私たちは働く.生きるため,お金のため,社会のため.雨の日も,風の日も.
それは資本主義のルール.でも---.
NHKBS
「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」
世界経済のフロントランナー達が紡ぐ,お金と欲望をめぐる物語
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html
欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半
欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半
[以上,前編]
後編
「私たちは欲望と恐怖からできている.だから『もっともっと』となってしまうんだ」
「お金が道具ではなく,目的になってしまうんだ.お金はあらゆるものと交換可能だから,人はお金を欲望する.いつのまにか,貯めこむ事が喜びになってしまう」
第7章 二つの世界を欲望が覆った
《言葉》
▽ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)
「1980年代----.興味深い事件が起きた.経済が危機に直面していた時代.レーガンとサッチャーが革命を起こした.
それまでの社会の型を破壊し,変形させたのだ.彼らは『悪徳の栄え』を引き起こす事になる.彼らは強欲を成長の原動力として解き放った」
「レーガンが唱えた『トリクルダウン理論』を覚えているかい?彼は,社会の上の富は,下に滴り落ちると言ったが,全く違った」
▽ジョナサン・ストラル(アメリカ ベンチャー投資家)
「何十億ドルも扱える投資家.彼らがどんな決定をするかが市場を動かす.
銀行員と政治家の相互関係.それが資本主義を動かすわけだ」
▽トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「同様に,資本主義に力をエネルギーを与えているのは共産主義の存在であり,それが今は欠けているのかもしれないね」
マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)
「私たちが,『資本主義』と呼んでいるものは---,もちろんこの言葉の意味は200年間で変化してきた.なぜなら,私たちが資本主義として,その特徴を説明しようとしているシステム自体が,変化し続けて来たからだ」
《内容の記録》
第7章 二つの世界を欲望が覆った
▽欲望の解放がルールを変えた.解放された市場の力.
西の資本主義,東の社会主義.
当時,世界は二つに分かれていた.巨大な二つの力の均衡.
その頃西の世界に現れた2人の指導者.ロナルド・レーガン(在任期間 1981-1989).マーガレット・サッチャー(在任期間 1978-1990).
ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)
「あれは1980年代----.興味深い事件が起きた.経済が危機に直面していた時代.レーガンとサッチャーが革命を起こした.『生産にこだわる時代ではない』『ポスト物質主義が到来する』.そんな考えは誤りなんだと彼らは認識した.大きな経済革命が不可欠だと.それまでの社会の型を破壊し,変形させたのだ.彼らは『悪徳の栄え』を引き起こす事になる.
彼らは強欲を成長の原動力として解き放った」
ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)
「レーガンはトランプにとって偉大なお手本であり,トランプがやろうとしている富裕層への減税と軍事費の拡大,それは,まさにレーガンと同じことをしてるのよ」
歴史は繰り返す.悲劇として?喜劇として?
ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)
「1980年代以降の資本主義は,工業の黄金時代だった.50-60年代とは変わってしまった.
社員や労働者を切り離していく中に新たな価値を見いだしたのだ.
かっては大企業が労働者たちを守ることに組織としての大きな価値を置いていたのに,それを捨て去っていったのだ.
レーガンとサッチャーが80年代に行った革命で,市場が開放され,ウォール街のマネーのパワーが解き放たれた.
この時期にウオール街で欲しいままに振る舞った『乗っ取り屋』たちは,様々な企業を買い占め,分割して売り払った.オリバー・ストーンの『ウォールストリート』で,実に良く描かれているよ.事業に極めて疎い人間が,企業の価値をバラバラにしてしまった.
これが,新しい金融資本主義の動きの基礎となっている」
▽巨大マネーがさらなるマネーを引き寄せる.富は滴り落ちなかった.
資本の増殖を求めて,バーチャルな価値が行き交い,増殖する現場.そこで見えた資本主義のリアル.
ジョナサン・ストラル(アメリカ ベンチャー投資家)
「何十億ドルも扱える投資家.彼らがどんな決定をするかが市場を動かす.家で少数の株を買う人は,市場を動かさない.『200万株買いたい』『数十億ドルする会社を買いたい』ソフトバンクの株を数十億ドル分買いたいと言うような人だ.
銀行員と政治家の相互関係.それが資本主義を動かすわけだ.
政府が銀行からお金を借りる事を,金融界は基本的に断ることはない.これが,現代社会の基盤になっている.いわばIPモルガンなどの大銀行は,連邦準備銀行の資金を利用できるわけだ.政府にお金を貸し,利子を取れるような企業は他にないよね.
大きなパワーだ.
政府と銀行の関係は,多大に共生する生物のようだ」
ルールを手にし,圧倒的なパワーと,巨大なリターンを求めるウォール街.
掲げてきたのは,「自由な」取り引き.
だが---.
ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)
「レーガンが唱えた『トリクルダウン理論』を覚えているかい?彼は,社会の上の富は,下に滴り落ちると言ったが,全く違った.
とても寛容---,というより,あまりに楽観的な考えだった.もともと富を持っている人の手に富は残ってしまった」
富は滴り落ちなかった.
東西冷戦の終結.
ふくれあがる資本の運動.
勢いは止まらなかった.
加速化するグローバリゼーション.
▽変化はいつもJカーブ
トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「物事が良い状態になるには,必ず,悪い状態の時にエネルギーを蓄えているように見える.これは,資本主義と共産主義の間でシステムが変わるときにもそうだったと思うね.
90年代のはじめに,私は,そんな事を考えはじめていた.
当時,チェコは経済のシステムを変えようとしていた.その際,変化はこのように(停滞や下落なく,上昇方向に)進むと考えたのだが,それは間違いで,実際はJカーブで描かれた.
そこで,思い出したのが,スラブ民話に出てくる,『死の水』と『生の水』だ.知ってるかな?」
マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)「いや」
「誰かが,死んだり,瀕死の状態になったりしたとき,その人を生き返らせるためには,まず,『死の水』をかける.すると全ての関節が外れる.その後に『生の水』をかけると,生き返る.『生の水』だけでは,効かないのだ」
▽資本主義=資本主義+社会主義?
トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「同様に,資本主義に力をエネルギーを与えているのは共産主義の存在であり,それが今は欠けているのかもしれないね」
マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)「まさにそうだね」
トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「資本主義を考えるとき,共産主義と比べるのは,実はとても困難だ.もちろん,他のシステムと比較してもいいのだが.残念ながら,この二つが何十年かの間,実際に並存していたのでね.
資本主義の社会では,共産主義的な実験は許されるだろう.
もし私が,お金もいらないし,銀行も携帯電話も紙も要らないと決めたら,実行は可能だ.実際にドイツの美しい森の中に行って,ジャガイモを育てて--.私たちを止める人はいない.それどころか,興味を持って『頑張れ』と応援してくれるはずだ.
でも,その逆は絶対に機能しない.共産主義は,資本主義的実験を許さない」
▽昨日の資本主義≠今日の資本主義?
マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)
「私たちが,『資本主義』と呼んでいるものは---,もちろんこの言葉の意味は200年間で変化してきた.なぜなら,私たちが資本主義として,その特徴を説明しようとしているシステム自体が,変化し続けて来たからだ」
トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「そうだ,シュンペーターが鋭い言葉を言っていた.『資本主義に代わりがないのは,自身が変わり続けるからだ』と.
創造と破壊のスピードは上がり続ける.
欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半
欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半
[以上,前編]
後編
欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った
欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半
欲望の資本主義2018(11)第10章ゲームは終わらない 後半
了