「外国人の労働者.我々が何が出来るのか.そのことによって,自分たちも守られる.そういう発想をすることが必要」「アジア,アフリカの大都市に次々起きてくる.我々は,何が出来るのか.日本でどうコントロールするということに非常に大きく関わってきている」「日本の中から絶対になくならないので,どんどんどんどん他の場所で小さなクラスターがだんだん大きくなっていく.それを淡々とつぶしていく」押谷氏 BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」5

BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」5

2020年3月19日(木) 午後9時00分(50分),2020年3月28日(土) 午前0時20分(50分),2020年4月1日(水) 午後9時00分(50分)

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https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2416283/index.html

出演者ほか

【出演】東北大学大学院教授…押谷仁,国立環境研究所 室長…五箇公一,作家…瀬名秀明,【解説】中村幸司

 

 

対策として重要視されているのは,感染を広げてしまうクラスターと呼ばれる集団をいかに作らないか.換気の悪い密閉空間,大くに人が密集,近距離での会話や発生,というクラスターの連鎖が起きやすい場所が懸念されている.

更に,免疫力が落ちている高齢者が多い施設や,医療保険制度の狭間にある外国人労働者,生活困窮のため病院に行きにくい環境にいるなど,弱い立場にある人々に感染が広がることは,何としても食い止めなければならない.

アジアやアフリカなど,医療体制が脆弱な途上国での感染爆発も気がかりだ.

人類が免疫を持たないウイルスとの闘いに勝つためには,これから起きるであろうことについても最大限の想像力を働かせるとともに,痛みを分かち合う力を発揮しなければならないのだ.

 

押谷「今,多くの外国人労働者が,日本に住んでいて,この人たちは必ずしも医療のアクセスがよくない人たち.

こういう人たちの間で,このウイルスが広がるとですね,これは,更に見えにくくなる可能性があるので」

五箇「例えば,農業なんて,もう技能実習生が,むしろ労働力になっている現実があって,そういう,もう,全く社会構造が違ってきていると.しかも,多くの日本人は全く,それも意識しないまま,気がつけばコンビニの店員さんが,みんな外国に人になってたりとか」

押谷「これから,外国人の労働者の問題とかが出てきたときに,そこを分断するのではなくて,その人たちに,我々が何が出来るのか.そのことによって,自分たちも守られるんだと.そういう発想をすることが必要なんだと思います」

瀬名「そうですね」

押谷「このウイルスで,おそらく数週間以内に見えてくることは,南北問題です.

まず,アジアだと思います.アジアの大都市は,このウイルスを,おそらく制御できない.そうすると,次はアフリカ.アフリカも非常に経済発展をして,都市に多くの人口が,若い人口が集まっています.あのアフリカとかアジアのスラムの中では,このウイルスを制御することは絶対に出来ない.

中国の武漢状態のところが,アジア,アフリカの大都市に次々起きてくることを考えた時に,それに対して,我々は,一体,何が出来るのかと.

それは,その国,アジア,アフリカの国の人たちをどうして救うかということもありますけど,日本でこのウイルスをどうコントロールするということに非常に大きく関わってきているので」

五箇「医療といった,技術や体制といったものは,当然,北からもどんどんサポートして,南の国の爆発も抑えなきゃいけないでしょうし.だから,そこの部分の経済的な負担というものを北がどれだけ背負えるかっていうところなんですけどね」

いよいよ,感染症というパンドラの箱が,今,開き始めちゃってるという状況ですから,逆に言うと,このパンドラを閉じるためにも,今までじゃ駄目だというパラダイムのシフトに行けるかどうかが,これからの人類としての生き残り戦略にかかってくるんじゃないかと僕は思いますね」

押谷「世界は,自分の国さえよければいいという方向ずーっと向かってきたわけですね.この,こういったウイルスに対しては,そういう考え方が全く通用しないっていう,そういうことが突きつけられているんだというふうには思います.

今,日本政府は,入国制限を始めています.だけど,これを突き詰めていくと鎖国をするしかなくなる.

今回のやつは,もう,最初の頃から言ってるんですが,そういう形での封じ込めが絶対にできないウイルスです.

今,考えている,もし,日本で大きな流行が起きそうになった時,社会活動をかなり止めるような形でやるっていうのは,これも完全に封じ込められるわけではないです.

一旦,医療の限界を超えそうになったら,もう徹底的に社会活動をある程度制限して,ウイルスの拡散を止める.だけれども,そこでウイルスは完全にはなくなりません.日本の中から絶対になくならないので,また,どんどんどんどん他の場所で小さなクラスターがだんだん大きくなっていくっていうことが出てくる.

