欲望の資本主義2018(8)第8章 「マクロ経済の統計を見ても,イノベーションによる生産性の上昇は認められない.われわれの測定法が間違っているのか.大げさに騒いでいるだけなのか?」「インターネットが何を生み出しているかを考えると,一つは生産者と消費者のマッチングだね.誰もが競争圧力にさらされている.GAFAを除いてね」 「『タデ食う虫も好き好き』と言うように,『価値』というのは難しい.『価格』は分かりやすいが,価値というのは謎だ」 NHKBS「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」

私たちは働く.生きるため,お金のため,社会のため.雨の日も,風の日も.

それは資本主義のルール.でも---.

 NHKBS

「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」

   世界経済のフロントランナー達が紡ぐ,お金と欲望をめぐる物語

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 https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html

 

欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 

欲望の資本主義2018(2) 第2章 革命の夢のあとさき

欲望の資本主義2018(3) 第3章 ショウの幕があがる時

欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半  

欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半

[以上,前編]

後編

欲望の資本主義2018(6)第6章 幻想の貨幣愛

「私たちは欲望と恐怖からできている.だから『もっともっと』となってしまうんだ 

「お金が道具ではなく,目的になってしまうんだ.お金はあらゆるものと交換可能だから,人はお金を欲望する.いつのまにか,貯めこむ事が喜びになってしまう」

欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った

 「レーガンサッチャーが革命を起こした.それまでの社会の型を破壊し,変形させたのだ.彼らは『悪徳の栄え』を引き起こす事になる.彼らは強欲を成長の原動力として解き放った」「何十億ドルも扱える投資家.彼らがどんな決定をするかが市場を動かす」 資本主義=資本主義+社会主義? 昨日の資本主義≠今日の資本主義? 

 

第8章 交換だけが駆け巡る

《言葉》

▽ジョセフ・スティングリッツ(アメリカ 経済学者)

「マクロ経済の統計を見ても,(シリコンバレーをはじめ,アメリカで起こり続ける)イノベーションによる生産性の上昇は認められない事についてだ.なぜだろう?われわれの測定法が間違っているのか.大げさに騒いでいるだけなのか?」

「たとえば,検索エンジンの恩恵は確かに大きい.多くの人が利用しているフェイスブックを楽しむ人も多い.これらは,生活の質に影響を与えているが,統計には反映されていない」

 

▽ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)

「インターネットが何を生み出しているかを考えると,一つは生産者と消費者のマッチングだね.まさにアダム・スミスの『見えざる手』が,インターネットによって実現している」

「今の時代,誰もが競争圧力にさらされている.GAFAGoogle Apple Facebook Amazon)を除いてね.GAFAは,自分たち以外の皆をより強い競争社会に放り込む一方で,自分らは競争に脅かされる事がない」

 

▽トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

「『タデ食う虫も好き好き』と言うように,『価値Value』というのは難しい.『価格Price』は分かりやすいが,価値というのは謎だ」

「お金によって,価格を比べる事ができるようになる.それは,順序づけることが出来ると言う事だ.でも価値は---,例えばトマトよりリンゴが『どれぐらい』好きかを測る事はできない」 

 

《内容の記録》

第8章 交換だけが駆け巡る

▽見えない「富」

安田洋佑(日本 経済学者)

シリコンバレーをはじめ,アメリカで起こり続けるイノベーションを,どう見ていますか?」

ジョセフ・スティングリッツ(アメリカ 経済学者)

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https://ototoy.jp/news/83701

「彼らは社会の転換を促すものだと言うね.まあ,イノベーションのおかげで,億万長者になった人たちにとっては,転換を促すものだろう.大きな影響を受けた人たちが確かにいるわけだ.

経済学者の間で,幾つかの点が議論されている.その一つが,マクロ経済の統計を見ても,イノベーションによる生産性の上昇は認められない事についてだ.なぜだろう?われわれの測定法が間違っているのか.大げさに騒いでいるだけなのか?」

 

▽インターネットは新たな「見えざる手」?

ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)

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「インターネットが何を生み出しているかを考えると,一つは生産者と消費者のマッチングだね.AirbnbUberなどの有名なプラットフォームに見られるように,生産者と消費者をマッチングさせる市場の機能を効率化している.需要と供給の法則を強化している.まさにアダム・スミスの『見えざる手』が,インターネットによって実現している.

今の時代,誰もが競争圧力にさらされている.GAFAGoogle Apple Facebook Amazon)を除いてね.GAFAは,自分たち以外の皆をより強い競争社会に放り込む一方で,自分らは競争に脅かされる事がない.

インターネット世界の巨大企業グーグル,アップル,フェイスブック---,他者には競争圧力をかけながら,自らは競争を回避できるわけだ.

私がインターネットの世界についてまず言いたいことだ」

 

▽私たちを駆り立てる新たな価値

ジョセフ・スティングリッツ(アメリカ 経済学者)

「たとえば,検索エンジンの恩恵は確かに大きい.多くの人が利用しているフェイスブックを楽しむ人も多い.これらは,生活の質に影響を与えているが,統計には反映されていない.

しかし,電気やDNAに比べて,どれほど重要かという点について,経済学者の間で議論が尽きない.

イノベーションを生む側にとっては,皆の暮らしに影響を与える事は,喜びだろうし,それは当然だ.

しかし,他人に24時間追い立てられる事は,それほど幸せな事かな」

 

▽価値の交換は幻か?

経済における価値.それは何なのか?

何が価値を決めるのか?

なぜそれに価値を見いだすのか?

 

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

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「『タデ食う虫も好き好きBeauty is in the eye of the beholder』と言うように,『価値Value』というのは難しい.『価格Price』は分かりやすいが,価値というのは謎だ.

そもそも,『取り引きTrade』というのは不思議だよね.

ペンをあなたに売ろうとする.当然,金額の同意が必要だよね.私が10で売りたいのに,あなたが9しか出さないなら成立しない.価格には正確な同意が必要だ.だが,この時,お互いが商品に見いだす価値には差がないといけない.売り手は,ペンの価値が価格より低くないと売らないよね.一方,買い手にとっては,ペンの価値が価格より高いから買うわけだよね」

 

そもそも,お金とモノを交換できるのはなぜ?

マルクスは,「交換」に神秘を発見した.

 

“商品が貨幣になる命がけの跳躍”

 資本主義の世界に潜む謎

 

トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ

「お金によって,価格を比べる事ができるようになる.それは,順序づけることが出来ると言う事だ.

でも価値は---,例えばトマトよりリンゴが『どれぐらい』好きかを測る事はできない.リンゴの方が,トマトより2倍好き?4倍好き?100倍好き?あなたの父親より母親が好きか?父親と母親の価値を比べる事なんてできないよね.

価値は主観的.価格は客観的だ.人々は『価値と価格の関係』を理解しようとずっともがいてきたが,このダイナミズムについて明快に答えるのは困難だ」

 

価値を交換し続けるゲームの中で,私たちは踊り続ける.

 

 

欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 

欲望の資本主義2018(2) 第2章 革命の夢のあとさき

欲望の資本主義2018(3) 第3章 ショウの幕があがる時

欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半  

欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半

[以上,前編]

後編

欲望の資本主義2018(6)第6章 幻想の貨幣愛

欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った

欲望の資本主義2018(8)第8章交換だけが駆け巡る

欲望の資本主義2018(9)第9章 闇の力が目覚める時

欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半

欲望の資本主義2018(11)第10章ゲームは終わらない 後半