「ペルセポネーの略奪」としてよく知られているギリシャ神話.
The Rape of Persephone, Greek fresco from Macedonian tomb C4th B.C., Museum of the Royal Tombs of Aigai(RAPE OF PERSEPHONE - Greek Mythology)
多くの古代ギリシャ/ローマの著作に記載されているそうですが,「ホメーロス風讃歌」と「変身物語」には,詳しく描かれています.
ギリシャ神話を古代ギリシャ/ローマの著作や美術作品にさかのぼって解説している「Theoi Project」のサイトによれば,
http://www.theoi.com/Khthonios/HaidesPersephone1.html
http://www.theoi.com/Khthonios/HaidesPersephone2.html
この物語は,三つ(変身物語)〜四つ(ホメーロス風讃歌)の章に分けられます.
Ⅰ.「ハーデース(プルートー/プルート)がペルセポネー(プロスペリナ)を略奪する」
Ⅱ.「母の女神デーメーテール(ケレース/セレス)がペルセポネーを捜して諸国を放浪する」
Ⅲ.「ペルセポネーが帰還する」
Ⅳ.(ホメーロス風讃歌のみ)「デーメーテールによる農業と秘儀の伝授」
この様に章立てしてみると,この物語は,ハーデースによるペルセポネーの略奪から始まるものの,主題は別のところに.
主役は農業と大地の女神デーメーテール.
ペルセポネーに対する母の思いが描かれます.
そして,地中に埋められた穀物の種子(ペルセポネー)を日の光に連れ戻すという寓話となっています(トマス・ブルフィンチ ギリシア・ローマ神話).
実際,ホメーロス風讃歌で,この物語が描かれている部分は「デーメーテール讃歌」と呼ばれる章.
訳本を買うか,英語でのあらすじを読み切るしかないかと思っていたところ,日本語のウェブサイトにも,この「デーメーテール讃歌」のあらすじがアップされていました.
今日は心の底からウィキペディアに感謝して,以下に引用させて頂きますが----
その前に,
「デーメーテール讃歌」導入部分
かしこい神,髪うるわしきデメテルと,踝(くるぶし)ほそきその姫の物語をはじめよう.
はたたがみの見はるかすゼウスの許しにより,ハデス王が姫を掠め去った.
姫は,黄金づくりの太刀をはき,よき実を恵むデメテルのそばを離れて,胸ふくよかなオケアノス娘たちと戯れ遊び,また花を摘んでいた.
やわらかな牧のほとりで,薔薇,サフラン,さては美しい菫(すみれ)をもとめて----(小川政恭訳,「ホメロスの讃歌集」から)
デーメーテール讃歌概要エレウシスの秘儀 - Wikipedia
( Ⅰ )
草原で花を摘んでいたペルセポネーは,ゼウスの企みに従ったハーデースによって連れ去られる.
娘の叫び声がデーメーテールに届き,母神は松明を掲げて大地をさまよい歩いた.10日目に,ヘカテーがデーメーテールの前に現れ,何者かがペルセポネーを奪い去ったと告げた.デーメーテールはヘカテーを伴ってヘーリオスのもとを訪れ,ペルセポネーをさらったのはゼウスの許しを得たハーデースだということを知る(第1行 - 第90行).
( Ⅱ )
怒ったデーメーテールはオリュンポスから離れ,老婆に身をやつして地上の街や畑を巡り歩いた.
女神は放浪の末にエレウシスにたどり着き,ケレオスの館に迎えられる.館ではケレオスとその妃メタネイラの子供デーモポーンが誕生しており,デーメーテールはデーモポーンの養育を引き受ける.女神は子供を不老不死にしようとして,昼にはアンブロシアを肌にすり込んで甘い息を吹きかけ,夜には両親に気づかれないように火の中に埋めて育てた.
ところが,子供の神にも似た成長ぶりを不審に思ったメタネイラがこれを覗き見して叫び声を上げたため,デーメーテールは腹を立てて女神の姿を現し,アクロポリスの麓に神殿と祭壇を作るように命じた.ケレオスが言われたとおりにすると,デーメーテールは神殿にこもった(第91行 - 第304行).
( Ⅲ )
穀物の女神が姿を隠したために,大地は実りを失った.
ゼウスは女神の怒りを宥めようと,イーリスをはじめとして神々を遣わしたが,デーメーテールは一切聞き入れなかった.やむなくゼウスはヘルメースを冥府に遣わし,ハーデースを説得してペルセポネーを地上に連れ戻すように命じた.
こうして,ついに母娘は再会を果たした.
しかし,ハーデースはペルセポネーを還す前にザクロの種を食べさせていたため,冥府の食べ物を口にしたことにより,ペルセポネーは1年のうち三分の一は冥界で過ごし,残りの三分の二は地上で暮らすこととなった(第305行 - 第469行).
( Ⅳ )
大地は実りを取り戻した.
デーメーテールはトリプトレモス,ディオクレース,エウモルポス,ケレオスに祭儀の執行を教え,またトリプトレモス,ポリュクセイノス,ディオクレースには秘儀を明かすと,ペルセポネーとともにオリュンポスに赴き,再び神々の列に加わった(第470行 - 第495行).