シソ目の植物について,簡単な解説を探してまとめるシリーズ シソ目第十九回/シソ科第十四回
ミント/ハッカ属Mentha1
英語のmintミントは,ハッカ属Menthaの総称として用いられ,日本でもおなじみの言葉です.以前はハッカという言葉が一般的でしたが--.
ハッカ属については一昨年取り上げました.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/05/26/235524
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/05/27/235454
内容的にはかなり重なりますが,今日はハッカ属の植物としてニホンハッカ,スペアミント,ペパーミントを取り上げます.
ハッカ属ですから日本語では全てハッカと呼んでもかまわないのですが,現在の使用法に準じて用語をまとめると次表のようになるかと思います.
https://www.tokusanshubyo.or.jp/pdf/jouhoushi_21.pdf/21-20.pdf
できれば明日,その他のハッカ属植物としてマルバハッカとヒメハッカについて簡単にまとめてみたいと思っています.
ニホンハッカ(和薄荷)
Mentha canadensis L. var. piperascensの学名が付けられていますが.英語では単にMentha canadensisとして扱われる場合がほとんどのようです.
英語版ウィキペディアの書き出しは次の通り:
https://en.wikipedia.org/wiki/Mentha_canadensis
Mentha canadensis
Mentha canadensis is a species of mint native to North America (from the Northwest Territories to central Mexico) and the eastern part of Asia (from Siberia to Java). In North America, it is commonly known as Canada mint, American wild mint, and in Asia as Chinese mint, Sakhalin mint, Japanese mint, and East Asian wild mint.
(DeepL翻訳)北米(ノースウェスト準州からメキシコ中央部)とアジア東部(シベリアからJavaまで)に自生するミントの一種.北米ではカナダミント,アメリカンワイルドミント,アジアではチャイニーズミント,サハリンミント,ジャパニーズミント,イーストアジアワイルドミントとして知られている.
両者の写真のイメージは,ウィキペディアではずいぶん異なります.種としては同じでも,日本でさらに選別され「和薄荷」として品種が確立した?
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニホンハッカ
https://en.wikipedia.org/wiki/Mentha_canadensis
和薄荷は,メントール(化学名はメントールが標準,最近の様々な商品でメンソールと記述されている)の生産で,長い間主役を果たしてきた品種.
https://www.tokusanshubyo.or.jp/pdf/jouhoushi_21.pdf/21-20.pdf
現在は化学合成したものに押されている天然メントールですが,現在の生産量世界一はインド.ここでもこの種が使われているとのこと.
そして,ハッカ原油・天然メントール生産を軌道に乗せ,戦争前には生産量世界一を誇ったのが日本でした.
その中心地は北海道北見地方で,生産量は少ないとはいえ現在でも様々なハッカ製品が作られています.
ペパーミントとスペアミント
2種の比較については,
主に
Spearmint vs Peppermint: A Comprehensive Comparison(by avory Suitcase)からDeepL翻訳で.
https://www.savorysuitcase.com/spearmint-vs-peppermint/
料理の部分は,S&Bのサイトの記述・画像を併用しました.
https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/supportdesk/023.html
成分については,https://www.tokusanshubyo.or.jp/pdf/jouhoushi_21.pdf/21-20.pdf 等からも引用しました.
https://www.lotte.co.jp/entertainment/shallwelotte/story/mint/peppermint-spearmint/
種学名,原産地等
https://www.savorysuitcase.com/spearmint-vs-peppermint/
スペアミント(学名Mentha spicata)は,シソ科の中でも長い歴史を持ちます.この草本植物はヨーロッパとアジアが原産です.時を経て,北アメリカやアフリカを含む他の地域にも広がりました.
ペパーミント
ペパーミント(Mentha × piperita)は,ウォーターミントとスペアミントの交配から生まれたハイブリッド植物です.このポピュラーなハーブはヨーロッパと中東が原産です.古くからある植物であるにもかかわらず,1753年にスウェーデンの植物学者カール・リンネによって初めて記載されました.
生育条件と栽培・収穫
https://www.savorysuitcase.com/spearmint-vs-peppermint/
スペアミントは,pH6.0~7.0の水はけが良く,栄養豊富な土壌で育ちます.日当たりの良い場所を好みますが,日陰でも大丈夫です.
タネ,挿し木,根分けで殖やします.早春に種を蒔くか,最後に霜が降りると予想される4週間前に根分けしたものを移植します.スペアミントはすぐに広がるので,多くの園芸家がコンテナ植えを好みます.
定期的な水やりは欠かせませんが,水のやりすぎは根腐れの原因になるので避けましょう.また,若い葉を収穫して味を楽しむようにし,定期的に株元を摘み取ることで,生育を促し,葉が茂るのを防ぎます.
