
だが,オードリーは,一切弱音を吐かない.
この子はどこまで行けるのか?ワイラーはあるいたずらを仕掛けた.それがこの,「真実の口」
もともと台本にはなかったこのシーン.ワイラーは相手役のグレゴリー・ペックにこう指示した.
“オードリーには内緒だ.腕を食われたふりをしろ”
Birch Trees: The Spanish Steps in Rome + The Roman Holiday File:Audrey Hepburn and Gregory Peck at the Mouth of Truth Roman Holiday trailer.jpg - Wikimedia Commons http://www.lsw315.com/article_1382 Audrey Hepburn images Audrey Hepburn & Gregory Peck in "Roman Holiday" wallpaper and background photos (16043170)
思わず抱きつく最高のリアクション.「90テイクマン」のワイラーも,ここは,一発OKを出した.
一方,こちらのシーン.
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これもまた,「映画のために髪を切ったプロ根性」と絶賛した人もいたが,
「あれはカツラだよ.だって,何テイクも撮る監督だぜ?『もう一回切って』って言ったらどうする?うちのおふくろが幾つもカツラを準備してたんだ」
オードリーの本当の覚悟を示すのは髪型ではないという.
「まゆ毛を見てごらんよ.オーディションの時と映画の時では,ずいぶん違うでしょ?これが全ての鍵なんだよ」
確かにオーディションの時は,ほとんど太さが変わらず,まっすぐな眉.
プライベートのオードリー・ヘプバーン 写真 - Audrey Hepburn Gallery - Audrey Hepburn images Roman Holiday wallpaper and background photos (824667)
映画の時は,眉頭から眉尻にかけて,少しずつ細くなっている.
この違い,オードリーのたっての願いで,ジャンネットの父アルベルトが生みだしたものだという.
「彼女は,現場でプロデューサーに,1つだけワガママを言った.『メイクは全てアルベルト・デ・ロッシでお願いします』って.
自分に必要なのは,親父のメイクだと一目で見抜いたんだよ」
そして彼女はこう言った.
「『眼よ.眼は心を表すから,眼のメイクが一番大事なの』って.」
こうして生まれた新しい眉.GULL WING(カモメの翼)と名付けられた.
このカモメの翼がもたらしたものとは---
「眉尻が細くなることで,眼の外側(眉尻側の眼と眉の間)に余白ができる.その余白にだけアイシャドーを施す.これが効くんだ.
これはあの頃はやっていた,マリリン・モンローとかド派手なメイクとは大違いだ.シャドーをべったり塗りたくれば,誰だってエロく見える.別にマリリン・モンローじゃなくてもね.
でもオードリーはもともと完璧な顔を持っているから,メイクは眼の外側だけでいい.あの大きな眼を際立たせてやれば,あとはみんなイチコロさ」
当時のスターとは違い,決してグラマーとは言えない体型だったオードリー.だが,彼女は体型ではなく,「眼力(めぢから)」で勝負すると決めた.
“私には女らしさを証明するのにベッドルームはいらない.グラマーが自慢のスターが裸で表現することを,私は服を着たままで表現できる”(Barry Paris " AUDREY HEPBURN" Berkley より)
Eight Films to See at The Italian Film Festival - Broadsheet
3ヶ月に渡る撮影の末,映画は無事完成.
完成試写会の後,監督のワイラーはこう言った.
「彼女を見ていたら,自然と涙が出てきた.面の皮が厚くなったこの私がだ.
私には分かっていた.あっという間に世界中が彼女に恋してしまうって.この映画に関わったわれわれ全てがそうだったように」
後の結果はご存じの通り.
オードリーは初主演にしてオスカーを獲得.彼女は一言「出来過ぎです」と述べた.
演技をどれだけ絶賛されても,謙遜し続けたオードリー.だが記者に「あなたは世界一美しい眼の持ち主だ」と称賛されたときには,こう答えた.
「いいえ,世界一美しい眼のメイクです.それもみんなアルベルトのおかげよ」
オードリーがこの映画で得た最大の武器こそ,『眼』だった.
ローマの休日以降,次々ヒット作を連発する中,髪型が変わっても,衣装が変わっても,この眼のメイクだけは生涯変えなかった.
そして,その現場には常にデ・ロッシ一家の姿があった.
「俺たち一家にとっては,『ローマの休日』こそ,一番大事な映画なんだ.あの時オードリーが指名してくれたことが,ハリウッドや他の世界への大きな扉を開いてくれた.
もし神様が完璧な女優をつくろうとしたらさ.美しくて頭もいい.そしたらできるのはオードリー・ヘップバーンさ!」
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