私たちは働く.生きるため,お金のため,社会のため.雨の日も,風の日も.
それは資本主義のルール.でも---.
NHKBS
「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」
世界経済のフロントランナー達が紡ぐ,お金と欲望をめぐる物語
欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半
「ポピュリズムと言うが,グローバリゼーションに対する抵抗の一種じゃないかな」「『スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒』. 2015年に悪魔的な門が開いたのでは.人々が『いい人』でいられなくなったのかもしれない」「 “外側”が無いと,悪が生まれる by シェリング」
「資本主義の中心には強力で支配的な観念が存在しているようだ.原則は『役に立つことだけをしろ』『自分を愛してくれる者は愛し,自分を嫌うものは嫌え』『良くしてくれる者には良くし,意地悪をしてくる者にはやり返せ』.この観念は,あらゆるところに根付いていて生まれたときから親しんでいるから,私たちは気がつかないのだ」
欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半
「資本主義は『成功』という概念の上に成り立っているシステムだ.ひとたび成功すると,さらに未知のものを見つけようとする」「創るために『破壊』すること.資本主義の世界で人々はずっとこれを繰り返し,それは,強迫観念のように私たちを駆り立ててきた」
[以上,前編]
後編
“資本主義は,その成功ゆえに自壊する” ヨーゼフ・シュンペーター
カビール・セガール(元投資銀行市場部門ヴァイス・プレジデント 近著『貨幣の「新」世界史』)
「あなたが何かを買うとき,欲望が何かを手に入れたいとサインを出している.そうなるように,人は進化してきた.例えば,私が『お金』と口にするだけで,あなたの体には心理的な変化が生まれる.お金という言葉を聞くだけで体に電流が走り,反応してしまうのだ.冷静な感覚でいられなくなる.
いつもお金や欲望が頭の中にあるとしたら,あなたの脳は絶えず思考回路をつなぎ替えている事になる.あなたは,お金を使っているつもりで,お金に使われているんだ.それがお金のやっかいなところだ.人生を左右してしまうほど強い力だよ」
増殖する資本に魅せられて,欲望の世界は幕を開けた.
ジョナサン・ストラル(アメリカ ベンチャー投資家)
「資本主義は人間の創造性をドライブさせる.最高の人間,最高のアイデアが勝つ世界だ」
作って使って.作って壊して.
古いものを壊して,新しいものを創るアイデアが,力をもう世界.
ダニエル・コーエン(フランス 経済学者)
「シュンペーターの表現は現実を良く捉えているからこそ,人の心を捉えて,何度もよみがえってくる」
マルクス・ガブリエル(ドイツ 哲学者)
「iPhoneを発明しても,同じiPhoneを作り続けていたらダメだろ?」
ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)
「世界中で賃金が頭打ちになっている現状は,資本主義にとってとても危険な状態と言えるわ」
欲望が私たちを駆り立てる.
成功とは.価値とは.お金とは.
今,闇の力がよみがえる.
欲望の資本主義2018(6)第6章
NHKBS「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html
第6章 幻想の貨幣愛
《言葉》
▽カビール・セガール(アメリカ 電子決済サービス企業戦略担当)
「私の大手取引先は1000億ドルの資金を持っていて,その人と毎日話していたから,普通の感覚を無くしていったよ.誰かの大切な資金なのに,その価値を忘れて,画面上の数字にしか思えなくなる.現実感がなくなるんだ」
「ウォール街ではいつも人は『もっと』を求める.その元にあるのは不確実な未来への備えだよね.持つお金が多ければ多いほど未来は安心だと感じる.それで人は時々過剰に安心を求めてしまう.そして人々が貯蓄に走ると社会に恐慌が起きる.
私たちは欲望と恐怖からできている.だから『もっともっと』となってしまうんだ」
▽トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「(ケインズはお金のもう1つの役割に気付いていた)お金が道具ではなく,目的になってしまうんだ.お金はあらゆるものと交換可能だから,人はお金を欲望する.いつのまにか,貯めこむ事が喜びになってしまう」
《内容の記録》
第6章 幻想の貨幣愛
▽投資のリアル ビッグマネーの調整/数字は幻惑する
彼は,元投資銀行のトレーダー.巨大なマネーの売り買いを仲介してきた.
