欲望の資本主義2018(11)第10章後半  シュンペーターは書いた. 資本主義はその成功のゆえに,土台である社会を揺さぶり,自ら存続不能に陥る.社会主義へと向かう状況が『必然的』に訪れるのだ.「資本主義は,さらに多くの矛盾を生み出し,人類を滅ぼしかねない.現在起きていることについて,よりマシな理論を立てないと,人間世界の滅亡はいつか,本当にやってくるだろう」 NHKBS「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」

私たちは働く.生きるため,お金のため,社会のため.雨の日も,風の日も.

それは資本主義のルール.でも---.

 NHKBS

「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」

   世界経済のフロントランナー達が紡ぐ,お金と欲望をめぐる物語

f:id:yachikusakusaki:20180107220144j:plain

  https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html

 

欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 

欲望の資本主義2018(2) 第2章 革命の夢のあとさき

欲望の資本主義2018(3) 第3章 ショウの幕があがる時

欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半  

欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半

[以上,前編]

後編

欲望の資本主義2018(6)第6章 幻想の貨幣愛

「私たちは欲望と恐怖からできている.だから『もっともっと』となってしまうんだ 

「お金が道具ではなく,目的になってしまうんだ.お金はあらゆるものと交換可能だから,人はお金を欲望する.いつのまにか,貯めこむ事が喜びになってしまう」

欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った

 「レーガンサッチャーが革命を起こした.それまでの社会の型を破壊し,変形させたのだ.彼らは『奥徳の栄え』を引き起こす事になる.彼らは強欲を成長の原動力として解き放った」「何十億ドルも扱える投資家.彼らがどんな決定をするかが市場を動かす」 

資本主義=資本主義+社会主義? 昨日の資本主義≠今日の資本主義? 

欲望の資本主義2018(8)第8章交換だけが駆け巡る

「マクロ経済の統計を見ても,イノベーションによる生産性の上昇は認められない.われわれの測定法が間違っているのか.大げさに騒いでいるだけなのか?」「インターネットが何を生み出しているかを考えると,一つは生産者と消費者のマッチングだね.誰もが競争圧力にさらされている.GAFAを除いてね」

「『タデ食う虫も好き好き』と言うように,『価値』というのは難しい.『価格』は分かりやすいが,価値というのは謎だ」

欲望の資本主義2018(9)第9章 闇の力が目覚める時

「その昔,ルーティンワークの世界では,『搾取』されるのは体力だった.今ではイノベーションの能力だ.テクノロジーによって,ルーティーンワークは消えつつある.今度は創造力の追求が新たな義務になったのだ」 

"生産の形態・条件が社会の構造を決める.テクノロジー,そして,経済の在り方が,社会の,ひいては,人間の有り様を決める" シュンペーターマルクスの書に見いだした「闇の力」とはこれなのだ.

欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半

「働かない事は,人々を解放するのか.それとも生きる意欲を喪失させるのか」

「労働時間が短い事で,所得が減るなら,反対されるだろう.だから,代わりになる所得が必要になる」「実はニクソン大統領は,70年代のはじめベーシックインカムを施行させる寸前だった.当時は,ほとんど誰もが施行されることを信じきっていた」

 

第10章 ゲームは終わらない 後半

 《言葉》 

▽ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)

シュンペーターは『資本主義は生き残れるか』と尋ねられ『生き残れないだろう』と答えた.その理由は,単純に言えば官僚的なプロセスのせいで,資本主義に必要な起業家精神が失われると考えたからだ」

 

シュンペーターは書いた.「資本主義はその成功のゆえに,土台である社会を揺さぶり,自ら存続不能に陥る.社会主義へと向かう状況が『必然的』に訪れるのだ」

・ロバート・スキデルスキー(イギリス 経済学者)

「資本主義というのは,資本を蓄積する仕組みだが,それがもはや重要ではなくなった時,資本主義のシステムはなくなる.必要とされなくなり,消えるのだ」

・ウルリケ・ヘルマン(ドイツ,経済ジャーナリスト)

「資本主義は成長を生み出すけれど,残念ながら成長し続けることはできないのも事実よ」

マルクス・ガブリエル(ドイツ,哲学者)

「資本主義は,さらに多くの矛盾を生み出し,人類を滅ぼしかねない.現在起きていることについて,よりマシな理論を立てないと,人間世界の滅亡はいつか,本当にやってくるだろう」

・ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)

「問題を解決するための魔法の杖などない.手っ取り早い解決策にダマされてはならない」

・トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

シュンペーターは言い当てていた.『資本主義は批判を受け入れられる唯一のシステムだ』とね.この世界はどうにか機能している.

でも,それがなぜ機能しているのか,実はよく分からない」

 

《内容の記録》

第10章 ゲームは終わらない 後半

▽『資本主義は生き残れるか』『生き残れないだろう』シュンペーター

f:id:yachikusakusaki:20180107221255j:plain

https://nestoravendano.wordpress.com/page/53/?app-download=ios  https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html

ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)

f:id:yachikusakusaki:20180107221727j:plain

 https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html 

シュンペーターは『資本主義は生き残れるか』と尋ねられ『生き残れないだろう』と答えた.その理由は,単純に言えば官僚的なプロセスのせいで,資本主義に必要な起業家精神が失われると考えたからだ」

 

世界を覆い尽くした資本主義.成功ゆえに失われるもの.成功ゆえに生まれる裂け目.それは何なのか?

