BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」6
2020年3月19日(木) 午後9時00分(50分),2020年3月28日(土) 午前0時20分(50分),2020年4月1日(水) 午後9時00分(50分)
出演者ほか
【出演】東北大学大学院教授…押谷仁,国立環境研究所 室長…五箇公一,作家…瀬名秀明,【解説】中村幸司
私たちは,こうした事態にいつまで耐えなければならないのか.
大規模なイベントも続々と中止に追い込まれている.
高校野球監督「残念ながら中止や」(映像:泣く代表選手)
株価は歴史的な暴落を見せ,乱高下が続く.
一方で,感染爆発が深刻なヨーロッパ.
イタリアでは,医療キャパシティーの限界を超え,手当が間に合わずに亡くなる人が増加.
人命を守る対策と,経済への影響のバランスをどうとるのか.
人類は難しい闘いを迫られている.
押谷「これは,非常に制御しにくいウイルスですけど,中国等の経験からですね,一方で非常に積極的な対応をすれば,確実に制御できます.
クラスターを起こさないような,人が集まる機会を極力減らすような対策をすれば,確実に減ります.
ただ,それをやると,非常に社会的,経済的な影響があると.
ただし,日本でどこかの地域が,恐らく厳しい状況になることは,十分,予想されます.そうなったときに,人工呼吸器が足りない,ICU(集中治療室)のベッドが足りない.そういうことで人が救えなくなる.そういう状況になったときに,日本人の国民性,日本人のメンタリティーからいうと,どうしてもそれを受け入れることが出来ないと思います.
そうすると,当然,そういう状況になった場合に,かなり積極的な対応をせざるを得ない.
その準備を,みんなで真剣に考えなきゃいけない,というところに来ているんだというふうには思います」
五箇「経済が,このままだと破綻してしまうと議論されている,要は,小売店も含めてそういった飲食店も含めて,商売されてる方が,もう商売にならなくなって.まあ,そういった形で経営破綻し,まさに,そこから自殺者も含めて,いろんな犠牲者も出るんじゃないかということが,一つのジレンマというか,天秤にかけられてて,だから,本当に封じ込めを本気でやる,経済が破綻すると.
天秤にかけられちゃったけど,ここで必要なのは,もう痛み分けという----まあ,きれい事になってしまいますけど,みんなでそれをシェアしていくかっていう精神に立ち返らなきゃいけなくて」
押谷「今,我々が考えている戦略はですね.全ての社会機能を止めるとうような考え方ではなくて,いかに社会機能を止めるのを最小限にしながら,このウイルスの拡散スピードをいかに制御するか.
だから,全ての人が家から出てくるな,というようなことは,我々は全然考えてないです.
例えば,ライブハウスが主催してウェブコンサートをすると.
そこにお金がつくようなシステム.それも,もう,考えてます.
そういういろんな社会機能を落とさない.経済的な損失を出来るだけ少なくするようにして,いかにこのウイルスを制御していくか.
そういうことを,我々は,もう21世紀に生きているので,もう少しスマートに考えていく必要がある.
ただ,それには,もう少し,やっぱり科学的なエビデンスを積み重ねていく必要がある.
それは,毎日のようにいろんな情報が入ってきているので,そういう中で,何を本当に制限しなきゃいけないのか.何を制限することが一番有効なのか,で,何はしていいのか.
これから,暖かくなってきますので,野外での活動は,リスクは非常に低い.ただし,ランニングは,そういう意味ではリスクはないかもしれないけれども,ランニングステーションの着替えの場所は,リスクはあるかもしれない.
だから,そういう--,その
合理的にどこが危なくてどこが安全なのか.そういう整理をすることによって,そういう不安を一つ一つ取り除いていく.
だけれども,どうしても駄目なところ,どうしても制限しないとこのウイルスの拡散を絶対に防げないというふうに判断されたところは,残念ながら,かなり制限をしないといけない.
その部分に対しては,国が十分な保障をする.あるいはその代替手段を考える.というようなことが必要なんだと思います」
瀬名「情報を少しでも共有して,なんとか,そこで,うまい判断力で,人類の知恵で乗り越えていくしかない」
押谷「何がベストなのか.で,これ,専門家も間違えるので,分からないことがたくさんあって,未知のウイルスで,どうしていいか分からない部分っていうのはかなりあります.
そういう中で,ベストな方向,いかに致命的な間違いをしないか.
そういう方向に日本も世界もどうしたら向かわせることが出来るのか.
これは非常に難しい.一日一日,状況は変わっているし.一日一日,新しい情報が入ってきて,で,昨日正しかったことは,今日,正しくなくなるっていう状況の中で,我々はこのウイルスと闘っているんだと」
五箇「こういったウイルスのような喫緊のクライシスに対しては,当然,科学技術で立ち向かわざるを得ないと.やっぱり,新薬の開発ですよね.そういったとこに期待していかなきゃいけない.
一方で,長期的に見ると,もう,こういったクライシスを繰り返さないためには,まさに自然共生という,もう究極的な,まあ,ライフスタイルの変換といったものを,これから,本当に考えていかなきゃいけない.
要は,我々は,手を出してはいけないところまで,自然というものに対して,浸食を果たしてしまったがために,こういった問題が起きてる.
そこの中から,そういったウイルスや,そういった汚染といった問題が人間社会にリスクといって降ってくるという,その悪循環を絶つためには,そもそもが,やっぱりそういうもの,自然の摂理に準じた自然共生っていう生き方は何かっていう議論を,今から始めないと,持続性が保てないだろうと.ということですよね.
このままいくと,本当に人間社会は,もう,崩壊しか道筋がなくなってしまうと.それぐらい深刻に受け止めなきゃいけないっていうことが,ようやく,この今回のコロナウイルスが教えてくれてる気がしてるんですね」
押谷「我々が,忘れちゃいけないことというのは,我々のチームの中の今のモットーはですね.“Hope for the best, Prepare for the worst” 最善を望み,最悪に備える.
だから,いろんな希望はあってですね.
今,我々は,中世の天然痘とかペストと闘ってるわけではなくて,21世紀に闘ってるわけです.薬の希望も出てきているし,日本できちんと集中治療ができる範囲内で患者の発生を抑えていけば,かなりの人たちは救命できる.
で,一方で,ある局面では,かなり厳しい状況になるかもしれない.
そこを,やっぱり同時に考えていかなきゃいけない」
最後に作家の瀬名さんに,私たち一人一人がウイルスと闘っていくためのキーワードを書いてもらった.
想像できないものをいかに想像するか.“人間らしさ”の時代
瀬名「今の新型コロナウイルス感染症でも,想像できないことが起こっています.
過去に学ぶことは大切なんですけども,今現在の地球が,どんどんどんどん発達して,新しくなっていく時代で,想像できないことも,たくさん増えてきている.
でも,想像するんだという,それができるのが人間なんだ.その人間らしさを発揮する勇気っていうものが,さらに,求められる時代になってきているんじゃないかな」
命を守り,パンデミックを乗り越えていくために,闘いは続いている.