海・わた・わたつみを詠んだ短歌1 誰もが知る歌・夏の海 等  わたつみの豊旗雲に入日さし今宵の月夜(つくよ)さやけかりこそ 中大兄皇子  わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人にはつげよ蜑の釣り船 小野篁  大海の磯もとどろに寄する波われて砕けて裂けて散るかも 源実朝  白鳥は哀しからずや海の青空のあをにも染まずただよふ 若山牧水  夏の海去年(こぞ)たはむれし君はなしひとり鴎とともにあそばむ 吉井勇  少年のわが夏逝けりあこがれしゆえに怖れし海を見ぬまに 寺山修司

四季それぞれの賑わいを見せる江の島片瀬ですが,とりわけ夏は海水浴で賑わいます.ひと昔前の人出はありませんが.

https://activityjapan.com/feature/enoshima-beach-opening/

(昼間は暑くで外出しないので,ウェブの写真を貼っておきます.片瀬西浜ですね)

 

夕方出かけた時に撮った海と江の島の画像です.

片瀬東浜から

片瀬漁港から

西浜から

海は,形声文字で,”水と音符每バイ→カイから成る漢字.くろぐろと深い「うみ」の意を表す”とのこと(角川字源).

 

古今短歌歳時記によれば.古代〜平安期までは,必ずしも「海」と表記されていなかったようで,

万葉集では「海」も使われていますが,海原は「宇奈波良」.

古事記:「天之日矛(あめのひぼこ)」,日本書紀:「天日槍(あめのひぼこ)」.

▽平安中期の和名抄:「百川帰する所なり,和名宇三」

 

海の別名には「わた」「わたつみ」「わたつうみ」などがありますが,わたつみは「海つ霊(わたつみ)」で,元来「海の神」の意味だったようです.

 

 

海を詠んだ短歌1 誰もが知る歌・夏の海 等

(古今短歌歳時記より)

 

わたつみの豊旗雲に入日さし今宵の月夜(つくよ)さやけかりこそ  中大兄皇子 万葉集

 

わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人にはつげよ蜑の釣り船  小野篁 古今集小倉百人一首

 

大海の磯もとどろに寄する波われて砕けて裂けて散るかも  源実朝 金槐集

 

白鳥は哀しからずや海の青空のあをにも染まずただよふ  若山牧水 海の声

 

 

青海の海境(うなざか)遠くひかるもの船のしら帆と知りにきわれは  古泉千樫 屋上の土

 

夏の海去年(こぞ)たはむれし君はなしひとり鴎とともにあそばむ  吉井勇 酒ほがひ

 

現牛のごとき海あり束の間 日ねもす まほに霞むしづけさ  葛原妙子 原牛

 

物おもひしばしば消えよ稲妻のこもる海の上の夜の白雲  山本友一 黄衣抄

 

海底に夜ごとしづかに溶けゐつつあらむ.航空母艦も水夫も  塚本邦雄 水葬物語

 

海に来て海のこどもとなりてゐつ夢あはあはと覚めざりしかな  植木昭夫 花の修羅

 

少年のわが夏逝けりあこがれしゆえに怖れし海を見ぬまに  寺山修司 空には本

 

はろばろと琴になる木となれぬ木のいづれかさびし海の音聞く  辺見じゅん 水祭りの桟橋