カビール・セガール(アメリカ 電子決済サービス企業戦略担当)
「私の仕事は,企業と投資家をつなげる事だった.例えば,アリババの新規公開株(IPO)に携わったよ.企業が株式上場するときの,一番の山場が新規公開株(IPO)だ.企業がそれを望んでも投資家が乗ってこないときはやっかいだ.
『市場がお金を出したがっていません』と企業に説明しないといけない.心証を害さないように丁寧な言葉でね.
アリババやフェイスブックなどが新規株を公開するときは全く逆だ.投資家達が株を買いたがっても皆が皆,買えるわけではない.10億ドル分注文するクライアントには,こう言わないといけない.
『すみません.5000万ドル分しか提供できません』.『注文の5%?』と言われても,『買いたい人が多すぎて----』ってね.
資金が10億ドルに満たない投資家とは,話す事もなかった.『5億ドル持っているから口座を開きたい』と言われても,『それは少なすぎる.他の受付に行って下さい』と伝えるのだ.
私の大手取引先は1000億ドルの資金を持っていて,その人と毎日話していたから,普通の感覚を無くしていったよ.
誰かの大切な資金なのに,その価値を忘れて,画面上の数字にしか思えなくなる.現実感がなくなるんだ」
▽お金への「偏愛」?不安ゆえの「もっと」.使うためのお金が,貯めるためのお金に.
資本主義というゲームのルールに,深く向き合った男,マルクス.
彼は革命を望んだだけではない.生涯をかけて書き上げたのは,資本主義の構造の解明に挑んだ論理の書だった.
マルクスはお金を王様に例えて,こう記した.
「この人が王であるのは,ただ,他の人々が彼に対して家来として振る舞うからでしかない.ところが,家来達は反対に,彼が王だから,自分たちを家来だと思うのだ」
王:カネ 家来:モノ
王様が王様なのは,みんなが王様だと思うから.これからも王様であって欲しいと願うから.
幻想ほど強いものはない.
トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「私たちはGDPが1〜2%増加するだけで,歓喜する社会に生きている.シャンパンを開けて国民全体がお祝いするようにね.乳幼児死亡率が4%減少するより,GDPに夢中になる.
どうしてだろう.いわばお金に対するフェティッシュな欲望だね.お金の象徴化とも言えるね
本当にナンセンスだ.日本のGDPが2%上がったところで,人々の収入への影響はほとんどゼロだ.乳幼児死亡率4%減は,実際に恩恵がある.自分が少し『善人』になれた気がするからね.世界中に十分に食べるものがない人がいる中で,自分が十分な食事をしていても自責の念にかられなくなるために,自分の収入のたった1%を与えるだけでいいんだとしたら,どうだ?1%で世界中が幸せになれるなら,やるよね.所得の50%ならどうだろう?やる人は多くないだろう.
こんなふうにお金への執着があるわけだ」
カビール・セガール(アメリカ 電子決済サービス企業戦略担当)
「ウォール街ではいつも人は『もっと』を求める.その元にあるのは不確実な未来への備えだよね.持つお金が多ければ多いほど未来は安心だと感じる.それで人は時々過剰に安心を求めてしまう.そして人々が貯蓄に走ると社会に恐慌が起きる.
私たちは欲望と恐怖からできている.だから『もっともっと』となってしまうんだ」
およそ,90年前に起きた,世界大恐慌.
画期的な処方箋を提示したのは,希代の経済学者ケインズだ.
https://www.economist.com/blogs/freeexchange/2013/11/keynes-from-the-archives
「失業が社会の最大の不安」だとした彼は,こんな言葉を残している.
「皆月を欲するため,失業が生まれるのだ.欲望の対象,すなわち貨幣.それを生む事ができず,欲しがる心を抑えられないのなら,失業の問題など解消できない」
ケインズは貨幣を月に例えた.
人は手の届かないものへの憧れに,いつもとらわれてしまう.人々の心の底にある無意識をコントロールする事こそ,資本主義の鍵だとケインズは気付いていた.
トマス・セドラチェク(経済学者 チェコ)
「(ケインズはお金のもう1つの役割に気付いていた)お金が道具ではなく,目的になってしまうんだ.お金はあらゆるものと交換可能だから,人はお金を欲望する.いつのまにか,貯めこむ事が喜びになってしまう」
使うためのお金が,貯めるためのお金に.
目的と手段が逆転したら,いつしか,人は,お金の奴隷になる.
欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半
欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半
[以上,前編]
後編
欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った
欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半
欲望の資本主義2018(11)第10章ゲームは終わらない 後半
了