私たちは働く.生きるため,お金のため,社会のため.雨の日も,風の日も.
それは資本主義のルール.でも---.
NHKBS
「欲望の資本主義2018 闇の力がよみがえるとき」
世界経済のフロントランナー達が紡ぐ,お金と欲望をめぐる物語
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html
後に読み返すことで,私でも何とか理解できることを期待して,気になった発言等を《言葉》として取り出しつつ,音声部分を《内容の記録》として再録(整理がつくようにつけた見出しはyachikusakusakiによる)
欲望の資本主義2018(1) 第1章 分断する世界 yachikusakusaki's blog
「一方にはテクノロジー分野の発展.そして一方には低成長. 両者は,この10年間分断されていることが分かる.この逆説はミステリーだ」
「新しいテクノロジーがもたらす果実は,賃金体系のトップにいる一握りの人たちが圧倒的な恩恵を受けている」「新しいテクノロジーは,大多数の生産性を向上させるどころか,職を奪う.つまり,人々の生産性が失われていくのだ」
欲望の資本主義2018(2)第2章 革命の夢のあとさき
《言葉》第二章
▽アメリカ社会民主主義の会リーダー
「 彼(サンダース)は,こうしたアイデア(大学授業料無料化,国民皆保険制度等)は,新しくもなく,恐ろしく急進的な物ではないと,人々に自覚させた.社会主義の発想が,多くのアメリカの人々が支持するアイデアになったのよ」
▽『買い手が貨幣を手放すのは,ふたたび貨幣を手に入れるための“狡猾なもくろみ”のためである.だから,貨幣は“支払われた”というより,単に“前貸しされた” に過ぎない』カール・マルクス
▽ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)
「資本主義は,カール・マルクスが定めた定義なのよ.マルクスの理論には誤りが多かったけれど,正しい発言もした.彼はこう主張した.『資本主義とは,人がお金を商品に投資して,より多くのお金を獲得することを目的としたシステムだ』と」
「技術革新は,常に大きな需要があって実現される.でも,労働者が低賃金で購買力がなければ,技術革新は機能しない」
「仕事の確保を優先し,賃金には目をつむる文化が形成されてしまった.これは社会全体にとって,恐ろしく危険なことなのよ.
だから,利益全てを億万長者が独占するのではなく,労働者も継続的に利益を受けて,生産性と連動して賃金の上昇を実現しなければダメよ」
▽トマス・セドラチェク(チェコ,経済学者)
「マルクスの理論によれば,お金は労働者の所に行くべきだ.すごく単純化するなら,そういう事だ.(しかし)彼は労働者にはお金が行きようがないことに気がついた」
「マルクスは,『自分はマルクス主義者ではない』と言ったことはすごく有名だ.
僕は旧チェコスロバキア出身だ.マルクスの思想が実現されたところだ.そして,それは忘れられない大失敗だった.これはまず言っておく必要がある」
《内容の記録》第二章
第2章 革命の夢のあとさき
▽「自由の国」に社会主義のうねり?
2016年 アメリカ大統領選挙 誰を求める? 「バーニー」
〈映像〉バーニー・サンダース「多くの労働者は低賃金で長時間働いているのに,高い賃金と富の大部分は,トップ1%の人が握っている.間違っている」
ニューヨーク ブルックリン
アメリカ社会民主主義の会(Democratic Socialists of America)
今,資本主義に異を唱える声が高まっている.
自由だけでなく平等を.新しい世代のムーブメント.
「バーニー・サンダースが当選しなくて本当に残念だったわ.
私たちには変革へのポジティブで希望にあふれたビジョンがある」
「サンダースはアメリカで新しい対話のきっかけを作ったのよ.アメリカは正直に言って冷戦から続く問題を抱えているわ.
ほんの二三年前でさえ,社会主義という言葉はまだ禁句という感じで----.もちろん,アメリカにも常に社会主義者はいたのよ.
しかし,これが主流のアイデアになったのは,サンダースの選挙運動が本当に大きかったと思うわ.そして,彼は大学の授業料を無料にしたり,国民皆保険制度,皆のための医療などの具体的な提案をしたの.彼は,こうしたアイデアは,新しくもなく,恐ろしく急進的な物ではないと,人々に自覚させた.社会主義の発想が,多くのアメリカの人々が支持するアイデアになったのよ」
「労働者が団結して労働組合を作ったり---.変化を起こすには,人々を組織する必要があると理解しないといけない.労働者が団結すれば計り知れない力を発揮できるわ.私たちの労働が富を生み出しているんだから.トラック運転手達が全員でストライキを起こしたら--」「物流が止まり,経済は崩壊するだろう」「それと,アマゾンの倉庫で働く人たち---.これは解決策を余りに単純化したモノだけど,みんなの力を結集しないといけないの」
「私たちが民主主義の原則を維持することが出来れば,破滅がやってくるなんて,心配することはない.それが本当の社会主義なんだと思う」
1.2.3 Anti Capitalism!(資本主義反対!) Anti Capitalism!(資本主義反対!)----
自由の国に響く,社会主義を求める声.
あの男は,どんな思いで聞くのだろう.
カール・マルクス(ドイツ生まれ 1818ー1883)
▽資本主義はカール・マルクスが定めた定義.増やすことが目的のお金.それが資本.
ドイツ
ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト,銀行員から日刊紙の経済記者に.現在の資本主義の欠落を研究)
https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html
「資本主義は,カール・マルクスが定めた定義なのよ.マルクスの理論には誤りが多かったけれど,正しい発言もした.
彼はこう主張した.『資本主義とは,人がお金を商品に投資して,より多くのお金を獲得することを目的としたシステムだ』と」
あの時代,彼は分析した.
