白菜の花.
余りお目にかかりませんが,
近くに白菜畑があれば,畑に残された白菜が冬を越して花を咲かせているのを見ることも---.私もたまたま見かけたことがあります.
(写真はないのでお借りして---)
http://www.hanakotoba.name/archives/2005/09/post_174.html
菜の花とほとんど同じ花(国語辞典的には).
というよりも,菜の花の一つ.
「植物学的にはナノハナという植物はなく,4枚の花弁が十字形に配列した黄色い花をつけるアブラナ科アブラナ属のアブラナや西洋アブラナの花の俗称である.
菜類(アブラナ)の花という意味であり,ナタネの花を指すことが一般的であった.しかし,現在ではアブラナ属の黄色い花の通称となっており,このためアブラナに属するハクサイやカブ,コマツナ,ノザワナなどの野菜の花や,カラシナ,キャベツ類も菜の花と呼ばれることもある.食農教育NO36 http://www.ruralnet.or.jp/syokunou/200409/09_natane.html」
以前このブログでも取りあげましたが( http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/02/26/034728 )
新潟では,“とう立ち菜”(薹立ち菜,新潟では“とう菜”)として,食べられている!
「白菜のとう菜は,茎もしっかりしていて甘く極めて美味です.白菜とう菜 | 新潟・食品名産図鑑」とのこと.
昨年私も初めて食べる機会があって--.クセがなく味もしっかりしていました.
下の写真は,九州の方のブログから拝借.記事には「畑でお宝発見!こんなに美味しい食べ物を捨てるなんて」という標題がつけられています.
http://qvege.hatenablog.com/entry/2014/01/30/151013
白菜はアブラナ属.
しかも,在来種のアブラナやコマツナ,ミズナ,カブ,ノザワナ,チンゲンサイ,ターサイと同種!
変種として,B.rapa var. pekinensisの名前が与えられています.
アブラナ属 - Wikipedia アブラナ科 - Wikipedia Brassicaceae - Wikipedia
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/09/21/012524
そもそも,「白菜はカブとツケナ(チンゲンサイなどの仲間)の交雑によって,中国で生まれた」とされています.白菜 – はくさい – chinese cabbage | おいしいねっと ハクサイの歴史についておしえてください。:農林水産省
野菜の花 果樹の花 (2005年3月 カブ) - 神奈川県ホームページ 青梗菜とは - 難読語辞典 Weblio辞書
「古代中国の華北で栽培されていたカブの類が南下し,華中のチンゲンサイの類と交雑して不結球ハクサイが生じました.これが,冬期に貯蔵野菜を必要とする華北で結球性を高め,清の時代に結球ハクサイになったといわれています.ハクサイの歴史についておしえてください。:農林水産省」
白菜と言えば「結球」しているものを思い浮かべますが,この様になるまでかなりの時間を要したんですね.
日本での白菜の歴史
日本には中国から渡来しますが,結球した白菜の栽培にはとても苦労した!
結球させること自体がかなり難しいのに加えて,アブラナなど「同種」の野菜が至る所にあって,すぐに交雑がおこるためでした.
そのような日本での白菜栽培の歴史は,野口 勲「野菜の種、いまむかし 第八回ハクサイの話野菜の種、いまむかし8/ハクサイの話」にかなり詳しい.
以下,主にこのサイトの記載から---.
結球白菜の渡来と品種改良
結球したの白菜を日本人が初めて目にしたのは,明治8年(1875年)東京博覧会とのこと.清国の出品でした.この出品種の種から栽培が試みられますが,なかなか結球しません.
しかし,たまたま愛知県で結球し,これを改良してできたのが「愛知白菜」(1921年).そしてその改良品種「野崎白菜」(https://chuco.co.jp/modules/selection/index.php?&content_id=34)が,早生系ハクサイとして好評を博します.
さらに,日清・日露戦争時に,現地でハクサイ食に慣れた兵隊が帰国.白菜需要が高まります.
大型種の種が輸入され,日本での採種も試みられることに.しかし,日本にはいたるところに在来ナッパが花を咲かせているため,交雑でまともなハクサイの種を採ることが困難でした.
そんな中,宮城県松島の離島で隔離栽培することで交雑を防ぎ,結球するハクサイの種を採ることに成功し,誕生したのが「松島純二号」(大正14年,1925年).現在も固定種としては最も多く栽培されている「松島新二号」(75日型中生種 昭和15年,1940年)につながります.
また,石川県では,「加賀白菜」という晩生種も生まれました.
「黄芯白菜」の誕生
上記の白菜は,柔らかく味がよかったのですが,戦後,耐病性の強い(従ってあまりおいしくない)ハクサイへと育種の方向が変わり,様々な耐病性固定種が生み出されます.
そんな中,白菜も,異なる形質を持つ親をかけ合わせるF1(両親の形質のうち、優性だけが現れ、劣性は陰に隠れる傾向が強い)が主流になり,沢山のF1白菜が作られるようになります.
そして,ハクサイの形状を大きく変えたのが,昭和36(1961)年に販売開始された,中央部の葉が白くなく黄色の,黄芯=おうしん=ハクサイ「新理想」でした.
日本では,「白菜」の名にふさわしい「白い芯」にこだわってきましたが,新理想は,味の良さが認められて大産地茨城の一部に定着しました.しかし,「白いからハクサイだ」と思い込んでいる全国には,なかなか広まりません.
突然ブレイクしたのは,発表から二十年以上たった1980年代になってからのこと.当時,ハクサイは二個単位で売られていました.家庭でたくさんの白菜漬けを漬けていた時代の名残りです.ところがその年,ハクサイが不作で高値となり,半分に切って売られるようになりました.すると中の黄色い新理想が目を引き,口コミで広がって,「黄色いハクサイはおいしい」という評判が一挙に広まったのです.
2000年代に入ると,F1ハクサイの新品種は,黄芯ハクサイ以外発表されなくなってしまいました.「ハクサイは白いから白菜なんだ」と言っていた種苗会社も,こぞって黄色いハクサイを育成しはじめていたのです.
おかげで,どんなにおいしくても,中の白いF1ハクサイの種は,つぎつぎ廃盤となり,入手できなくなっていきました.茨城などの大産地では漬物屋さん等の業務用大量需要に支えられた黄芯ハクサイしか作らなくなり,自家用品種は量がさばけないため,見捨てられていったのです.
確かに.
改めて見ると,白菜って何と黄色いことでしょう!