クワを詠んだ短歌/クワの実を詠んだ短歌  6月はウメとビワに代表されるように,実のなる月でもあります.この間に出会った食べられる実は,ウメ,ビワ,ナツグミ,ジューンベリー,クルミ(これはまだ青い),そしてクワ.  朝日にや結ぶ氷のくは解けむ六の輪をきくあか月の空 西行  桑の香の青くただよふ朝明けに耐へがたければ母呼びにけり 斎藤茂吉  たらちねの母の辺(べ)にゐてくろぐろと熟める桑の実を食ひにけるかな 斎藤茂吉  桑の実を食みし記憶に重なりきてをさなく恋ひしひとのおもかげ 木俣修

初夏6月は,実のなる季節.

多くの方が好むウメとビワ.ご近所のお宅の庭,寺院にも植えられているのを見ることがあります.

報道では,今年はウメが不作.ビワは最高の出来とか.地域で違いもあるかとは思いますが.

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014472501000.html

https://www.sagatv.co.jp/news/archives/2024060316791

 

子どもの頃,鎌倉では余り見なかったグミ.この頃よく見かけます.

 

ブルーベリーが収穫期だと思うのですが,最近の街歩きでは見かけません.

代わりにジューンベリーに出会いました.名前は6月になる実の意.10種ほどあるようで日本自生種も

出会ったジューンベリーの種類ははっきりとは分かりません.ジューンベリーバラ科なの対し,ブルーベリーはツツジ科スノキ属.

 

山のクルミとはどこか違うクルミに出会いました.セイヨウグルミ?

 

そして,クワ,この十日ほどのうちに3カ所で出会いました.もう食べ頃の実も多くなってきています.土手に生えていた木の実を数個頂きました.いつ食べてもおいしい.

 

 

桑は,身近で大事な栽培植物の時代が長く続き,万葉に時代から短歌に取り上げられています.

一方,桑の実は,赤とんぼの歌詞にあるように,少年の日の思い出として,近代短歌に取り上げられています.

 

 

クワを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

たらちねの母がそのなる桑すらに願へば衣(きぬ)に着すとふものを  作者未詳 万葉集 巻七 一三五七

 

匹繭(ひきまゆ)のかく二籠りせまほしみ桑こきたれて泣くをみせばや  藤原忠房 後撰集

 

朝日にや結ぶ氷のくは解けむ六の輪をきくあか月の空  西行 聞書集

 

父と子と顔あらひ立つ桑のかげ別るることは思ふに堪へず  島木赤彦 氷魚

 

春畑の桑に霜ふりさ芽立ちのまだきは立たずためらふ吾れは  長塚節 長塚節歌集

 

桑の香の青くただよふ朝明けに耐へがたければ母呼びにけり  斎藤茂吉 赤光

 

桑の畑 若枝のもろ葉うちゆすり,とほり照りつつ 光りしづけし  釈迢空 海やまのあひだ

 

春さると心に思へど桑の芽の萌ゆらむ頃しよろしかるべし  尾山篤二郎 白玉集

 

桑の木の木に透りたる広き葉は二日もすれば散りか過ぎなむ  佐藤佐太郎 しろたへ

 

 

クワの実を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/05/22/235910

 

桑のみのかく黒く熟るる水無月の雨あがり野を我は歩むも  島木赤彦 柿蔭集

 

たらちねの母の辺(べ)にゐてくろぐろと熟める桑の実を食ひにけるかな  斎藤茂吉 赤光

 

紫に土染まるまで桑の実のつぶれし小径咽喉(のど)こそばゆく  植松壽樹 渦若葉

 

桑の実を食みし記憶に重なりきてをさなく恋ひしひとのおもかげ  木俣修 呼べば谺

 

生あたたかき桑の実はむと桑畑に幼き頃はよく遊びけり  佐藤佐太郎 軽風

 

 

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/05/22/235910