昨日は,春の野の花の代表としてスミレ(菫)を取り上げました.
しかし,他にも沢山の花が野に咲くのが春.今日はタンポポ(蒲公英)を詠んだ歌を取り上げます.
その前に,今までこのブログで取り上げたタンポポについての話題のおさらいしておきます.
▽タンポポの語源 ニッポニカ https://kotobank.jp/word/タンポポ-95500
タンポポは鼓草(つずみぐさ)とも呼ばれる.鼓の音(タンポンポン)を擬した語として「タンポポ」の名前が生まれたという説が有力とされています.(柳田国男,中村浩)
・異名「鼓草」の由来:タンポポの花茎を短く切り、両端を裂いて、水に浸(つ)けると、放射状に両端が反り返り、鼓(つずみ)の形に似る。
▽古名 ふぢな/ふじな(藤菜)〔本草和名(918頃)日本国語大辞典〕
▽漢字「蒲公英」はタンポポの中国名から.
▽英語dandelionは,フランス語 dent de lionに由来し,字義は「ライオンの歯」(ランダムハウス英語辞典)
▽一般的には「在来種と外来種があり,外来種セイヨウタンポポが増加している」と言われています.
Taraxacum japonicumとは - 植物図鑑 Weblio辞書 Taraxacum platycarpumとは - 薬用植物一覧 Weblio辞書
しかし,保谷彰彦さんによれば,話はそれほど単純ではないとのこと.
在来種タンポポはなぜ減少したのか 外来種セイヨウタンポポの広まりから雑種の登場まで|記事カテゴリ|BuNa - Bun-ichi Nature Web Magazine |文一総合出版
・在来種はカンサイタンポポ,カントウタンポポ等に分けられると言われていますが,1種とするのが適当.
シナノタンポポ・トウカイタンポポは,カントウタンポポの変種.
・在来種と外来種の雑種がかなり生まれていて,「花の付け根が反り返っている」として外来種とされたものの,75〜95%がこの雑種.
・外来種が増加しているのは,在来種を「駆逐」しているためではなく,在来種が繁殖する環境が減ってきたことが主な理由.
(在来種は同種のタンポポ群と昆虫による受粉が必要=「里山」環境が必要なのに対し,外来種は自家受粉でも種を作れる)
タンポポを詠んだ短歌(古今短歌歳時記より)
古今短歌歳時記では,タンポポを概説した中に,「蕪村はたんぽぽを好きだったようである」として次の和詩を紹介していました.
春風馬堤曲(与謝蕪村)
○たんぽぽ花咲けり 三々五々 五々は黄に 三々は白し 記得す 去年此路よりす
○憐れみとる蒲公茎短くして乳を浥(あま)せり
鬼怒川の冬のつつみに蒲公英の霜にさやらくきたたず咲く 長塚節 長塚節歌集
いつしかに春の名残となりにけり昆布干場のたんぽぽの花 北原白秋 桐の花
多摩川の砂にたんぽぽ咲くころはわれにもおもふひとのあれかし 若山牧水 路上
目のまへにふんわりとたんぽぽのわた毛くづれず丸さを保つ 長澤美津 往来
たんぽぽも藜(あかざ)も潮に硏がれゐて痩せつつ海に傾ける路地 生方たつゑ 紋章の詩
たんぽぽは絮(わた)となりて風に舞ふ亡き友恋ふる忍路(おしょろ)の浜に 木俣修 昏々明々
雨霽(は)れてつよき陽のなかたんぽぽの花のつむ葉のしなしなと揺る 田谷鋭 乳鏡
用はてて再び石となりゆける臼のめぐりのたんぽぽの花 馬場あき子 雪鬼華麗
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