で,それを淡々とつぶしていく.

長期戦を覚悟でやっていかないと,このウイルスに対しては,全く対応ができない(⇒*)」

五箇外来種対策も同じで,地方自治体の現場の人たちに,よく尋ねられるのは,これはいつまでやればいいんですか,って聞かれちゃうんです.いや,僕はいつも『終わらないです』って言うしかない.

それは,何故なら入り続けるから.

とにかく,この日本っていうのがインポートとインバウンドで頼り続ける限り,これは終わらないんですと.

特に感染症の場合は,感染者=重症者っていう形で出れば,すぐに芽は摘めるんですが,このケースに関しては,完全に潜伏型っていう形で来る以上は終わらないんですよね.常に.それが,しかも日本一国じゃなくて,世界中で起きてるとなれば,いくら日本で潰しても,世界からまた入ってくる.っていう繰り返しになりますから」

 

続く

 

⇒*

NHKクローズアップ現代+ 2020年3月31日(火) 感染爆発の重大局面① “首都封鎖”は避けられるか」より

 感染爆発の重大局面① “首都封鎖”は避けられるか - NHK クローズアップ現代+

武田キャスター:日本はこれまで自粛要請などの対策をとっています.それによって患者数を抑えて,病院が受け入れられる上限を超えないことを目指してきたわけなんですが,では果たして,この先の見通しはどうなるのか.

大曲さんがイメージしているのは,こういうグラフになります.いくつかの山が繰り返しやってくるということなんですが,これはどういうことでしょうか.

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感染爆発の重大局面① “首都封鎖”は避けられるか - NHK クローズアップ現代+

大曲さん (国立国際医療研究センター 国際感染症センター長):対策をすれば,やがて患者さんの数は減ってきます.これが最初の山です.

ただ,この段階では住民の中に,あるいは,この国に住んでいる中で感染していない方がまだたくさん残っています.そこに例えば海外から患者さんが入ってくると,また流行が起こるということは起こり得ます.そして,私たちはまた封じ込めをします.

そして,また収まっていくと.それでもまだかかっていない方がたくさんいらっしゃれば,また,この感染症が入ってきたときには流行は起こり得るんですね.恐らく,これを繰り返すことによって多くの方が感染をして,やがて流行はおさまっていくのではないかと私自身は考えています.

 

武田:そうしますと,今行っているような自粛・対策を繰り返し行っていく必要があると.

 

大曲さん:そういうイメージを持っています.

 

武田:各国で経済活動や市民生活を制限しているという事態が続いているわけですけれども,日本では都市封鎖は起こり得るんでしょうか.

 

藤原記者:日本で目指しているのは,そういう負担をできるだけ減らして,社会活動や経済活動を完全に止めるのではなくて,集団感染,クラスター対策にポイントを絞ることで流行が大きくなるのを防ごうという方法です.これがうまく行くかどうかというのが瀬戸際なんですが,仮に感染の拡大というのが止まらないということになりますと,都市封鎖ということも想定しておく必要があります.ただ,そういった事態になりましても,日本では基本的に罰則が伴うわけではありませんので,今と同様に,私たち一人一人が感染を広げないという意識を徹底できるかというところにかかってくるといえます.

 

武田:都市封鎖のように上から制限をかけられるのか.あるいは,私たちでこの状況をまだ何とかできる可能性があるのか.大曲さんは,どういうふうにお考えになっていますか.

 

大曲さん:これは私たちの選択なのかなと思います.強烈な都市封鎖をすれば感染がおさまるのは,確かに中国の事例でも分かっています.ただ,厳しいですよね.一方で,私たちが自分たちの行動を変える.例えば,狭いスペースを避けるといったことを意識的にやれば感染が減っていく,抑えられるということも分かっています.ということで,私たちがどちらをとるのかということが大事なのかと思います.何もしなければ厳しい状況になりますし.そういう意味で,私たちが適切な行動をとれば,私は,この感染の危機はこの国であれば乗り切れるんじゃないかと,まだ日本はやれるんじゃないかと思っています.

 

武田:適切な行動というのは,いわゆる3つの密を避ける.そして,手洗い,せきエチケット.そういった細かい一人一人の意識の積み重ねでどうでしょう,先生はまだ諦めていない?

 

大曲さん:私たちは全然諦めていないです.まだ日本はやれると思います.

 

武田:ありがとうございました.