ミント2
ミント1
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/05/21/235701
ギリシャ神話では,ニンフがペルセポネーにより踏みつぶされ,変身したとされるミント.語源はギリシャ語minthe.
世界最古の医学書の一つである紀元前1550年の古代エジプトの「エバース・パピルス」に記載があります.現在,認められているミント属の種は13(18)〜24種.ただしペパーミントを含め沢山の交雑種があります.
今日はミントとハッカ.些細な(=重箱の隅をつつくような)ツッコミ編.
https://www.lotte.co.jp/entertainment/shallwelotte/story/mint/peppermint-spearmint/
ツッコミ1
ミントは,ギリシャ神話のニンフの名前からつけられた?
「ギリシャ神話では,ニンフがペルセポネーにより踏みつぶされ,変身したとされるミント.語源はギリシャ語minthe.」
と先に書きました.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/05/21/235701
ほとんどの日本語のサイトでは,このギリシャ神話を拠り所にして,「ミントの語源はニンフの名前」としています.その方がより美しく感じ,間違いとも言えないのですが---
“ギリシャ語のmintheは植物につけられた名前でこちらが先.ミントに変身したニンフの名前はこれを擬人化したもの”
とみなすのが,ギリシャ神話解釈における一般的な考え方.
ニンフとは
「ギリシア神話中,山,水,森,木,場所,地方,都市,国などに固有な神的力を擬人化した精で,若い乙女の形をとる」
山,水,森,木,場所,地方,都市,国,そして植物などの名前が先で,擬人化した同じ名前の乙女がニンフ.ということですね.
yachikusakusaki.hatenablog.com
ツッコミ2 ミントとハッカ
ミントは日本語ではハッカ(中国名薄荷の日本語読み).
ミント=ハッカと考えて間違いではありません.どちらもハッカ属の総称として用いられます. ミントを解説した日本語のサイトはほぼ全てこの考え方を採っています.
しかし---
ミント=ハッカと言い切ってしまっていいかどうかは微妙です.使っている文章次第,会話ならばお互いのイメージ次第では混乱するかもしれません.
ランダムハウス英語辞典では,英語mintは「ハッカ属の総称」が第一義.ただし,シソ科の総称としても用いられ,お菓子やキャンデーをさすこともあります.
日本国語大辞典の「薄荷」では,もともとは中国や日本に原生している種(Japanese mint)を指すのが第一義.そして,なんと「ハッカ属の総称」が語義としてあげられていません.
広辞苑第七版でも第一義はニホンハッカ.ただし,微妙な言い回しで,「ミントとも呼ぶ」という書き方になっています.ハッカという言葉の衰退?とミントという呼称への言い換えが進んでいることを反映?
そして,第二義になって,「広くは, ①のほかハッカ脳(ハッカ油の主成分の結晶.l(エル)-メントール)を含む同属植物数種の総称」とあります.
ランダムハウス英語辞典
mint
[mínt]
【1】ハッカ,ミント:シソ科ハッカ属 Mentha の芳香を持つ草の総称;オランダハッカ(spearmint), 西洋ハッカ(peppermint)など.
▶花言葉 virtue(徳).
【2】(一般に)シソ科 Labiatae の植物の総称.
【3】ハッカ風味のチョコレートや菓子.
【4】(小さな丸いウエハースを筒のように巻いた)筒包装キャンデー.
はっか【薄荷】
① シソ科の多年草.各地のやや湿った土地に生え,香料,薬用に栽培もされる.高さ二〇~六〇センチメートル.茎は---(中略)
葉から薄荷油・薄荷脳をつくる.漢名,薄荷.めぐさ.はか.〔塵芥(1510‐50頃)〕
② ①と同種の欧州産の植物.西洋薄荷.ペパーミント.
③ ①の葉から製した無色針形の結晶.薬品・香料などに用いる.
※胡瓜遣(1872)〈仮名垣魯文〉初「薄荷(ハッカ)入の扇形(じがみ)を又三ツ四ツ食ふたら」
広辞苑第七版
①シソ科の多年草.山地に自生するが,香料植物として北海道などで大規模に栽培.夏・秋に葉腋に淡紅紫色の唇形花を群生.茎・葉共に薄荷油の原料となり,香料および矯味矯臭薬となる.漢方で消炎・鎮痛・健胃剤とする.メグサ.ミント.〈日葡辞書〉
②広くは, ①のほか薄荷脳を含む同属植物数種の総称.セイヨウハッカ(英語名ペパーミント),オランダハッカ(英語名スペアミント)がある.
③薄荷精・薄荷脳の略.