春は花の季節ですが,野の花の代表といえば,スミレ.
先日,鎌倉源氏山を散策したときにも,何回か出会いました.多分,タチツボスミレ.
(タチツボスミレ https://buna.info/article/2224/
薄い紫色の花をたくさんつけている株があれば、まずタチツボスミレと見てよい。図鑑と照らし合わせて、自信が持てなければ、葉のつけねにある托葉(たくよう)というものをチェックするとよい。この托葉が櫛の歯状に切れ込んでいることを見れば、まず間違いない。さらに雌しべの先(柱頭)をルーペで見て、ほぼ真っすぐの棒状であることが確認できればさらに自信が持てる。)
スミレの仲間(キントラノオ目,スミレ科,スミレ属)は日本では約55種,世界では約400種知られているとのこと(ニッポニカ https://kotobank.jp/word/スミレ-845697 )
世界中で愛されている花で,ご存じのようにガーデニングの定番,パンジー,ビオラもスミレ属.
文献的には:
ヨーロッパで最初に記録されたのは,デーメーテール賛歌(ニッポニカ https://kotobank.jp/word/スミレ-845697 )
ギリシャ神話のスミレは,ニオイスミレ(Viola odorata)と考えられています.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニオイスミレ
デーメーテールへの讃歌(四つのギリシャ神話 岩波文庫 より)
黄金の剣を振るい輝く実りをもたらすデーメーテールのもとを離れ,娘神(*)はオーケアノスの懐(ふところ)深い娘たち(**)と,薔薇とサフランと美しい菫の花を摘みながら,柔らかな草原で戯れていた.
*ペルセポネー
**讃歌の最後尾で名前が挙げられている.大部分が山や木や水の精(ニンフ).
日本で最初に記録されたのは万葉集.
以下,スミレを詠んだ歌を古今短歌和歌集から.
菫を詠んだ短歌
春の野にすみれ摘みにと来し(こし)われそ野を懐かしみ一夜(ひとよ)寝にける 山部赤人 万葉集八 一四二四
山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり 髙田女王(たかだのおおおきみ) 万葉集八 一四四四
すみれ咲く横野のつばな生ひぬれば思ひ思ひに人かよふかな 西行 山家集・春 一〇一五
浅茅原ゆくへも知らぬ野辺に出でてふるさと人はすみれ摘みけり 源実朝 金槐集・春 四二
すみれ咲くひばりの床にやどかりて野をなつかしみくらす春かな 藤原定家 拾遺愚草・中
いざ子供山辺に行かむ菫見に明日さえ散らばいかにせむとか 良寛 良寛歌集・春
君が手につみし菫の百菫(ももすみれ)花紫の一たばねはや 正岡子規 子規歌集
十九(つづ)のわれすでに菫を白く見し水はやつれぬはかなかるべき 与謝野晶子 みだれ髪
(俵万智 訳 恋愛は色なきすみれ水のない川と思った十九の私
https://merry1109.exblog.jp/21623712/)
美しく癒えたる汝とともなひて花残し居る菫に屈む 近藤芳美 早春歌
どっとかしいで終わつてしまう一生をえんざんすみれの種がはじける 鳥海昭子 花いちもんめ
エンザンスミレ https://ja.wikipedia.org/wiki/エイザンスミレ