大根基本情報6 大根おろしの歴史/大根の栄養 大根おろしを文献で遡ることができるのは江戸時代.それ以前の鎌倉・室町時代になると陶器の皿の中央に節目をつけたおろし器が出てきたそうです.微妙な味・食感・香り,食後のさわやかさは,鎌倉時代以前から楽しまれてきたもののようです.このように生で沢山食べることができる大根は,必要な栄養素の摂取に役立つ野菜ですが,栄養という観点からは,忘れてはいけないのが大根葉.ほうれん草を上回るカルシウム,鉄----.

冬のこの時期,おでんの大根が最も美味しい季節ですが,大根料理で最もシンプルなひと皿は大根おろし

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たかが? されど? 実は奥が深い「大根おろし」 | ガジェット通信 GetNews



この微妙な味・食感・香り,食後のさわやかさ,五臓六腑が元気になったような感覚は,他の食材・料理からは得られないもの.

日本固有の味ですよね.海外の出たときに恋しくなる料理は各人それぞれあまたある中で,大根おろしはかなりの日本人が共通して食べたくなる一品ではないでしょうか.

そして,大根おろしなら,単位重量あたりに含まれる栄養素の量が今ひとつの大根(後述)の弱点も十分補えます.こんなに簡単に100gでも200gでも食べられる野菜はありません.

 

大根おろしがいつ頃から食べられているのか?

文献で遡ることができるのは江戸時代.

 

俳諧西鶴大矢数(1681)第一九「生板に釘山ほととぎす 村雨大根おろしにふり雑り」(日本国語大事典)

なお,大根おろしにはおろし器の意味もあって

⇒日葡辞書(1603‐04)に,掲載されているとのこと(日本国語大事典)

大根卸(だいこおろし)とは - コトバンク

 

このおろし金,「江戸時代中期の『和漢三才図会』には、今日みるような銅製のおろし器が描かれている」(日本大百科全書ニッポニカ)

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おろし器(おろしき)とは - コトバンク

ニッポニカによれば,「鎌倉・室町時代になると陶器の皿の中央に節目をつけたおろし器が出てきた」とのこと.

正倉院に陶製おろし器があるとの記事がありましたが,

他の記事や正倉院御物には見当たりませんでしたので,その真偽は?)

 

鎌倉・室町時代以前から,大根おろしは食べられていると考えて良いようです.

 

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https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code00925002.html ダイコン [大根] - みんなの花図鑑(掲載数:3,406件)

 

2.大根の栄養

日本で独自の分化が行われ,日本人が最も沢山食べてきた野菜,大根ですが,栄養学的に見たときには,取り立てて注目するものはほとんどないといって良いでしょう.

 

しかし,上記大根おろしの項でも記したように,生で沢山食べることができる点では圧倒的に優れた食材.大根でカリウム,ビタミンCは十分量食べることができます.

カロテンはいくら食べても補えませんが,ニンジンを少し加えるだけで十分補えます.

最下欄に日本で食べられているサラダの主役,レタスと比較した表を載せておきましたので,「どれぐらいの量食べられるか?」を念頭に置きながら,ご覧になってください.

ただ,大根の栄養素をきちんと食べるためには,大根の下ゆで,千切りの冷水あらい,おろし汁を捨てる,など,調理過程で成分を捨ててしまいがちなことに注意する必要があるでしょうね.

 

なお,栄養という観点からは,忘れてはいけないのが大根葉.

カルシウム,鉄,カロテン,葉酸,ビタミンC.十分すぎるほどの量を持っている野菜です.野菜の優等生ほうれん草を上回る成分も多い.調理法を工夫して食べるようにしたいものですね. 

 

栄養素以外によく知られているのが,大根中の消化酵素アミラーゼ.

(ジアスターゼという名前もよく使われるようですが,この名前はアミラーゼ発見時に付けられた名で,現在では酵素剤の名称として使用されています).

 

大根のアミラーゼは,唾液のアミラーゼと比較してより低いpHでも活性があるとのこと.空腹時の胃内pHでも働くことができると,愛媛県の小学生が報告しています(第54回愛媛県児童・生徒理科研究作品特別賞).

https://center.esnet.ed.jp/uploads/07shiryo/05rika/H28_2_kyouikutyou_denpun.pdf

 

ただし,熱を加えた調理法ではこの酵素の活躍を期待することができないと思われます.同種のラディッシュ由来酵素では70℃でほぼ失活するとの報告があるので.

http://www.aensiweb.com/old/jasr/jasr/2009/2225-2233.pdf

 

大根のさりげないおいしさはどこから来るのか.

おろしのさわやかな味・香りには,辛味成分として有名なイソチオシアネートが関与しているでしょう.

野菜の味については,一般的には有機酸と糖が関与していると考えられているようで,大根特有の微妙なバランスも味を決める重要な要素でしょう.

また,トマトなどに多いアミノ酸系のうまみ成分グルタミン酸,さらには加熱調理すると増加する核酸系のグアニル酸も野菜の味に重要との指摘もあります.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/45/5/45_346/_pdf/-char/ja

しかし,これらは大根にはあまり含まれていないようです.

 

味に関してはまだまだ分からない点が多々残されていると言っていいでしょう.

 

大根中の栄養素

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https://fooddb.mext.go.jp/selectFood/sel_top.pl?USER_ID=12468&MODE=0