収穫はとても簡単です.花が咲く前に葉を摘むと風味がよくなります.茎の上半分,葉の一対のすぐ上を切り取ります.露が蒸発した後の朝の時間帯が摘み取りには理想的です.定期的な刈り込みは,より茂った成長を促すので,ためらわずに頻繁に収穫すること.
ペパーミント
ペパーミントは,湿り気があり水はけの良い土壌で,日当たりの良い場所で最もよく育ちます.この丈夫な多年草は,すぐに広がってしまうので,他の植物を駆逐してしまわないように,コンテナや決まった場所で育てることをお勧めします.
ペパーミントを生長させるには,適切な風通しを確保し,18~24インチの間隔で植えましょう.スペアミントと違い,ペパーミントはpH6.0~7.0の弱酸性の土を好みます.定期的に水やりをし,時々有機肥料を与えることで,健康的な成長を促します.
ペパーミントを栽培する際に注意しなければならないのは,種から殖えることはないということです.ペパーミントの望ましい特性を維持するためには,挿し木,ランナー,根の分割などを用いて繁殖させる必要があります.
ペパーミントは,オイルの含有量がピークに達した時に収穫するのがベストです.これは通常,花が咲き始める直前です.エッセンシャルオイルが最も濃縮される時間帯なので,早朝に茎を切りましょう.切り終わったら茎を結び,日陰で乾燥した風通しの良い場所に吊るして自然乾燥させます.ペパーミントの葉が完全に乾くまで,1週間以上かかることもあります.密閉できるガラス瓶に入れ,直射日光を避けて保存します.ペパーミントは,適切に保存されれば2年間は持ち,フレッシュな香りと味を保ち,料理にも使えます.
アロマとフレーバー
https://www.savorysuitcase.com/spearmint-vs-peppermint/
スペアミントとペパーミントのどちらを選ぶかは,最終的には個人の好みと,出来上がった料理に与えるインパクトによります.
スペアミントは,ペパーミントを比較するとそのアロマとフレーバーが際立ちます.スペアミントは,ほのかな甘い香りと,ほのかな爽やかさがあります.その風味は清涼感があり,まろやかな甘さと表現されることが多く,さまざまな料理に使える万能食材です.
一方,ペパーミントはよりしっかりとした強い香りと味を誇ります.その風味はスペアミントよりもかなり強く,ややスパイシーなことで知られています.その強い風味から,ペパーミントはキャンディーやチョコレートなど,シャープで爽快な風味を必要とするデザートによく使われます.
このような違いは,両者に含まれる成分の違いを反映しています.
https://www.tokusanshubyo.or.jp/pdf/jouhoushi_21.pdf/21-20.pdf
ミントの成分と言えば,メントールを思い浮かべますが,スペアミントにはメントールが含まれていません.ネット上では0.5%程含まれるという記述も見られますが,最近の詳細な分析ではメントールはみつかっていません.
(例えば https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6332415/
https://www.researchgate.net/figure/Spearmint-essential-oil-composition_tbl2_267035820 )
主成分はカルボンで,精油の60%以上となっています.
一方のペパーミントには,メントールが精油の40%以上で,和薄荷から得られる薄荷原油に迫る量含まれています.
https://www.tokusanshubyo.or.jp/pdf/jouhoushi_21.pdf/21-20.pdf
調理等への利用
https://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/supportdesk/023.html
https://www.savorysuitcase.com/spearmint-vs-peppermint/
どちらのミントも,キャンディーやガム,アイスクリームなどの菓子やデザートの香りづけ,飾りつけに多用されたり,カクテルやハーブティーなどのドリンク類にもよく使われます.スーッとしたすがすがしい香りがリフレッシュタイムにぴったりです.
また,肉や魚,野菜などの様々な料理に,臭み消しや清涼感を添える目的で使われます.
(例えば,詰め物料理やサラダ,ソース,ドレッシングなど)
伝統的な治療法では,スペアミントはその鎮静作用のために広く使われてきました.
料理への利用は古代までさかのぼり,ギリシャやローマでは料理に爽やかな風味を加えるために使われていました.そのマイルドでデリケートな味わいから,スペアミントは甘いお菓子だけでなく,塩味の料理にもよく使われます.
比較的ヨーロッパでよく使われる品種で,デザートの飾りづけや料理のほか,ハーブティーなどのドリンクにもよく用いられます.ラム酒にミントを入れた「モヒート」というカクテルには,スペアミントやこれに近い品種がよく利用されます.
https://www.sbfoods.co.jp/recipe/search_result.html?spice=00083
ペパーミント
ペパーミントは多くの用途のために広く栽培されてきました.その独特の風味と香りで知られるこの万能ハーブは,料理からパーソナルケアアイテムに至るまで,様々な製品の主成分となっています.
デザートの飾りだけでなく,羊肉料理のミントソースや,カクテル,ミントティー,ゼリー,アイスクリームなど幅広く利用されています.
https://www.sbfoods.co.jp/recipe/search_result.html?spice=00084