スズラン.
愛らしい花ですが,ビックリするのはその根を見た時.
一度でも栽培したことのある方なら,同じように思われたのでは?
スズランとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版
http://www.okadanouen.com/zukan/doitusuzuran.html
根付きのスズランギャザリング実験 | アトリエ華もみじ | ブリコラージュフラワー
万葉集「山菅」の候補とされているヤブラン,ジャノヒゲがキジカクシ科スズラン亜科と知って,なるほど!と思いました.
ヤブラン,ジャノヒゲ,さらにはオモト,それぞれの根は,スズラン同様,皆立派なものです.
https://www.tokyo-shoyaku.com/wx/pm.php?xid=131
万葉集で数多く詠まれている山菅(ヤマスゲ/ヤマスガ)は花でも実でも,そして葉でもなく,根が注目されている!
「菅の根(スガノネ)」と詠まれている場合もこの山菅の根のこと.「ながき」「乱る」の枕詞としても用いられています.
菅の根の(読み)スガノネノ
デジタル大辞泉の解説
[枕]
1 スゲの根は長く伸びて分かれ乱れるところから、「ながき」「乱る」にかかる。
「―長き春日(はるひ)を恋ひ渡るかも」〈万・一九二一〉
2 「ね」の同音から、「ねもころ」にかかる。
「―ねもころ君が結びたるわが紐(ひも)の緒を」〈万・二四七三〉
[補説]「根を絶つ」の意から「絶ゆ」を起こす序詞の一部にも用いられた。
「かきつはた佐紀沢に生ふる菅の根の絶ゆとや君が見えぬこのころ」〈万・三〇五二〉
山菅は「山に生えているスゲの類」とする説がかなり有力視されているようですが(日本国語大辞典),折口信夫は,「麦門冬」(原植物ジャノヒゲ/ヤブラン)を山菅の現代語訳としています.
このブログで,だらだらと何日間か山菅とつきあううちに,私も,山菅=麦門冬が正しいと思えてきました.
根の形状が決め手です.
麦門冬:
ジャノヒゲは、生薬「麦門冬」の原植物で、その根の膨らんだ部分が生薬として使用され、「麦門冬湯」などの処方に配合されます。日本、中国では、ジャノヒゲの根が使用されますが、韓国では原植物が異なり、ヤブラン、コヤブランの根が用いられます。
生薬の知識があったかどうかは定かではありませんが,根を見て,その有様を歌に詠み込んでいった万葉人.現代人は,この観察眼と感性をなかなか持ちえないのでは?
咲く花は,移ろふ時あり,あしひきの,山菅(やますが)の根し,長くはありけり 大伴家持 巻二十 4484
(咲いている花は,衰えて褪せてしまう時がある.ああ山の麦門冬の根は,(人もいふ如く)長々としている.人の心を惹くものは,さうして脆くなってしまふ. 折口信夫「万葉集」)
あしひきの岩根こごしみ菅根(すがのね)を引かば難みと標(しめ)のみそ結ふ 大伴家持 万葉集巻三,414
(山の岩がごつごつとしているので,寄りつけないまでに辺りに生えている麦門冬の根が,引こうとすると,引きにくかろうというので,只自分の物だ,というしるし許りを付けておくことだ. 折口信夫「万葉集」)