シソ目の植物について,簡単な解説を探してまとめるシリーズ シソ目第二十回/シソ科第十五回
ミント/ハッカ属Mentha2
前回は,ハッカ属の植物として,代表的な3種,ニホンハッカ,スペアミント,ペパーミントを取り上げました.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/07/30/000435
https://www.lotte.co.jp/entertainment/shallwelotte/story/mint/peppermint-spearmint/
今日はその他のハッカ属の植物として,ヒメハッカ,マルバハッカもとりあげる予定ですが,その前に---
よく知られた話であり,二度も取り上げた(https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/12/27/120045
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/05/21/235701)内容ですが---
ハッカとmint/Menthaの語源
▽ハッカは漢字で薄荷.中国語でも「薄荷」で,“ボーフォァ”というそうです.
https://hakka.be/knowledge/type/
ハッカは,中国語「薄荷」の日本語読みですね.
▽日本語ミントは,英語のmintのカタカナ書きです.そして,
「エティモンライン」(Online Etymology Dictionary)によれば
https://www.etymonline.com/jp/word/mint
mintは,ラテン語mentha由来の英語.ラテン語menthaはミントを意味し,さらにもとをたどればギリシャ語minthē.
minthēは「ハーブのミントに変身させられたニンフとして擬人化された名称」として知られています.
私が調べたかぎりですが---
日本語でも英語でもほとんどのウェブサイトが,mintやmenthaはギリシャ語の「ニンフの名前に由来する」と書かれています.
間違いとまでは言えませんが(=ギリシャ語名はニンフの名前と植物名が一体化していたと思われるため),「ニンフに擬人化されているギリシャ語植物名に由来する」がより正確な言い方でしょう.
ギリシャ神話では,ニンフや人が変身して植物になったとし,「ニンフの名前が先にあってminthēと呼ばれた」という物語になっていますが,実際は「minthēが擬人化されてニンフの名前となっている」でしょう.変身して植物になることは実際にはあり得ませんから.
mint
https://www.etymonline.com/jp/word/mint
芳香のハーブ,Mentha属の植物.古英語minte(8世紀),西ゲルマン語の*minta(古サクソン語minta,中世オランダ語mente,古高ドイツ語minza,ドイツ語Minze)から.これはラテン語のmenta,mentha「ミント」に由来し,それ自体がプロセルピナによってハーブに変身させられたニンフとして擬人化されたギリシャ語のminthēからの借用語である.
ペルセポネー(ローマ名プロセルピナ)によってハーブに変身させられたニンフ「ミントMint(ミンタMintha)」
しかし,ハーデーズがペルセポネー(後の冥界の女王)を掠奪して連れてくると,嫉妬からわめき散らしたため,ペルセポネーにより踏みつぶされ,そこから生じた植物がミントでした.
(オッピアノス 「漁夫の歌」)
https://www.theoi.com/Flora2.html
ミント/ハッカ属と言えば,ニホンハッカ,スペアミント(ミドリハッカ),ペパーミント(セイヨウハッカ)がよく知られていますが,
他によく知られたミント/ハッカ属にアップルミント(マルバハッカ)があり,また,ニホンの在来種のミントに,ヒメハッカがあります.
今日は,英語版ウィキペディアから一部抜粋します.
アップルミント/マルバハッカ
Mentha suaveolens
https://en.wikipedia.org/wiki/Mentha_suaveolens
(DeepL翻訳 一部抜粋)
メンサ・スアベオレンス(Mentha suaveolens),別名アップルミント,マルバハッカ等.
シソ科ハッカ属の植物.地中海沿岸を含むヨーロッパ南部および西部が原産で,ヨーロッパの中部と北部で帰化しています.湿り気のある場所に生育すします.アフリカ,ヨーロッパ,アジア,アメリカ大陸など,世界各地で何千年もの間,薬用として利用されてきました.
草本性の直立多年草で,高さは40~100センチになり,白かピンクがかった花がいくつも渦を巻いて,夏の中頃から終わりにかけて開花します.フルーティーでミントのような芳香があります.
魅力的なハーブであるアップルミントは,しばしば観賞用/グランドカバーとして利用されます.丈夫で育てやすく,日当たりから明るい日陰を好みます.葉は料理用ハーブとして,アップルミントゼリーや,アップルミントクスクスのような料理の香り付けに使われます.また,ミントティーを作ったり,添え物やサラダにもよく使われます
一般的に入手可能な品種と栽培品種としてパイナップルミントがあります.
パイナップルミント(Mentha suaveolens 'Variegata')はアップルミントの栽培品種で,葉に白の帯が入ります.そこから派生した交配種にグレープフルーツミント(Mentha suaveolens × piperata)があります.
ヒメハッカ
Mentha japonica
https://www.ootk.net/cgi/shikihtml/shiki_2555.htm
https://en.wikipedia.org/wiki/Mentha_japonica#CITEREFMakino1906
(DeepL翻訳 一部抜粋)
高さ20~40cmの多年草.細い根茎を伸ばし,クローン状に繁殖する.葉は長楕円形で全縁があり,花は白色から淡紫色まで様々であります.ペニーロイヤル(m. pulegium)に似た香りがあります.
学名と分類・交雑
Mentha japonicaの植物名は原産国である日本に由来します.もとは別の学名が付けられていましたが,日本の植物学者牧野富太郎によって最初に記載されました.
和名はヒメハッカ(姫薄荷).
Mentha japonicaは現在,個別種として一般的に認められていますが,(一般的なミントと同様に)Mentha japonicaの正確な系統樹を決定することは,属が容易に雑種化する傾向のために困難でした. 2018年の系統学的研究では,Mentha節内の他のミントとは近縁ではないとし,系統樹上の配置に異議を唱えられています.
M.japonicaとMentha属のM.canadensis,M.aquatica,M.rotundifolia,M.spicata,M.arvensisとの間で実験室における交雑が確認されています.また,系統図の類似性からM.dahuricaとの交雑の可能性も予測されています.
精油成分
1970年の調査では,主成分はメントン(50.8%),イソメントン(18.6%),プレゴン(12.6%)であった.その他の少量の化学成分としては,3-オクタノン,3-オクトナール,d-リモネン,α-ピネン,β-ピネン,酢酸メンチル,ピペリトンが確認されましたが,その後の分析では,異なる数値がいくつか得られています.
分布
北海道と本州の固有種であり,日本では8月から10月にかけて開花します.
日本の環境省が発行している「絶滅のおそれのある野生生物のレッドデータブック」によると,準絶滅危惧に分類されています.
利用
他のミントと同様に,芳香ハーブとしても伝統的な治療薬としても使用されていました.ヒメハッカを含む局所軟膏は,牛の乳腺炎の治療にも使用されていました.