 

▽競争なき資本主義?競争なき富の固定化.

ウルリケ・ヘルマン(ドイツ,経済ジャーナリスト)

f:id:yachikusakusaki:20180108223136j:plain

 https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html 

「資本主義の世界では,巨大コンツェルンが原料から販路まで全てをコントロールしている.コンツェルン同士は競争関係になく,時に協力関係すら築いている.

どんな産業でも,売上げの大半が数社の巨大企業に偏っている.『競争』というものは,実際には存在していないのよ」

「例えばある経営者が複数の企業を渡りある事とが多いでしょう.あるいは,執行役員の後に監査役になったりね.さらに複数の企業の監査役を兼任することもある.監査役同士が同大学の旧知の仲だったりもする.そうした状況では,競争原理など働くはずがないわ.いわば,『村』のような狭いところで意志決定がなされる.『エリートのお友達集団』なのよ」

 

ジョセフ・スティングリッツ(アメリカ 経済学者)

f:id:yachikusakusaki:20180128002738j:plain

https://ototoy.jp/news/83701

シリコンバレーで働く人たちの多くは,創造性を発揮することに,やりがいを感じているようだが,公平を期すために言うと,彼らは税金を逃れている.彼らは,税金回避にとても熱心で,世界各国で課税を逃れている.タックスヘイブンを利用し,世界中で得た利益を,税率の低い地域に移しているのだ」

 

▽欲望からの解放?

シュンペーターは書いた.

「資本主義はその成功のゆえに,土台である社会を揺さぶり,自ら存続不能に陥る.社会主義へと向かう状況が『必然的』に訪れるのだ」

 

ロバート・スキデルスキー(イギリス 経済学者)

f:id:yachikusakusaki:20180202003018j:plain

Robert Skidelsky, Baron Skidelsky - Wikipedia

「資本主義というのは,資本を蓄積する仕組みだが,それがもはや重要ではなくなった時,資本主義のシステムはなくなる.必要とされなくなり,消えるのだ.

それは,政府が経済の所有と管理を行う社会主義ではなく,もうけるというモチベーションが重要じゃなくなる世界のことだ」

 

▽光を追い求めるうちに,闇を忘れ去ったのか.

ウルリケ・ヘルマン(ドイツ,経済ジャーナリスト)

「資本主義が非常に魅力あるシステムなのは明らかよ.人類が初めて発明した経済成長を生み出すシステムだものね.でも,資本主義は成長を生み出すけれど,残念ながら成長し続けることはできないのも事実よ.

いずれ,資本主義が崩壊するのが先か,私たちが資本主義から抜け出る道を見つけるのが先か,どちらかね」

 

マルクス・ガブリエル(ドイツ,哲学者)

f:id:yachikusakusaki:20180110000831j:plain

https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html 

「かつて私たちは資本主義の代替案があるだろうかと考えていた.モノと生産と消費に関する理論が沢山あった.だが,その全てが誤っていたことが,技術の進歩によって証明された.

資本主義は,さらに多くの矛盾を生み出し,人類を滅ぼしかねない.現在起きていることについて,よりマシな理論を立てないと,人間世界の滅亡はいつか,本当にやってくるだろう」

 

 

ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)

「今の世界に名前を与えるならば,まさに『デジタル社会』だ.モノや機械を相手にする世界から,人を相手にする世界に移っていくはずだった.ようやく人間的な世界が訪れるかもしれない,とね.

だが,『デジタル世界』は,そうじゃなかった.

問題を解決するための魔法の杖などない.手っ取り早い解決策にダマされてはならない」

 

光を追い求めるうちに,闇を忘れ去ったのか.まるでリンゴを高く売ることに夢中になって,リンゴの味を忘れたかのように.

 

 

▽資本主義はある程度までは機能するが,完璧ではない.

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

f:id:yachikusakusaki:20180108223303j:plain

 https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html 

シュンペーターは言い当てていた.『資本主義は批判を受け入れられる唯一のシステムだ』とね.この世界はどうにか機能している.

でも,それがなぜ機能しているのか,実はよく分からない.

物理も同じだ.現象の細部まで全てを説明できる完璧な理論はない.資本主義はある程度までは機能するが,完璧ではないということにいつも注意を払うべきだ.

現在の世界について確実なことは誰にも分からないのだ」

 

数字のゲームから,誰も逃れられない.

だが,ゲームにはルールがある.ルールを決めるのは,時代の私たちの欲望.

今夜もルールは書き換えられていく.

欲望の資本主義.

 

-了-

 

 

欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 

欲望の資本主義2018(2) 第2章 革命の夢のあとさき

欲望の資本主義2018(3) 第3章 ショウの幕があがる時

欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半  

欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半

[以上,前編]

後編

欲望の資本主義2018(6)第6章 幻想の貨幣愛

欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った

欲望の資本主義2018(8)第8章交換だけが駆け巡る

欲望の資本主義2018(9)第9章 闇の力が目覚める時

欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半

欲望の資本主義2018(11)第10章ゲームは終わらない 後半