ケイトウを見かけたのをきっかけに,
ナデシコ目 Caryophyllales, Amaranthoideae亜科, ヒユ科 Amaranthaceae
の植物を取りあげています.
(1)ケイトウ(2)センニチコウとその仲間たち(3)イノコズチ(イニコヅチ)(4)ヒユ/アマランサス(5)ビート/テンサイ/フダンソウ/チャード(6)アカザ.
今日は(7)ホウレンソウ.
最も栄養バランスに優れた野菜の一つで,誰もが知る代表的な緑黄色野菜.このホウレンソウが,あまりなじみのない「ヒユ科」の植物というのがやや驚きと言っていいかもしれません.
ホウレンソウについては,本ブログで既に取りあげているので,
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/11/07/044254
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/11/08/025515
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/11/09/033005
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/11/10/002909
今回はそのまとめといった趣の内容になります.
▽語源
漢字で菠薐草.
語源については二つの説が並立していますが,いずれも国・地域の名前ということでは一致しています.
1. ペルシャ(菠薐国)から中国に伝わったためについた名前.(ニッポニカ)
2. 「ほうれん(菠薐)」は,唐宋音で,ネパールの地名.(日本国語大辞典)
(菠薐は音を表す言葉で漢字の意味はない 「菠」:形声。艸+音符波ハ 「薐」:形声。艸+音符稜リヨウ⇂ロウ。)
英語ではspinach[spínɪtʃ(米国英語), spínɪdʒ(英国英語)]
「古フランス語espinache;おそらく,ペルシャ語のaspānāḵ⇒アラビア語を経由したことばから Middle English: probably from Old French espinache, via Arabic from Persian aspānāḵ.」(ただし,この説はかなり疑わしいとの意見も)
▽起源と伝播/東洋種(在来種)と西洋種
ニッポニカよりホウレンソウとは - コトバンク
起源地はイラン(ペルシア地域).
⇒西へ:スペイン(11世紀),イギリス(14世紀),フランス(16世紀),アメリカ(1806年).
⇨日本(西洋種)
文久(ぶんきゅう)年間(1861~1864)にフランスから,明治期アメリカから :はじめ好まれず---
⇒東へ:中国(漢代?/唐代にネパールを経て?),
⇨日本(東洋種/在来種)
16世紀頃中国から:「唐菜」と記載がある./『多識篇(たしきへん)』(1612)
http://www.japan-soil.net/BOOKLET/TK25/TK25_A4.pdf
▽東洋種(在来種)・西洋種の特性と品種改良.F1品種の誕生
https://www.keisen.ac.jp/extension/research/gardening/pdf/e3_fujita.pdf
西洋種:
・日本人には好まれなかった=葉肉が厚く,土臭い.
・ヨーロッパでの品種改良によって”晩抽性(抽苔/とう立ち が遅い)”の品種となっていた.=春まき,夏まきが可能(北海道・東北では普及)
東洋種(在来種):
・日本人の嗜好に合った=葉肉が薄く、歯切れがよく、土臭も少ない.
・とう立ちが早い=主に秋まきで生育
https://www.keisen.ac.jp/extension/research/gardening/pdf/e3_fujita.pdf
⇒交配して得られた F1種全盛の時代へ
(F1種とは,それぞれ選ばれた特定の形質を安定して有している親系統同士を交配して採れた種子.雑種強勢の性質を持つため生育が盛んで栽培が安定)
・西洋種と東洋種の開花を合わせる方法を見いだし(種の低温処理),東洋種の形態と食味、西洋種の晩抽性を兼備したF 1 「深緑」の開発に成功 以後F1全盛の時代へ(1960年代以降)
・ホウレンソウに多い「べと病」に抵抗性を持ち(西洋種から受け継ぐ)同時に土壌病害に強い(東洋種から受け継ぐ)F1品種の開発も.特に抗「ベと病」の性質は,殺菌剤無しでの生育を可能とした点で画期的であった.
https://www.sakata100th.jp/episode/04/
▽多彩な料理に使え,彩りも鮮やか.通年供給されている.そして何よりも栄養豊富なホウレンソウは,日本人の食生活に欠かせない野菜となっています.
・ホウレンソウは「指定野菜」14種のうちの一つ:「消費量が多く国民生活にとって重要な野菜として“野菜生産出荷安定法”で定められた野菜」 統計局ホームページ/統計FAQ 07A-Q06 野菜の収穫量及び出荷量
・野菜摂取量ランキング第6位(少し古いデータですが:日本人がたくさん食べている野菜は? |報道発表資料|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000096137.pdf)
・「日本人が沢山食べている野菜トップテン」10種の野菜の栄養素20種を比較してみると
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ホウレンソウは,ビタミン,ミネラル,食物繊維の多くで,1位.
2位,3位のものも多く,比較した20種の栄養素のうち,18種で,トップ3に入っていました.