お金とモノ.交換されるだけではお金は増えない.でも,お金が投じられ,モノが作られ,より大きなお金をもたらせば---
『買い手が貨幣を手放すのは,ふたたび貨幣を手に入れるための“狡猾なもくろみ”のためである.だから,貨幣は“支払われた”というより,単に“前貸しされた” に過ぎない』
増やすことが目的のお金.それが資本.資本主義の始まり.
▽高賃金が資本主義を加速する
ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)
「産業革命がなぜ『イギリスで』,なぜ『1760年に』起こったのか.そのテーマには,多くの経済史の学者が取り組んでいるのよ.例えば,9世紀の中国や,古代ローマは非常に高度に発展を遂げており,当時,資本主義を導入していても,不思議ではなかった.
なのになぜイギリスだったのか.それには20に及ぶ学説があるんだけど,私が一番だと思うのは,世界的な研究プロジェクトが発表した説で,18世紀のイギリスがさまざまな偶然によって,『世界一賃金が高い国であった』ことが原因だったとするものよ.
当時のイギリスは,他のヨーロッパの2倍の賃金だったので,よく知られているように,繊維工業が競争力を失ったのよ.
農業国だったイギリスでは,繊維産業は唯一の輸出産業だった.人件費が高騰していたからこそ,機械化に大きな意味があったのよ.
資本主義とは高賃金によって活性化されるもので,これは現代でも当てはまるわ」
「技術革新は,常に大きな需要があって実現される.でも,労働者が低賃金で購買力がなければ,技術革新は機能しない.
アメリカでは,実質賃金の中央値が1975年以降,伸び悩んでいる.インフレを考慮して計算すれば,現在のアメリカ人の賃金は,1975年と同程度なのよ」
ずっと上がり続けた人々の賃金(アメリカの家計収入の推移1940≪1975).でもある時から止まった(1975≒2015).
▽世界中で頭打ちになった賃金
ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)
「日本の状況も決して良くないわ.バブル崩壊後,実質賃金はほとんど上昇していない.ドイツでも2000年以降停滞している.
今過剰生産と,売上げの落ち込みが至るところで起きていて,せっかく向上した生産性を生かし切れていない状態が続いている.
そのため企業は投資に目を向けなくなったわ.これ以上の投資など必要なのか?というわけよね.
その代わりに,金融市場での投機が盛んになっている.
世界中で賃金が頭打ちになっている現状は,資本主義にとってとても危険な状態と言えるわ」
▽労働組合が弱体化&仕事の確保を優先⇒賃金には目をつむる文化が形成
ウルリケ・ヘルマン(ドイツ 経済ジャーナリスト)
「1975年以降の世界各国の状況を見てみると,労働組合が弱体化して政治的にも立場が弱まり,同時に,人々の失業に対する恐怖が高まったことで,仕事の確保を優先し,賃金には目をつむる文化が形成されてしまった.
これは社会全体にとって,恐ろしく危険なことなのよ.
だから,利益全てを億万長者が独占するのではなく,労働者も継続的に利益を受けて,生産性と連動して賃金の上昇を実現しなければダメよ」
▽持つ者だけが富を得る.みんなに富を!みんなに利潤を!
持つ者だけが富を得る.産業革命の時代,資本主義を批判したマルクス.
マルクスはこう予言した.
『資本主義は,その矛盾ゆえ,滅びる』カール・マルクス
トマス・セドラチェク(チェコ,経済学者.CSOB銀行チーフストラジスト.大学在学中 初代大統領の経済アドバイザー)
https://www.cinra.net/news/20171228-yakushimaruetsuko https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225527/index.html
「マルクスの理論によれば,お金は労働者の所に行くべきだ.すごく単純化するなら,そういう事だ」
「(しかし)彼は労働者にはお金が行きようがないことに気がついた.
なぜって,もし僕が優しい資本家で,労働者に高賃金を与えたら,利益は減るよね.いずれ,悪い資本家との競争に負けて,僕は破産することになる.僕が労働者に優しくすることで,天国では報われるかもしれないけど.結局は,僕は良いビジネスマンではいられないということだ.
だからマルクスは主張した.
人々が自発的に労働者により多くの賃金を与えるようになったら,破産することになると.つまり,これは自発的に起こるはずがない.だから『革命を起こすしかない』」
みんなに富を! みんなに利潤を!
起こるべくして革命が起こる.
彼が想定したのは最も資本主義が進んだ国(イギリス)でのこと.
▽「忘れられない大失敗」.革命の現実は,マルクスの理想とは違った?
でも,実現したのは,当時,まだ貧しかった北の大地(ロシア)でだった.
社会主義国家誕生.
革命のリーダー達が目指したのは,人々の平等.
でも---.
トマス・セドラチェク(チェコ,経済学者)
「マルクスは,『自分はマルクス主義者ではない』と言ったことはすごく有名だ.
はたして,キリストが生きていたら,キリスト教徒になっているか----.僕はそうは思わないね.ブッダは仏教徒になっているか.僕はそう思わないよ.
まあ,とにかく,僕は旧チェコスロバキア出身だ.マルクスの思想が実現されたところだ.そして,それは忘れられない大失敗だった.
これはまず言っておく必要がある」
人々が願った平等な社会は築かれなかった.
革命からおよそ70年.社会主義の壮大な実験は終わった.
それは,つかの間の悪い夢だったのか.
それとも,早すぎたユートピアだったのか.
欲望の資本主義2018(4) 第4章フォースの覚醒-第5章前半
欲望の資本主義2018(5)第5章イノベーションの呪縛 後半
[以上,前編]
後編
欲望の資本主義2018(7)第7章 二つの欲望が世界を覆った
欲望の資本主義2018(10)第10章ゲームは終わらない 前半
欲望の資本主義2018(11)第10章ゲームは終わらない 後半
了